中古のお地蔵さん
短編集1作目です。最後まで見たいただければ幸いです。
高校の時からの親友、雄太が前々から買うと言っていた車が届いたというので休みを合わせてドライブに行った。
「どう?新車」
「やばいよ、乗り心地は最高だし運転してて楽しくなる、お前も早く馬から乗り換えた方がいいよ」
「俺を江戸時代の武士だと思ってる?ちゃんと最新の移動手段は持ってるよ」
俺と雄太はいつもこんな会話をしている。高校のクラスではコンビとして見られていたし、ちゃんとネタを考えて漫才コンクールに出ようかと話した時期もあったくらいだ。
「でも最新の車はすごいよ、いろんな機能がついてるから」
「へー、どんな機能?」
「後ろに羽ついたり、車高が低くなったり、マフラーが3本ついたり」
「初日で改造しすぎじゃない?早いよ改造するの」
「まあ俺はしてないんだけどさ、ほんとにいろんな機能ついてて、例えばシートベルトしてないと警告音が鳴るんだよね」
「それは安全性高いね、助手席だけ?」
「いや、後ろの席も鳴るんだよ」
「後ろはシートベルトつけない人が多いらしいからね、めっちゃいい機能じゃん」
最近は車の事故が多いからいろんな機能付いていて安全だなと感心していた。
「それで車が届いた当日にワクワクしちゃって早速ドライブ行ったんだよね」
「そうなんだ、どこ行ったの?」
「最近世の中物騒じゃん?」
「いや急にどうした?」
こいつのネタの入り方はいつも急だ。こっちの準備もあるからちゃんと合図などをしてほしいと毎回思う。
「なんかみんなピリピリしてるからさ、お守りほしいと思って」
「お守りね、近くの神社でも行ったの?」
「そうゆうのじゃなくて置くタイプのやつ」
「置くタイプ?」
「そう、沖縄のシーサーとかああゆうやつ」
「守り神的なね」
「本当は神社の狛犬盗んでくるのが一番なんだけど」
「ダメだよ!?そんなやつを狛犬は守ってくれないよ」
「だから考えた結果、あれを買いに行ったの」
「何?」
「お地蔵さん」
「え?」
マジで何言ってんだと思った。でも雄太は本当にそうゆうことをやるから怖い。そうゆうところが面白いからいいんだけど。
「お地蔵さん買いに行ったの?」
「そう、でもお地蔵さんて高いじゃん?」
「地蔵の相場とか知らないから、わかんないけどね」
「だから中古の地蔵にしようと思って」
「地蔵に中古とかあるの!?全く分からないわ」
「調べていくうちにさ、中古地蔵ショップが見つかって」
「中古地蔵1本の店!?よくあったな」
「そこまでドライブがてら行ったわけよ」
「どこまで行ったんだよ」
そう聞くと雄太は左の手のひらを広げて俺に見せてきた。
「5時間!?めちゃくちゃ遠いじゃん」
「いや、5分」
「近っ!家の近くにそんな店あったの」
「最近できたらしくて行ってみたらさ、店の外にいろんな種類のお地蔵さんがズラーっと並んでるのよ、そんで少しの間見てたら中から店員さんが出てきて、何かお探しですか?って聞いてきてさ」
「怖いなその店!そんでアパレルショップみたいな接客してくるんだな」
「お地蔵さん探してるんです~って話したらこちらなんかおすすめですよ?とか言われて、でもそれにはちょっと手が出なくてさー」
「だから地蔵の相場分からないって!ましてや中古地蔵なんて!」
「でも、もっと安いのないですかね?って聞いたらいいの紹介してくれて」
「安かったの?」
「ちょうど予算にあったやつでさ、でもなんか説明の中に告知事項ありとか言ってた気がするけど迷いなく買ったよね」
「いわく付き物件紹介されてるみたいになってるよ!?いわくつき地蔵か」
「そんなこと気にせずに支払い済ませて車の後部座席に乗せたんだけどさ」
「大丈夫かそれ」
「車エンジンかけてちょっとしたらなんか警告音鳴り始めてめちゃめちゃ怖くなってきて」
「...後部座席に地蔵乗ってるからね!!そのせいで人が乗ってると車が勘違いしてるよ!」
「そう、俺も気づいてお地蔵さんが乗ってる後部座席のシートベルト締めに行ったんだよ」
「家まで5分だけどな」
「でもシートベルト絞めたのにまだ警告音鳴るんだよ」
「えっ?」
「でも家まで5分だし、いっか!ってなってそのまま帰って玄関の前に買った地蔵置いてすごしてるんだけど」
俺はそこで思った、この話何かがおかしい。どこかひっかかる、地蔵の乗っている後部座席のシートベルトを締めても警告音が鳴る?不思議に思い振り返って後部座席を見た。
「おい、後ろの席のシートベルト絞めっぱなしだけど...」
「そう、お地蔵さんおろした後も鳴り続けて今もシートベルト外すと警告音鳴るんだよね」
「えっ...」
まだ夏じゃないけど微ホラーな感じになりました。こんな感じのをこれからも上げていく予定です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。 きんたつ。