〜佐藤光雄 編〜
はじめまして。初めて物語を書きます。
この物語は近い様な遠い様なよく分からない世界を描いています。
今回はメインの舞台となる時代背景と一人目の患者《佐藤さん》を描いています。
文章は稚的で恥ずかしい限りではありますが、この物語を読んで何か感じて頂けるものが有れば幸いです。
僕は時々死について考える事がある。
人の死とは避けられないものであり、人生の終着点であるとされている。
死というものについての研究は進められているが最終的には死を体験し蘇った人間はいない。
完全なる未知の領域に諦め、受け入れる人間もいるが全員がそうとは限らない。
そして人類はコールドスリープや、人体の機械化によって、死という別れから遠ざかる方法を研究しているのである。
この物語は死という絶対的な別れを受け入れられず様々な形で生きていく人間の物語である。
〜佐藤 光雄 (26)編〜
「余命半年?」
突然の医師の診断に驚きを隠せなかった。というよりも何も感じられなかった。実感が無かったのだ。
「はい。奥様の場合は転移性脳腫瘍というもので、現状では脳幹にある中脳と橋と呼ばれる部位から小脳にかけてまでの、この影の部分が腫瘍とみられます。」
そして医者は現在の医療技術では取り除く事は出来ない。このままではいずれ食事もままならず歩くことも出来なくなり、
そして…死に至ると説明していた。
しかし、その頃には彼には何も聞こえておらず、ただただ彼女の死について考えるしかなかった。
「しかし、幸いなことに奥様は今のところ症状が出ていないため現状を維持することは出来ます。それでも、もって一年から三年…。今の医療技術ではそれが限界です。」
「そうですか…その一年は入院になるんですか…?」
「いえ、その必要はありません。」
医者の言葉に彼は驚きを隠せなかった。この様な重い病気の場合は入院での延命治療が当たり前だと思っていたからだ。
「ではどうやって半年から一年も伸ばすのですか…。」
「今の医療技術では奥様の腫瘍を取り除く事は出来ませんが、代わりに奥様には…一度こちらをご覧下さい。」
そういって医者は二冊のパンフレットを渡した。
ひとつは、難しい言葉の羅列が並んだ医療書の様なものだった。
「そちらに関しては主に、今後の再生医療の過程を記したものです。なかには、今回の奥様の様に取り除く事が不可能な腫瘍に対しては歯などの細胞から人工脳を作り出し腫瘍と共に取り出した脳の部分を補完するというものもあります。」
「では嫁も治す事が…!」
「いえ、残念ながらまだそこまでには至っていません。この技術は二十年ほど前から研究されていますが人工的に脳を作り出すというのは人徳的に反するなどの反発があり、まだ…。」
医者は言葉に詰まり歯を噛み締めていた。彼もまた人の命を救う為に尽力している身であり、将来性のある治療法の核心たる部分に踏み出せない現状に憤慨している様だった。
「じゃあなんでこんな物を…。」
医者の気持ちを察してか、少し冷静になった彼は医者の言動に疑問をもった。
「それなのですが、もう一枚のパンフレットを見て下さい。」
医者は苦虫を噛み潰した様な顔でもう一冊のパンフレットを読む様に促してきた。
《人工機器取り付けに関しての実用性と今後の発展》
パンフレットにはそう書かれている。
「人工機器って…何ですか?いや、意味は分かるのですがそれが何で?」
今回の患者《佐藤さん》は今後どんな技術と出逢い、どの様な選択を迫られ、どんな未来を描くのか。僕自身もとても楽しみです。
頑張って彼の、そして今後登場する彼らの物語を描いてあげられたらなと思います。
物語は幼稚で拙いものではありますが、どうか宜しくお願い致します。