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 その日の夜、ミアは夢を見た。


 ミアが夢の中で立っているこの場所は、薄く(もや)のかかる広く白い空間だった。以前に魂の案内を受けた場所とはまた違った、なんだか不安定な、ふわふわとした場所だった。

 珍しく見た夢に茫然としていると、サァッと足元の(もや)が晴れて、美しく七色に咲き誇る世界樹のまだ小さい花達が、一斉に地平の彼方まで芽吹いた。

 先ほどまであんなに濃かった靄も綺麗に晴れて、空には虹がかかり、青空と夜空の星が不思議なコントラストで彩る場所へと目まぐるしく変化した。青空はどこまでも広がり、夜空には見事な星空が一面に光り輝き、流星がそこかしこで落ちてゆく。


 (……なんて、綺麗な所なんだろうか)


 しばらく景色に見惚れて立ち尽くしていると、いつの間にそこに居たのか、正面の少し離れた所に、すらりとした恐らく男のエルフが立っている。

 いくら夢とはいえ、警戒は怠ってはいなかったはずなのに、こんなにあっさり距離が詰められているなんて。


 エルフは同族間での殺し合いをいたく嫌うという。元々上位種族ゆえに長命で、個体数もそう多くないのが所以(ゆえん)らしいが理由はトビコも詳しくはわからないらしい。

 ただ、それはあくまでも同族と認めた者に限られる。『森羅万象を統べる器』『叡知(えいち)を具現せし者』と自ら(のたま)うだけあり、その選民思想には同族ながら辟易してしまう。


 通常時であれば、ミアの姿を見れば襲ってくる可能性が高いのだろうが、今は夢の中だ。

 ミアはどう行動するのが最善なのかわからず、取り敢えずなるべく距離をとるべく離れようと後退るが、一向に距離が広がらない。男を視認した瞬間から私の中の警戒信号は、ずっと鳴り響きっぱなしだ。

 無詠唱で防御魔法を展開しようとするが夢の中の為か、上手く魔法を行使出来ない。


(……何時もトビコとドルイド君が、ピンチの時にはさりげなくそばにいてくれたからなぁ)


 ミアは男との戦闘を覚悟して、この世界での家族に想いを馳せた。

 しかし、いくら待っても男が動く様子はない。ミアも距離を取る事は叶わないが、特に私にすぐに危害を加えるつもりはないようだ。

 ミアはこれを機に恐る恐る男の姿を確認した。


 男の身長はかなり高い。2メートルはありそうだ。ゆったりとした白い服が所々着崩れており、肌が露出しているのを見ると、酷く耽美で退廃的な色気を感じてしまい、目のやり場に困る。髪の毛は艶やかなプラチナブロンドで、腰まで長さがあり一本一本がまるで極上の絹の様で、風にサラサラと揺れている。

 男は尚も動かないので、ついでに顔を確認してみた。やはりエルフだけあって非常に端正な造り顔であり、男とも女とも言える中性的な顔立ちながら、薄い唇に高く通った鼻梁を見るとやはり男である事がわかる。不気味な程、整いすぎている顔だった。くっきりとした二重瞼で切れ長の鋭い瞳をしてこちらを居丈高(いたけだか)に見下している。瞳の色は基本の色は金色であり、見る角度で色が異なりキラキラと乱反射し、七色に光り輝いていて思わず目を奪われる。


(……なんて、綺麗……)


 知らぬ内に男にぽわっと見惚れてしまい、うっかり警戒を緩めてしまう。男は暫くそんなミアを無表情で見下ろしていたが、口角をフッとあげた。


 その少し意地悪な笑い方が、誰かに似ているような気がした。


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