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亢龍、悔いあり(バイオ・サイボーグより改題)  作者: 詩歴せちる
Heart Of A Dragon
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BOYS AND GIRLS

             燈      和



 「えぇーっ!!鉄兄ぃ、燈和ちゃんにも話しちゃったのぉっ!!??」

 「せっかくウチらだけの秘密だと思ってたのに。そりゃないっすよ、お頭ぁ…」

 まわりちゃんところびちゃんを私の家へと呼び出し、鉄志君の秘密を知っていたことを詰め寄ると、まず出てきたのはそう言った不満の声でした。私と同じように、自分達だけが鉄志君の秘密を知っていたかったのでしょうが、そんなことは神が許してもこの私が許しません。

 ていうか二人とも、まだ高校生になって1か月と少しだというのにちょっと派手すぎやしませんかねぇ。

廻ちゃんはいかにもギャルという感じのメイクに髪を金のメッシュの入った明るい茶髪に染め、それを右側で縛ってサイドポニーにしています。

 転ちゃんの方は頭にバンダナを被っており、そこから肩までかかっている髪は金に染まっていて、その真ん中から先端にかけては赤になっています。メイクは廻ちゃんに比べれば薄いですが、その代わり耳にピアスをいくつも付け、指にもいかつい指輪をいくつも付けています。

 つい少し前までの、普通の中学生だった頃の二人はどこへ行ったのやら…。うん。この二人、間違いなく鉄志君の悪い影響をモロに受けていますね。これは3人そろってこの私が何とか正していかなければいけませんねぇ…。

 「しょうがねぇだろ。成り行き上話さざるを得なかったんだから。それと転、いい加減俺のことをお頭って呼ぶのは止めろ。それが原因でただでさえ嫌われていたお前の母親からもっと嫌われちまってるんだから…」

 「え~、んなこと言われてもぉ…」

 「とにかく、二人だけ鉄志君の秘密を知るなど、この私が許しません。」

 「燈和ちゃん鉄兄ぃのことになると人格変わるからねー。鬼だよ鬼。」

 「その性格のおかげで俺も何度か死にかけたけどな。」

 「てゆーかお頭、何でそんな面白そうなことにウチらを呼んでくれないんすか。この前もメンバー引き連れて西高の奴らと一発かましたらしいじゃないすか。それにも呼んでくれなかったですし、最近ちょっと冷たすぎやしませんかねぇ。」

 「そうだぞー。もっと構えよー。」

 鉄志君、まだそんなしょうもないことを続けているんですね。これも後でお説教しないと。

 「アホか。わざわざ喧嘩やってるところに女二人呼ぶわけねぇだろ。それにお前らいると色々とややこしくなることが多いんだよ。お前らは家でおとなしくゲームでもやってりゃいいの。」

 「何を~っ!!!」

 「あの…話を戻しても?」

 私を差し置いて3人だけで話を進めるのは勘弁していただけませんかねぇ。鉄志君、私、泣いちゃいますよ?

 「お頭、姐さんが泣いちゃう前に話を進めたらどうですかねぇ?」

 転ちゃん、私のことを姐さんと呼ぶのもやめていただけませんかねぇ…。聞きようによっては私もそっちの人間だと思われるじゃないですか。いやでも、捉え方によっては私が鉄志君の伴侶ということにもなりますかねぇ!!

 「誰のせいで話が進まねぇと思ってんだよ。ったく…」

 鉄志君は軽くため息をついた後、仕切り直して再び話を始めました。

 「ま、さっき説明したのが全てなんだがな。異世界から来た化け物が俺らを狙ってるんで、やむを得ず持ってる力使って何とか一時的に撃退したというわけだ。」

 「そいつ、また姐さんを襲いに来るんすか?」

 「来るね。確実に。それだけの意思の強さは感じ取れた。」

 「でも鉄兄ぃなら余裕で勝てるっしょ?その魔法の力とやらで。」

 「それがそうもいきそうにねぇんだよ。燈和も見たとは思うが、あいつ、人間の体にもなるし、3メートルを超える怪物にも変身していたろ?これが何を意味するか分かるか?」

 「はいっ!」

 「はい廻ちゃん、どうぞ。」

 「そいつが変身する生き物がこの世界にいないから対処法がない?」

 「う~ん、それもあるが本質的なところではないな。というか俺は変身した生物を知ってたわけだから対処できたわけだし」

 「それじゃあ一体答えは何すか?」

 「質量保存の法則を無視してるんだよ。これが意味するところは、あいつ、この世界のあらゆる法則を無視できる可能性がある。全てではないかもしれないがな。」

 「それはやっぱり、あれが異世界から来たからでしょうか?」

 「恐らくな。生まれたその世界のルールにしか縛られないんだろう。それに比べ、俺はこの世界に生まれ育った。無から有を作り出すことができない。魔力を持っていても物理法則に縛られちまって殆ど自由に使えないから、こっちが圧倒的に不利なんだよ。」

 「はいっ!」

 「はい転ちゃん、どうぞ。」

 「そのお頭の魔法の力で物理法則とやらを逆に打ち破ればいいんじゃないすか?」

 「出来ないことはないが、この世界では物理法則を完全に打ち破るには相応のエネルギーが必要になるんだよ。どんな種類であれな。俺にとってはそれが魔力になるというわけだが、前に試してみたら一回ですっからかんになっちまった。んで、今使える魔力が全回復するには丸1日かかるから、結局戦闘で使える魔力が残らないってのが実際のとこだな。」

 「魔力って無限に湧いて出てくるものじゃないんすか?」

 「前世だったらな。だが今は違う。体力と同じ。1日で使える量には限界がある。ま、これでもかなり使える量を増やした方ではあるんだがな。」

 「魔力を使って魔力を生み出せば?無限ループ的な。」

 「試してみたが駄目だった。魔力はそこまで万能じゃない。結局のところ、永久機関というのは存在しえないのさ。」

 「常識では考えられない力だけど融通は利かせられないってことっすね…」

 「そういうこった。あいつと同じだな。」

 「う~ん、あくまで私の推測ですが、探せば別の方法があるのではないですかねぇ。要は無理やり力業で物理法則を撃ち破るのではなく、何かこう、抜け道を探すみたいな…」

 「流石燈和だ。鋭い。俺ももちろんその可能性は考えてあるし、大体の目星も付けてはある。」

 「一体どんな?」

 「『火事場の馬鹿力』って聞いたことあんだろ?」

 「結局力業じゃないっすか…」

 「まぁ聞けよ。人間は100%の力を出しているつもりでも実際にはどんなに頑張っても70~80%程度が限界。だが緊急事態に直面した際にはその余った20~30%の力を引き出すことができる。ここまではいいな?」

 「常に100%の力を出してしまうと体が壊れてしまうから脳が無意識にリミッターをかけているけれど、緊急事態にはそれが外れるっていうことですよね。」

 「その通り。お前ら二人も燈和見習って少しは勉強しろよ。」

 「何を~っ!!!」

 「お頭ぁ!!聞き捨てならないっすよ!!!」

 「あの!話を戻しても!」

 このまま放置しておいてもまた3人だけの世界に入ってしまいそうですね。先ほどから度々私が放置されているような気がしないでもないですし。

 「あぁ、すまんすまん。要はそれと似たような脳のリミッターが働いているんだな。恐らく、その量の魔力を使っちまえば体に影響が出かねないんだろうよ。」

 「現段階ではエネルギー、つまりは魔力で物理法則を破ることはできますけど、その脳のリミッターを外すことが出来さえすればもっと簡単にそれを行えるということですよね。魔力を使ってそのリミッターを外すというのは?」

 「脳のどの部分が魔力に対するリミッターとして働いているのか分からない以上、それはできない。魔力と脳の関係に関する論文でもありゃあ調べられるんだがな。当然、そんなものこの世に存在しない。自分の頭かち割って調べる訳にもいかんしな。」

 「でもさー。それもあくまで鉄兄ぃの推測だよね?実はそんなリミッターなんて無かったりーってこともあるんじゃない?」

 「いや、これに関しては一度証明してるよ。」

 「リミッターを外したことがあるってことっすか?」

 「あぁ。偶然ではあったがな。」

 「ほーほー。それは気になるところですなぁ~」

 「お前らには前に話したことあるぞ?」

 また私だけ知らないことですか。悔しすぎて血を吐き出してしまいそうですね。

 「俺が初めてこの力を使った日のこと。俺はあのクソじじいの手を弾き飛ばしたわけだが、その時の手の形状は俺の前世の一部だった。」

 鉄志君を虐待していたという、あの死に値すべき人間のことですか。鉄志君から聞いていた話では一方的に殴られ蹴られされていたとのことでしたが、やはりやり返していたのですね。流石は鉄志君です。

 「その後も俺は前世の姿を一部でも再現しようとしたができなかった。理由は簡単。前世の俺の体を構成していた物質がこの世には存在せず、本来作り出せるはずがないからだ。」

 「それで、命の危機を感じたその時だけリミッターが外れてそれができたと。」

「その通り。で、話した通り現状ではそのリミッターの緊急時以外の外し方が分からないからどうしようもない。そして奴は近日中に必ず現れる。下手したら今夜かもしれん。別の方法を考えないとな。早急に。」

 今、割と緊急事態な気がするんですけれど、そう簡単にはいかないってことなんですね。私というかけがえのない者のために力を解放できるくらいの意地を見せて頂きたいところですがねぇ…。

 「ていうかお頭。」

 「何だ?」

 「その吸血鬼もどきとやらはお頭の前世では駆除されていたんでしょう?だったらそれと同じ方法で何とかならんのですか?」

 「駆除の仕方が特殊だったんだよ。本来の吸血鬼はほぼ不死だったが、同族の血が半分以上流れている者はとどめを刺すことができる。つまり吸血鬼を殺せるのは同じ吸血鬼もしくはそのハーフだけ…というのが通説だったんだが。」

 「別の方法が?」

 「吸血鬼の死体、もしくは体の一部を焼いて灰にし、その灰を練り込んで作った武器には同等の殺傷力があることが分かったんだよ。んで、ホルボロスは吸血鬼の体をベースに作られたものだから殺すには吸血鬼の体から作った武器なら可能だったんだ。」

 「おぉっ!!!じゃあその武器を探し出せば!!!」

 「…廻。お前は今まで生きてきた16年と少しの中で実際に吸血鬼を見たことがあるのか?もしくはその吸血鬼のいる異世界への行き方を知っているのか?」

 「うぐっ…」

 「そう言うこと。つまりこの世界では奴を殺す術はないということだ。」

 「あれ?でも…」

 「なんだ?燈和。」

 「今朝の戦いで、鉄志君、奴を日光にさらそうとしていたじゃないですか。あれは日光が弱点ということではないんですか?」

 「弱点ではあるんだが、殺すほどのものではないんだ。精々、弱らして動けなくさせる程度の効果しかない。」

 「弱らせてどーすんのよ?」

 「ホルボロスの特徴として、体が一つになってないと次の行動がとれないという性質がある。」

 「体が分裂してもそれぞれが別の行動を取ることができないってことすか?」

 「そ。しかも分裂した状態だと本能的にただひたすら再び一つになろうとすることだけをしようとするから、体が分かれちまえば変身することはおろか変身のために生物を食うこともしない。」

 「その性質を利用しようとしたのですね。」

 「その通り。日光にさらして動けなくしたところで奴の体を細切れにしてそれぞれを何かの入れ物にでも入れて別々の離れた場所にでも埋めれば、ま、時間は相当稼げるからな。」

 「でも時間稼ぎにしかならないんだ?」

 「燈和は見たと思うが、ホロボロスはどんな隙間にでも入り込めるんだよ。あんな網目状の鉄柵の間でもな。だからどんな入れ物に入れておいたとしても必ず出てきてしまう。で、本能的に自分の体の一部がどこにあるかが分かるから最終的には元通りというわけだ。」

 「昨日の様子を見ると、奴は鉄志君がそのことを知っているのをもう既に察してしまっているというわけですね。」

 「じゃあそいつも対策立ててくんじゃないの!?」

 「それなんだよな。どうすっかねぇ。昨夜の戦いで溜め込んどいたニコチンも作っておいたダイナマイトも使い果たしちまったしなぁ。使える道具も限られてるし…」

 「えっ!?お頭ダイナマイト作ったんすかっ!?」

 「すげーっ!!どうやったのっ!!??」

 「お前らに説明したところで理解できねぇよ。」

 「そんなん説明してみないと分からんでしょう!!!」

 「そうだぞーっ!!!」

 「よぉし分かった!!説明してやる!!体内で作られるアンモニアが肝臓で尿素として解毒される前に魔力を使って体外にアンモニア水として出した後に濃縮、酸化させて硝酸にし、グリセリンと反応させてニトログリセリンにして作っておいた元基質に染み込ませて完成させたんだよ!体内で生成されるアンモニアの量なんてたかが知れてるから量産はできなかったがな!!どうだ!?理解したか!?」

 鉄志君は眉間に皺を寄せ、鼻息を荒くして一気に説明をしました。あの、吸血鬼もどきの対策の話は…。

 「「??????????」」

 「…お前ら中学の理科Ⅰの成績いくつだよ。」

 「3年間ずっと2っすね…」

 「時々1もあったかな?」

 「だから言っただろ。理解できねぇって」

 「それ言ったら鉄兄ぃも国語の成績1か2だったじゃん!!私らと同レベじゃん!!」

 「何だとぉ!?てめぇらと一緒にすんじゃねぇ!!筆者の気持ちなんか考えたって物理法則を破る方法なんか見つからねぇんだから別にいいんだよ!!」

 「あのっ!!話を!!!戻しても!!!!いいでしょうかぁっ!!!???」

 もうこれ言うの3回目ですよ!?いい加減にしてくれませんかねぇ!?ていうかやっぱり鉄志君が話した龍の生まれ変わり云々の話は嘘だったのではないでのでしょうか。そんなに長生きをした龍が年下の女の子とこんな低レベルな言い争いなんかしないと思うんですけれども?

 「あぁ、すまんすまん。で、何の話だったか?」

 「だからあの化け物をどう退治するかですよ!鉄志君いい加減にしてください!!文字通り私の命がかかっているんですから!!」

 「その割には姐さんもあまり怖がってるようには見えませんけど?」

 「やかましい!!」

 あれに殺されてしまうくらいでしたら、いまここで鉄志君を殺して私も自害してしまいましょうか…。

 「やーい!!怒られたー!!」

 「うるせぇっ!!誰のせいだと思ってんだ!!」

 「…鉄志君?」

 「俺かよ!?話の腰折ってんのどう考えてもこいつらだと思うがっ!?」

 「まぁまぁ、いいじゃないっすか。取り敢えず話を進めましょうよ。」

 「くそっ。だからこいつら呼びたくなかったんだよ。」

 「そんなこと言わないでよー。3人寄れば文殊の知恵って言うしー。」

 「4人ですけどねぇ…」

 「こいつらは二人で一人前だからある意味合ってはいるな。」

 「お頭ぁっ!!!!」

 「あーはいはい。分かった分かった。文句は後で聞きますねー。話を進めないと俺が燈和さんに殺されてしまいますからねー。」

 …心の中、読まれてしまいましたかねぇ?

 「ていうか思ったんすけど、もう一回そいつをお日様の下に連れ出せば良いんじゃないっすか?それからまたゆっくり考えれば…」

 「それができれば一番いいんだけどな。あいつ、ある意味では変身能力だけは完璧すぎるんだよ。つまり、日光にさらされても何の問題もない生物に変身している間は無効ってこと。それにあいつも馬鹿ではないからそんなリスク背負って白昼堂々とやってくるような真似はしないだろうな。」

 「日光じゃなきゃダメなの?代わりになんかこう、強いライトの光とか」

 「高速道路で対峙した際に、俺は奴の変身を2回解いているはずだが弱体化した様子は見られなかった。高速道路にも街灯はあったが、あの程度の光ではダメなんだろうな。探せば有効な光もあるかもしれないが、こればっかりはあいつを実験台にして試すほか探す手段がない。」

 「ではどうしようもないのでしょうか?」

 「そこで燈和だ。」

 「えっ!?私!?」

 「そう。奴は俺に言っていたが…」

 「え、そいつ日本語喋れんの?」

 「お前はまた話の腰を折って…」

 鉄志君はちらっと私の方を見ました。説明してもいいかどうか私に許可を求めるような目つきで。いや確かに怒りはしましたけれどもね?そんなに恐れなくてもいいじゃないですか。

 鉄志君に顔を向けたまま無言で逆手の平を廻ちゃんの方に向け「どうぞ」のジェスチャーを行うと鉄志君は話を続けました。

 「あれの変身能力は『種族』をコピーするんじゃなくて『個体』をコピーするんだよ。さらにコピー元の個体の記憶を少しだけ引き継ぐからその個体が操っていた言語も習得できるんだと。ま、使えるのはその個体に変身している間だけみたいだがな。」

 「少しだけってどの程度っすか?」

 「う~ん、使ってた言語と、よく使ってた道具の使い方と、自分の名前くらいじゃないか?細かい記憶や知識なんかは残っていないらしい。あとは癖なんかも引き継ぐらしいな。」

 なる程。あれがイガワと名乗ったものの、その漢字までは答えることとができなかったのはそのためですか。

 「じゃあ鼻ほじる癖があった奴をコピーすると鼻ほじる癖までコピーしちゃうの?」

 「…多分な。なぁ、もういいか?」

 「さんくすー。」

 鉄志君は再び私の方へと顔を向け、話を再開しました。

 「あいつが俺に言っていたが、燈和の中には俺やあいつの中にある魔力とは比べ物にならないレベルの力が眠っていらしいんだ。あいつがこの世界にわざわざやってきたのもそれが目的なんだと。恐らく、それを奴は感じ取ることができたから一度、燈和の拉致を成功できたんだろうな。眷属どもは奴と感覚を共有できるからな。」

 最初に眷属たちと遭遇した場にいなかったにも関わらず、鉄志君が全員倒してしまったのを知っていたのはそのためだったんですね。

 「えぇ~、姐さんチート能力保持者っすか」

 「え、えぇ~っと…」

 私の能力と言えば、鉄志君が現在どこにいるのかの大体の検討を付けられることと、鉄志君が次に何の話をしようとしているのかをある程度読み取れることを除けば、多少古武道の心得があるくらいでしょうか。

 あれ…そう言えば昔、まだ私の祖父が生きていた頃、変な話を何度も聞かされましたねぇ。いや、でもあんなものはただの御伽噺でしょうし…。

 「考え込むってことは心当たりがないこともないんだな?一般常識で考えれば現実ではありえないことだしな。」

 「え゛っ!?まぢ?燈和ちゃん…。燈和ちゃんも人間じゃなかったのぉ!?」

 「おい待て。『も』ってなんだよ。俺は生物学上、正真正銘の人間だからな?」

 「あんなに体を変化させることができてそれはないっすよ、お頭。最早サイボーグの域に達してるじゃないっすか。」

 「おぉっ!!バイオ・サイボーグっ!!」

 「何だその訳分からん造語は」

 「ヴァイオ…サィヴォゥグ…」

 「そんな某ホラーゲームのタイトルコールのように言われてもどう反応しろと」

 あの話を祖父から聞くのと同時に、蔵の地下にあった変なものも色々と見させられましたっけ。あの時はご先祖様が変なものを作り、それが語り継がれていくうち話に尾ひれが付いていって御伽噺になったものだと思っていましたが。もしかしたら、あれが関係しているのでしょうか…。

 「お~い、燈和ちゃ~ん。大丈夫~?」

 「姐さん、自分の世界に入ってしまいましたね…」

 「おい!燈和!?」

 「へぁっ!?」

 鉄志君の声でふと我に返りました。私も大概、一度自分の世界に入ってしまいますと周囲と自分を遮断してしまう傾向にあるようですね。

 「お頭が呼んだら一発で戻ってきた…」

 「あたし達では力及ばずか…くそぉ…」

 「で?燈和。何か答えは見つかったか?」

 うん。今私が置かれているこの状況や、もっと言えば鉄志君の存在そのものだって傍から聞けば御伽噺のようなものですしね。ならば私が祖父から聞き、見せてもらったものも御伽噺の一言で片づけてはいけないものに違いありません。ならば。

 「…蔵に行きましょう。そこでお話をします。」


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