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The Number Of The Beasts

                  鉄         志



 「燈和!!!」

 「燈和ちゃん!!!」

 「姐さん!!!」

 私たちの声に燈和は反応しない。そうか。湯飲みに余計なものが入っていたのは私のものだけではなかった。燈和のものにも入っていたのだ。恐らく、私が見ていない内に飲んでしまったのだな。

燈和の意識は無い。が、焦る必要はない。こんな山奥の村人どもだ。当然、戦闘訓練なんかはしていないだろう。少し数は多いが、ま、何とかなるか。ここにいる者どもを全員倒し、燈和を回収して、飲み込んだものを体外に排出させれば問題ない。

 「痛い!!何すんの!!」

 「離しやがれ!!!」

 両隣から悲鳴が聞こえ見てみると、廻と転が村人に取り押さえられているのが目に入った。やれやれ。この双子共はいつも私の仕事を余計に増やしてくれる。

というかある意味燈和よりこっちの方がマズいな。首に錆びた鉈のようなものを突き付けられている。単に脅しとして突きつけているだけなのではあろうが、万が一あれでどこかを傷つけられでもしたら破傷風にでもなりかねない。道のないこんな山奥だ。そう簡単に医療機関にかかることはできないぞ。

ていうかお前ら簡単に捕まりすぎだろ。もっと警戒心を持たないか。全く。いや、これは燈和にも言えることか。おかげで私のすべきことがまた増えた。まぁ、見るからに怪しい男に興味本位で着いていった私も大概なのではあるが。

 しかしどうやら、私が想像していたよりも数倍は危険な集団だったようだな。手口が手慣れている。恐らく、今日のようなことを何度も繰り返してきたのだろう。だがそれも今回で終わりにしてやる。

 「俺の連れ、寝ちまったみてぇだな。悪ぃから今日のところは連れて帰るよ。」

 「…大したものですね。大体の方はこの時点では寝てしまうか取り乱して命乞いをするかなのに。」

 「生憎、もっと面倒な奴も相手にしたこともあるんでね。こっちもこっちで慣れているんだよ。」

 「おん前この状況でよく生意気なことが言えるのぉ。もっとよく周りを見ぃ?」

 「う~~~~…」

 廻のほうを見てみると、悔しそうな顔で突きつけられている鉈を睨んでいる。一方で転の方はと言うと落ち着いた表情で私の方を見ている。こういう時に性格の差が出るな。

 「廻。小学校で『知らない人にはついていってはいけません』て教えることの意味がこれで分かったろ?」

 「やかましい!!鉄兄ぃも一緒に来ておいて!!!」

 「はははっ…」

 「いや転も何笑ってんだよ!?アンタも状況的には全く同じじゃん!!!」

 こんな時にも姉妹喧嘩を始めようとしている。やれやれ。相変わらず、肝だけは据わっているようだな。あるいは無神経なだけか。ま、後者だな。

 「燈和さんがあなたに好意を持っているのは一目見て分かりました。こういった女性に私の言うことを聞かせるのはこれが一番手っ取り早いのでね」

 「おいおい。他に2人も美少女がいるのに燈和のことばかりに言及してやんなよ」

 「そちらのお二方には直に村人達の言うことを聞いていただくことになりますよ。」

 「んで?俺は?」

 「…あなたに私の言うことを聞かせるのは難しいことと存じます。このお茶の仕掛けにも一早く気付き、大切なお三方が私たちの手の内になっている今もこうして冷静でいられる。何か勝算がおありなのでしょうね。」

 「話の分かる奴はありがたいね。この双子なんか本当に俺の話なんか聞きやしないからな」

 「鉄兄ぃ!!!」

 「廻。今は黙ってろって。」

 「というわけで燈和を返してもらう」

 「そう言うわけにはいきません。今まで、女はただの慰み物として扱ってきた私が、初めて伴侶に迎え入れたいと思った女性ですからね」

 「気持ち悪ぃなお前。そう言ってる割には隣にいる燈和と楽しくお話しすることもできやしなかったのに。生きてて恥ずかしくねぇのか。」

 「貴ん様ぁ!!高城様を愚弄する気かぃ!!」

 村人の一人怒鳴りながら私の肩を掴み牽制を仕掛けてきた。全く。先ほどの発言を聞く限り、この高城という男は世の女性全てを愚弄しているというのに。あ、燈和だけは別か。

 掴んでいる手を掴み一気に捻り上げ、体制が少し崩れたところで足払いをすると男は音を立てて倒れ込んだ。そこに踏みつぶすように男の股間に向かって思い切り体重をかけ右足を降ろした。

 ぐちゃ…!!!

 「あ゛あ゛あ゛あ゛っ…!!!」

 睾丸が潰れる音と同時に男が絞り出すような悲鳴を上げた。ふん。これでもう女を慰み物にすることもできんな。

 チャキ…。

 私の首に鉈が二つ押し付けられた。見てみると、廻、転を抑えていた男たちは右腕を彼女らの首に回しつつ、鉈をこちらに突きつけてきていた。

 「皆さん、この男は危険です。不用意に近づいてはいけません。」

 ふん。世間一般の常識の範疇で考えればお前らの方がよっぽど危険だというのに。

 高城の方へ目を向けると、配下と思わしき村人に何かを指示しているのが目に入った。何とでも指示するがいい。何をしたところでお前らみたいな野蛮人に負けるような私ではないさ。

 「おい、おん前。外へ出ぇ。」

 鉈を突きつけている男が命令口調で私に言ってきた。なるほど。室内では不利だから外で戦おうというわけか。いいだろう。その挑戦、受けてたとうではないか。


 外に出ると雨は先ほどに比べるといくらかは小降りになっていたが、それでもまだ結構な量が降り注いでいる。せっかく乾き始めてきていた服がまた濡れてしまったな。

 「雨で濡れてしまわないよう、燈和さんには中で待っていてもらいます。」

 「安心したよ。寝ている女をこんな雨の中に引きずり出すような馬鹿じゃなくてな。」

 「まぁ、彼女に愛するあなたが死ぬところを見せつけてやりたいというのが本音ですがね。心神喪失した女程、うまくコントロールがしやすくなりますからね。」

 そんなことをしてみろ。燈和は怒り狂い、秘められた力を解放しこの村が壊滅するまで暴れ続けるだろうな。いや、私という存在がいなくなった事実を受け入れればそれだけでは済まない気もする。

 と、その時、高城を含む村人全員が一斉に距離を開け、大きな円を描くような形で私を囲んだ。

 「五郎をここに連れてきぃ!!!」

 なんだ?この村には用心棒でもいるのか?ま、どんな奴が来ようと最終的にはボコボコにしてやるがな。

 私の目の前の村人の集団が間を開け、そこにからワゴンのようなものに乗せられた木製の檻が現れた。その檻の中に入っているのは…。

 「げぇっ!!!熊ぁ!!!???」

 「おいおい嘘だろぉっ!?しかもでけぇな!?何でこんなところにぃ!?」

 私より先に双子共が反応した。わざわざ状況説明してくれてありがとうよ。

 檻が開けられ、熊が出てくると村人たちはさらに遠巻きとなり私らから距離を開けた。

 熊はまっすぐに私を見つめ、何の躊躇いもなく近づいてくる。檻に入っている時は分かりにくかったが、恐らく2メートルはあるか。

 「ウゥゥゥゥウウウウウゥゥゥゥゥゥゥ…」

 こちらを睨み様子を伺っている。私に警戒している分、少なくともこの場では高城の次に頭は良さそうだな。

 「腹ぁ空かした五郎は怖ぇぞぉ!!!覚悟しんろぉ!!」

 「五郎!!やっちまぇ!!!」

 焚きつけるように村人の歓声が沸き上がった!!

 「鉄兄ぃ!!!そんな毛むくじゃらコテンパにしてやって!!!」

 「お頭ならいけるっす!!!頑張って!!」

 そして私を応援する歓声も少数ながら聞こえてきた。ま、悪い気はしない。

 さてと、どうするかな。この熊を殺すのは簡単だ。哺乳動物の内臓の位置は大きな違いはあまりない。ケラチン質を手先に集め硬質化し、、サイの角のように一本の鋭利な棘とし、それを奴の懐に入り込み余力を引き出して胸に突き刺し、心臓を貫通してしまえばそれで終わりだ。

 だが、できればそれは控えたいところだ。この熊も哀れである。この村人共に利用されているだけだ。先ほどの檻を開けた瞬間に距離をとっていた様子を見る限りだと、村人共は別に手なずけているわけではなさそうだしな。

 となれば、最良の手段はこの五郎という熊を暴れさせ、村人共がパニックになっている隙をついて燈和を連れ出しここを去るという方法だろうが、この方法は廻と転を巻き添えにしかねないか…。やはり普通に撃退をするのが無難であるな…。武器を用いず熊を撃退したとなれば流石の村人共も観念するだろう。

 熊を撃退する手段はトウガラシスプレーを顔面に目掛け噴射するというのが一般的である。これはトウガラシの主成分であるカプサイシンが粘膜に対する刺激性を有するためであり、かつ熊は嗅覚に優れているため鼻粘膜がこれよって刺激されることで混乱きたすためである。要はこれと同じことを行えばいいだけの話だ。

 カプサイシンの構造はやや複雑。ゆえに体内で生成させるのは少々面倒である。よって構造が比較的単純かつある程度の量が短時間で作れ、カプサイシンと同様に粘膜に対する刺激性を有する物質を代わりに生成する。

 幸い、今は雨が降っている。上半身の服を脱ぎ捨て、体の所々亀裂を入れ、水分を体内へと取り入れると、脂肪酸を分解させ生成した有機物と二酸化炭素を組み合わせ目的の物質である酢酸を生成し、同時に形成した嚢胞へと溜め込んだ。これならば刺激性は問題ないだろう。

 だが問題もある。これを体外へ出すとなると対象に命中させるには距離が開いているほど困難となる。こう雨が降っていてはミスト状にしてしまうと奴に届かせることができない。もっと言えばこの状況下では中途半端な付き方ではすぐに流されてしまうか。

 となれば、至近距離まで奴を引き付ける必要があるか…。ある程度の負傷は免れないが、肉を切らせて骨を断つしかない。

 「オォォォォオオ!!!!!!」

 雄叫びを上げると、私を睨みながら一気に走り出した。突進するつもりだな。

 私と奴の頭部との距離が2メートル程となったところで右手の拳を固め、肩から拳の先にまで力を込め後ろに引く。

熊の走りスピードは最速で時速50km。普通自動車とほぼ変わらない。さて。お前の突進が勝つか、私の拳が勝つか。ここは勝負といこうか。

右足を一歩踏み出すと同時に奴の眉間に直突きを叩き込んだ。その瞬間、確かに奴の表情が苦痛に歪んだのが見えた。が…。

 どごぁっ…!!!

 奴の突進を止めるには至らず、私の体は後方へと弾き飛ばされた。この程度では怯まないか…。流石は現存する日本の野生生物で最強の種なだけはあるな。この人間の体ではいかに余力を引き出していようと体格差でこちらが不利なようだな。

 どちゃ…。

 二メートル程後ろの地点に仰向けに倒れた。だが次の瞬間には私の体は地面を左右に激しく揺さぶられながら引きずられていった。

 ばきっ…ばきばきばきっ…!!!

 体の内部から骨が砕かれる音が響いてきた。倒れた私の右足の脛に噛みついたな。凄まじい咬合力だが残念ながら痛感覚はマヒさせてある。お前が私の拳で大してひるまなかったように、私だってその程度では怯まん。

 残る左足に集中して体内のケラチン質を集め、親指に5センチほどの鉤爪を形成し、奴の頭部の動きが一瞬止まった隙をついて側頭部に当てて少し食い込ませると、一瞬で下方向に足を落とした。

 バリィ!!

 「オォォォォオオ!!!!!!」

 奴が雄叫びを上げると同時に奴のぱっくり割れた側頭部から赤黒い血液が流れだした。

 できるならあまり傷つけたくは無かったが、致し方ない。ま、普通の人間だったらこっちも大けがの類ではあるからおあいこさまということで許してくれ。

 砕かれた骨を修復するのには少しだけ時間がかかる。なのでここでは一時的に創部を中心に筋肉を形成して固める。蹴るなどの攻撃はできずとも、歩行くらいはこれで十分だ。

 「ゴァァァァアァアアアアアアア!!!!!」

 怪我の痛みで興奮したのか、先ほどよりも大きな雄叫びをこちらにけしかけてきた。

ふんっ、周りでただ突っ立ってみているだけの村人よりもよっぽど勇敢じゃないか。私はそういう奴が大好きだ。出会い方が違えば、お前と私は良い友になれたかもしれないな。

 「どうしたぁ!!!!まだまだそんなもんじゃねぇだろ!!!かかってこい!!!」

 思わず私も声を上げた。強者と闘うのはやはり楽しい。前世で最強の種であった私にはほとんど得られることはなかった感情だ。

 「なんなんだあいつ…。五郎に足ぃ砕かれてまんだ平気で立ってやがる…」

 「それどころか戦いを楽しんどるのぉ…。」

 「もしかしたら俺たちはとんでもねぇ化け物をこの村ん中に入れちまったんでねぇか?」

  村人共の情けない声が聞こえてきた。全く。少しはこの熊を見習ったらどうなのだ。

 「お頭ぁ!!!後少しだぁ!!!相手びびってんぞ!!!」

 「鉄兄ぃ!!!いけるいける!!!早くそいつを倒してアタシたちを助けに来ておくれ!!」

 双子の声援が再び聞こえ始めてきた。どうやら、もう私の勝ちを確信してようだ。ま、お前らが勝てると思っていようがなかろうが、最終的に私は勝つのだがな。

 「分かってる!!!安心しろ!!これが終わったらそこの死にぞこないどもを片っ端から叩きのめしてやるからよ!!!」

 「えぇっ!!!」

 「どうするぅ?いっそのこともうこの辺で…」

 この辺でなんだ?命乞いをして私たちを解放するとでもいうのか?今更遅い。この後はお前たちだ。待っていろ。

 「オォォォォオオ!!!!!!」

 と、周りの歓声に紛れて再び熊が雄叫びを上げ、こちらに向かってきた。

 今度は先ほどよりもスピードが遅い。突進ではなく、単に距離を詰めるつもりだな。

 案の定、奴はある程度距離が縮まったところで止まり、左腕を私の横腹に目掛けて水平に振るった。

 がんっ…!!!

 奴の腕が当たる直前、右腕をV字に固めガードで防ぎ、当たった瞬間に自分の右腕を奴の左腕へと回して固め、動きを封じた。先ほどの突進では負けてしまったが、今度の力比べではそうはいかんぞ。そして今度はこちらの攻撃だ。

 左足を曲げ、奴の胸部に思い切り膝蹴りを食らわせた。

 ごがっっ…!!!

 私の左ひざに確かな衝撃が伝わると同時に奴の体も大きく傾いた。できれば鳩尾に入れたかったが、体格差故それはできなかった。だがそれでもそこそこのダメージは与えられたようだな。

そしてその隙をつき、左足を奴の右手へと回して固めると、奴は私に圧し掛かる形でうつ伏せとなった。少し苦しくはあるが、これで両手の自由は奪った。さて、次はどう来る?

 「オォォォォオオ!!!!!!」

 目と鼻の先で聞く奴の雄叫びは私の鼓膜を容赦なく刺激したが、そんなことでは怯まないのは分かっているよな?分かっていても、やらざるを得ないか…。

 目の前で大きな口が開き、鋭いいくつもの牙が露わになった。私の頭部をかみ砕く気か。悪いな。こっちで我慢してくれ。

 開いた口に残った左腕を咬ませ、頭部への攻撃を絶たせると、奴の牙は上下から私の皮膚を貫き骨にまで達するとそこからミシミシと砕かれていった。が、右足同様に筋肉を固め、牙を引き抜けなくさせた。

 種としての習性か、首を左右に振ろうと試みているようだが、私の力はそれを許すほど弱くはない。咬ませている左手にも力を込めると、奴の顔は私と向き合ったまま動かなくなった。

 よし。これで準備は完了だ。この距離ならまず外すことはない。

 熊の他の生物より優れている点はその力だけではない。嗅覚は犬の数倍もあり、数km離れた獲物の臭いも感知できるほどであるという。

 その優れた嗅覚を持つ鼻が、強い刺激をもつ酢酸を取り込んでしまえばどうなるか?

 「ぶふぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」

 体内に蓄えていた酢酸を奴の顔面に吹きかけ、捉えていた奴の両手と頭部を一気に放した。

 「オォォォォオオンンンンン!!!!!!」

 先ほどの威嚇とは違う、悲痛に似た雄叫びを上げ奴は自身の頭部をバシバシと叩き始めた。どうやら余程効いているようだが、指の短い熊の手ではそう簡単にはぬぐい取ることはできんぞ?

 だが、この様子を見ていると少しかわいそうな気がしないでもない。ま、私も常識的に見れば大けがを負っているのでお互いさまと言うことで今回は許してくれ。

 「ゴアッ…ガッ…ガハッ…ゲゥ…!!!!!!」

 噎せ返りながらも奴は酢酸を取り除こうとし、地面の泥に顔を突っ込み始めたが、一度体内に取り込んでしまったものはそう簡単には出て来やしないさ。

 さて、こうなってしまってはもうこいつに戦闘の意思は残ってはいないだろう。次は村人共、お前らの番だぞ?

 「鉄兄ぃ!!!」

 「お頭ぁ!!!」

 「あん?のわぁっ!!???」

 私の勝利に対する喜びではない、心配と警戒を呼び掛ける廻と転の意図を一瞬では汲み取ることができず、次の瞬間には私の体は何かに絡めとられ、そのまま引きずられていった。

 これは…縄か?それもひも状のものではなく、いくつかを組み合わせて網状にしたものだ。それを村人数人がかりで私に掛け引きずっているのだ。

 ふんっ。この程度の縄。引き千切って…。ダメだ。先ほどの戦闘で左腕と右の拳の骨が砕けてしまっている。引き千切るのに十分な力を込めることができない。

 ならば体内のATPを使い焼き切ってやるか。…これもだめだ。この縄、地面の泥を吸って最大限に湿っている。私が出られるほどに焼き切るのには時間がかかるな。

 となれば、ケラチン質を比較的損傷の少ない右手に集中させて硬質化して…。

 どさぁっ…!!!

 試行錯誤をしているうちにどこかへ落とされた。恐らく、1メートル程は下に。これは何かの穴か?暗くてよく見えん。いや、そんなことよりも奴らの手から離れた今、この網を…。

 「今だぁ!!!やれぇ!!!化け物を封じ込めるんだぁ!!!」

 怒号とともに大量の泥が一気に降り注いできた。しまった。このまま生き埋めにするつもりか!!!

 「お頭ぁ…!!!」

「鉄兄ぃ…!!!」

 網を断ち切ろうにも間に合わず、最後に悲鳴にも似た双子の声が聞こえ、やがて私の五感は大量の湿った泥の中へと埋もれていった。


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