海賊の楽園
「おう!★野郎共!♪
遊んでねぇでさっさと練習だぞ♥️」
全く話し合いが纏まらなかった海賊達。
激論のように見えなくもない世間話を続けていたところに、ロシツキーが戻ってきた。
「あっれぇー?
せんちょー、いきなり前向き発言だねぇ。
どしたー?」
「まぁ、あれよ♣️俺も大人だからな♦️
いつまでも拗ねててもしゃーねーから、気を取り直していくことにしたわ♠️」
「へぇー。
あれだ、野郎共がやられちゃわないように、せんちょーが守ってくれるんだぁー。」
「バカ野郎!てめぇの身はてめぇで守るんだよぉ★」
「まったまたぁ。照れちゃってぇー。」
「うるせぇ♪とにかく、期日は迫ってんだ♥️
野郎共!♣️出航するぞ!♦️」
【海賊の楽園】
地図にも載っていない、世界の果て。
無人島が連なる列島の中のひとつ。
誰も寄り付くことの無い最果ての入江に、その町はある。
世界中の海賊達の聖地であり、裏社会の情報や物流の集まる中心地。
それがこの町だ。
4年に1度の海賊オリンピック。
一大イベントに沸き立ち、只でさえ騒々しいこの町は、至るところで喧騒、歓声、怒号、様々な感情が入り乱れていた。
港に船を停泊させたロシツキーはメルテザッカー、ポドルスキ、ルイーダを伴い、まずオリンピックのエントリーを行う為、海賊協会の本部へと足を向けた。
協会本部は海賊の物とは思えぬほど巨大で、まるで王族の宮殿と言われれば納得してしまう様な佇まいで、町の中央に鎮座していた。
人間の数倍の高さはある大きな入り口を潜ると、そこには大理石造りの広大なロビーが広がっていた。
「何度来ても無駄に広いんだどぉ。
海賊オリンピックの受付はどこなんだど?」
「おっ。
あそこに誰かいるぜ。あいつに聞いて見るか。
おーい!そこのお前ー!」
「あん?!
なんだ?気安く呼んでんじゃねーぞ!?
って、
ロシツキーのお頭じゃねぇですかい!!」
「あ、あ、あ、アルシャビン!♠️
元気そうじゃねぇか★」
「おお!アルシャビンなんだど!!」
「ご無沙汰しておりやす!皆も元気そうじゃねぇか!」
「おう♥️
独立してからの調子はどうなんだ?♣️」
「へい。ボチボチやってますぜ。」
「ほぅ、そりゃあ何よりだな♦️
ところで、ここにいるってことは、お前達も海賊オリンピックに出るのか?♠️」
「え?いや。
俺達は出場はしねぇんですが・・・。」
「あん?どーした?★
歯切れがわりぃな。お前らしくねぇ♥️」
「あー、俺、海賊協会の理事なんでさぁ。
オリンピックの運営の為にいるんで、出場は出来ねぇんでさぁ。」
「り、理事ぃ♣️」
ちなみに、海賊協会の理事会に入るためには、海賊としての格が高くないとならない。
7つの海の中、拠点とする地域で最も大規模な組織を形成する7つの大海賊団しか理事会入りは認められていない。
「いやいや。
俺の拠点としてる北方の海は環境が厳しいんで、海賊自体があんまりいないんすよ!
だから、俺みたいなペーペーでも簡単に成り上がれたんでさぁ!」
「私知ってるよぉー。
北方の海にはバイキングってゆー、ちょー強力で凶暴な豪傑海賊団がうようよしてるんだよね♪」
「いやいやいやいやいや!!
何を言い出すんでぇ、ルイーダ!!
そんなこと、ぜんっぜんないんだって!!
ぜんっぜん大したことないんだって!!!」
「アルシャビン船長。
そろそろ会議のお時間ですぜ。」
狼狽するアルシャビンを呼びに現れたのは、
動物の角や骨、毛皮で作られた武具を纏った髭もじゃだった。
身長2メートル。体重はゆうに150キロは超えそうな。
「あっ! バイキングだぁ。
すごーい、私初めて見たよぉ。握手してー。」
「え?俺っちですかい?」
「そうそう。大っきいねぇー、すっごいねぇ。」
「俺っちなんか全然小せぇ方で。
うちの海賊団の幹部の方々は、俺っちの倍はでっけぇんですよ。」
「おい!フッキ!
おめぇの倍でかいって、そりゃもう人間じゃねぇだろうが!
余計なことくっちゃべってねぇで、とっとと持ち場に戻りやがれ!」
「す、すまねー。船長。」
「あ、その姐さんと握手だけはしてやれよ。
無視するとこえぇんだからな。」
「マジすか。わかりました。」
「ロシツキーのお頭、面目ねぇ。
つぅわけで、俺はちっとばかし野暮用がありますんで、ここらへんで。
あ、オリンピックの受付を探してたんすかね?
それだったら、通路の突き当たりを右に曲がった部屋でさぁ。」
「お、おう♦️すまねぇ♠️」
「あ!そーいやぁ!」
「なんだ?★」
「お頭、また白き海賊団に絡まれてるらしいじゃねぇですかい?」
「よく知ってたな♥️
そうか、そういう情報もここには集まるか♣️」
「まぁ。
今、あの海賊団にはゲルダっつー女が絡んでるそうじゃねーですか。
あの女には気を付けた方がいいですぜ。」
「お前、知ってるのか?あの女を♦️」
「俺達の根城は帝国の領地の目と鼻の先にあるんで、奴の黒い噂は飽きるくれぇ聞いてるんでさぁ。
あっちの裏社会じゃ、奴は国外追放されたものの、未だにあの国の軍部と繋がってるってのが専らの通説でしてね。
何を企んでるのか分かったもんじゃねぇ。
お頭。くれぐれも気を付けて下せぇ。」
「分かった♠️頭に入れとくぜ★」
「んじゃ、失礼しやす。」
アルシャビンは颯爽と去っていった。
「すごいねぇ、アルシャビン。
バイキング達の海の頂点だってよぉ。
せんちょー、そっこーで抜かされちゃったね♪」
「お、お、お、お、俺、地位とかそーいうの、興味ないから♥️」
「せぇんちょぉー。泣きそうだよぉ?
どーしたの?」
「やめるんだど、ルイーダ。傷口に塩を塗っちゃいけねぇんだど。」
「ん?私、なんかした?」
「ダメだ。
エジルがいねーとこいつにツッコめる人間がいねぇ。」
アルシャビンと別れ、海賊オリンピックの受付を済ますと、ロシツキー達は酒場へと向かった。
その道中だった。
「お?ありゃーリオじゃねーか?」
「本当だど。」
大通りから、路地裏を歩くリオの姿が目に止まった。
周囲を気にするような素振りで足早に歩いていく。
「あいつ、こんなところで何やってるんだ?」
「今は自由行動にしてあるんだ♣️別にどこに行こうとあいつの勝手だろ♦️」
「にしても、なんか怪しい動きしてますね。
どこに行くつもりなんだろうか。」
「おい、ポドルスキ♠️
余計な詮索してんじゃねぇ★
人には人のプライバシーってもんがあるんだ♪」
「お頭。なんでいきなりそんな公明正大な感じなんですか?あ、あれでしょ。アルシャビンに影響されて威厳出そうとしてるんでしょ?」
「うるせぇよ、泣くぞ?♥️」
「きっとあれだよぉ。
あいつ、パフパフするつもりだよぉ♪」
「おいルイーダ♣️
若い娘が昼間からそんなことをデカい声で言ってんじゃねぇ♦️」
「あいつあんな可愛い顔して!
面白そうですね。ちこっと尾けてみますか?」
「パフパフするなら余計に放っとくべきだろ♠️」
「なぁんだ。せんちょーもパフパフに賛成なんじゃん。
じゃー、行ってみますかぁ。」
「そうしましょう!」
「しゃーねーなぁ★」
「みんな、性質悪いんだど。」
というわけで、趣味悪くリオを尾行することにした一行。
リオは時折周囲を気にしながら、路地を進んでいく。
始めは歓楽街を右往左往していたものの、徐々にそういった町並みから外れ始め、景色は次第にスラムへと変わっていった。
「ん?パフパフ屋を探してるんじゃないのか?」
「いや♪ひょっとしたらこういう町外れの辺りにこそ、穴場の店があるのかもしれないぞ♥️」
「なぁにぃ?あいつぅ、意外に詳しいなぁ。ウケるぅー。」
「あっ、立ち止まったど。」
リオが立ち止まったのは、とある集合住宅の前だった。
建物を見上げ、何かを確認すると、向かいの民家と民家の隙間に入っていく。
どうやらそこで集合住宅の様子を伺っているようだった。
「なんだなんだ?」
「まるで張り込みみてぇだな♣️」
「お頭。俺達もここであいつを張り込みましょう。」
「張り込みの張り込みか♦️
よし、メルテ。俺達も誰かに張り込まれてないか注意しろよ♠️」
「あんた、ものすごい楽しんでるんだど。」
リオが民家の陰に潜んでから小一時間ほど経った頃だった。
突如として立ち上がると、集合住宅へと向かって歩き始めた。
「あっ。順番が来たのかなぁ?」
「なんだと?★本当だ♪
あそこはひょっとして、パフパフの待合室だったのか?♥️」
その時だった。
集合住宅の一室の扉が開き、現れたのは・・・
つづく。




