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負の遺産


 私は虚無について考えるために仕事をやめたはずだった。だが、現在私の思考を占めるのは田中麻友だった。私はパソコンに向かっていた。私は高校生時分に作った曲が大体記録されてあるUSBをスロットに挿入した。まずは自分がどんな曲を作っていたのか聞いてみる必要があると思ったのだ。

 ずらりと曲が画面に並んでいる。私はひとまず何の考えもなしに一番上にあった「偽地蔵の本懐」という曲をクリックした。安っぽいドラム音に耳障りなシンセサイザーが加わり、とても不快だ。聞いているとなぜかウシガエルのブレイクダンスだとか、ちくわを投げ合う筋肉隆々な男たちとか米粒の一つ一つに顔があってそれらががんを飛ばしてきているとか複雑極まりない妄想が頭に浮かぶ。思わずスペースキーを押した。額にじっとりと汗をかいていた。

 その後も私は自分の負の遺産に耳を傾け、そのたびに幻滅した。いや失望した。これほど音楽的才能がなかったとは思わなかった。いい曲が一つもないのである。


「やめようかな」私はひとりごちた。

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