〜佐藤光雄 編〜
「そっかぁ…あと一年かぁ。」
彼女はさっきとはうって変わって明るく振舞った。
「それは分からない。先生は一年から三年って言ってたんだ。もしかしたらもっと長く…。」
彼はそこから先は言えなかった。もっと長く。生きて欲しいとは思っていても、願望でしかなかったからだ。
「ありがと。そうだね。希望は持たないとね。」
また彼は彼女の笑顔に救われた。
「そうだ!さっきの話にあったパンフレット見せてよ。私の体にどんなものがくっつくのか気になるな。」
「あぁそれなら、これが先生にもらったパンフレット。俺もあまり見てなかったな。一緒に見ようか。」
彼は手元にあったパンフレットを彼女の横に座って開いた。
「これがそうなのかな?」
彼女が指差した先には直径15センチ程度の長細い機器の写真が載っていた。
《Ω型人口脊椎補助機器(仮)》
機器の下には小さくそう書かれていた。
((仮なんだ…))
二人はそう思ったが口には出さなかった。
〜〜〜
《Ω型人口脊椎補助機器(仮)》
α.この機器には生命活動には欠かせない重要な部位である脳幹もしくは、脊椎の一部を損傷した患者に使用する事で脳幹の役割を代替する事が可能である。
β.脳幹損傷の患者に対しては後頭部から脊椎を覆う様な形で機器を施術し取り付ける。それにより機器の取り外し後は微細な傷痕が残る可能性がある。
β(II).小脳と脳幹の機能を機器が代替するまでの数時間は身体の機能が低下し、危険な状態に陥る為、無菌に近い状態での看護が必要となる。
〜〜〜
その後も脊椎の補助などの説明や研究内容や、その過程についても事細かく書いてありその他の機器についての説明も記載されていた。
「傷痕残っちゃうね。やだな〜。」
彼女は将来の事を考える素振りをみせていた。
「そうだな。機器も見た感じ大きいし結構目立つな。」
そうして二人は他愛もない話を続けていた。
その下の項目はわざとでも、無理にでも口には出さなかった。
そして次の日二人は退院と機器の取付け同意書にサインをした。
今回は人工機器説明が行われました。設定に矛盾が生じない様に人体について調べたりなどしてみましたが人体とはとても難しく、そこから更に病気の話になると専門家の話を聞いてみたいレベルになります。なので少し無茶な設定かもしれませんがフィクションという事でご容赦ください。
今回も拙い文章ですがお読みいただきありがとうございます。