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新訳・エジルと愉快な仲間  作者: ロッシ
第一章・第一部【始まりの冒険】
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新しい仲間①

「君もお人好しだねぇー。」


「なんだよ。別に妙なことするわけじゃねぇし、問題ないだろ?」



俺達の目の前には、それは高い塔がそびえ立っていた。

頂上は足元のここからは見えないが、ほんのりと雲が掛かっているようにも見てとれる。

そんな高い建物、俺は人生で初めて見た。



「ここのどっかに盗賊がいるってぇ?探すの大変そうだねぇ。」


「登るのが嫌ならここで待っててもいいんだぞ?」


「ダンジョンと言えば宝箱!宝箱と言えばお宝ザックザクゥー♪

こりゃあ登らないわけにはいかないねぇ♪」


「結局はやる気満々じゃねぇか。あんまり文句ばっか言ってんなよな。」




商船で大陸に渡ってから既に一月が経っていた。

大陸の出入口とも言える、大きな港町に到着した。

乾いた土地に流れる大河の河口のほとり。

白亜の建物がひしめき合う大都市だ。

数十万人が暮らしており、あらゆる流通の中心地と言われるその港町は、遥か昔は俺の故郷である水の都の統治下だったらしいが、今では都市国家として独立した存在。

今の水の都で暮らしていた身としては、ここが統治下にあったなんてすぐには信じられないよな。

ま、人が集まる場所だし、情報を集めるにはもってこいだ。

俺達はしばらくその街に滞在することにした。


「あっ、もちろん私のお金でって言うの忘れないよーにねぇー♪」


おい、俺の一人称のナレーションに口出しするなよ。

それでだ。

俺達はその滞在の間で、ここから北西に位置する王国が、かつて魔物退治に乗り出してその根城を探ったことがある。って情報を手に入れたんだよな。

そりゃ有益な情報だし、俺達はその王国を目指すことにしたわけだ。



北西の王国は山岳だらけの国だ。

首都機能を持つのは、切り立った岩山の中腹に岩をくり貫いた建物で形成された街。

随分と生活には不便そうな場所ではあるが、こと戦争に関しては鉄壁の防御を誇る難攻不落の城塞都市だそうだ。

俺達は何日もその山岳地帯を歩き続けた。


流石に大陸に棲む魔物は、俺達の島とは比べ物にならないくらいに強い。

道中、どでかい熊の魔物とかコンドルの魔物とかと戦いながら、俺は着実にレベルアップを果たしていった。

こんな強い魔物がいるってことに驚いたが、それ以上に驚いたのは、


「でっへっへぇー。この熊みたいなのの爪はすんげぇー精力剤になるんだぜぇー。

すんげぇー高く売れるんだぜぇー♪」


この女の知識量の多さだ。

島にいたらまず出会うことはないであろう魔物でも、何が売れるだとか何が役に立つだとか、一目見ただけで次々と説明が出る。

歳だって俺と少ししか変わらないように見えるのに、なんだってここまで色々な知識を蓄えているのか、俺にとってはそっちの方がよっぽど驚異だった。

あともうひとつ驚いたのは、その採取した荷物を全て俺に持たせたことだ。

魔物を倒すごとに少量とは言え、次々に増える荷物を持たされながら山道を歩くのは、


それはそれはよい鍛練になった。


まぁ結局は俺にとってもメリットはあるんだがな。


そうこうしているうち、俺達はついに山岳の城に辿り着いた。

岩山の麓から山頂付近まで、崖一面に蟻の巣穴のように通路が張り巡らされた都市。

水の都程の規模がまるまる縦に広がったような形で目の前にそびえていた。


到着そうそう、まずは宿を取り、その日は飯だけ食って二人ともすぐに床についた。

随分と長い間山道を旅したが、その間に人里には出くわさなかったからな。

正直、かなり疲れが溜まっていた。

よく生きて辿り着いたもんだと、後になって考えると我ながら感心するわ。


翌日、俺は山頂に位置する国王様の宮殿へと赴いた。

この国と水の都は同盟関係にある。

その昔、先日立ち寄った港町を巡って北方の大帝国と水の都が戦争を行った際に結ばれた同盟が、今の世も脈々と受け継がれているらしい。

それ故にか、門兵に勇者の証を提示するとすんなりと中に通してくれた。


城内に入ると、そこそこに位の高そうな兵士が現れ、俺達の引率を買ってでた。

城の中は人影もまばらで清掃も行き届いておらず、至るところに埃が溜まっている。

故郷の城と同じく、この国も城の維持は中々難しい課題らしい。

岩肌がむき出しの城内を歩きながらそんなことを考えていると、人々の様子が少しおかしいように感じた。

皆、互いにひそひそと会話を交わし、落ち着かない素振りを見せている。

よそ者である俺達を警戒しているのかとも思ったが、特に俺達に関心を寄せているわけでもなさそうな様子を見て、また別の事情があるんだろうなとひとりで納得した。


兵士に連れられて来たは、国王陛下の元ではなく、兵士の詰所だった。

そこには兵士達の長と見受けられる、30代半ばくらいの男が待ち構えていた。


「よくぞ参った。旅の者よ。」


まるで王様と謁見する時みたいな台詞だな。

そんなことを思いつつ、俺は丁重に自己紹介を行った。


「せっかく立ち寄って貰ったのだが、国王陛下は床に臥せっていらっしゃる。

とても面会できる状態ではないのだ。

貴殿達、勇者一行に魔物の情報を提供したいのはやまやまなのだが、残念ながらその知識を持つのは陛下のみ。

申し訳ないが、そういう事情故に今は力になれそうにもないのだ。」


兵士長の態度に、俺はそこはかとなく不穏なものを感じた。


「差し支えなければ事情を伺えないか?

もしご病気であれば、うちの連れは薬学に秀でているし、何か力になれるかもしれない。」


「それはありがたいお言葉だ。

しかし、陛下の病はそういった類いのものではないのだ。

心からくる病とでも言おうか。」


「何か問題があるのか?城の様子が変だとは感じたが。」


「ふむ。貴殿は他の勇者とは違うようだな。

他の方々は貴殿のように事情を聞こうなどする素振りすら見せなかった。

貴殿になら話しても良いかもしれん。」


「そいつはすまねぇな。他のに会ったら説教しとくわ。

で、その事情ってのは?」


「実はな、先日この城に賊が侵入したのだ。

我らの城塞は鉄壁。

恥ずかしい話なのだが、それに甘え、賊など入り込む余地など無いと過信していたらしい。

国宝である黄金の錫杖を盗まれてしまったのだ。

それ以来、あまりのショックに陛下はお体を悪くしてしまわれた。」


「賊を追わないのか?」


「我々もそうしたい。

しかし貴殿もお分かりだと思うが、この一帯の魔物は強く、情けない話なのだが我々は国の警護で手一杯。

とても賊を追う為に人員を割く余裕がないのが実情なのだ。」


「なるほどな。ならこうしよう。

俺達がその国宝ってのを取り戻してくるよ。

そしたら国王様も元気になるんじゃないか?」


「なんと!?それは誠か!?」


「誠だよ。」


「それはありがたい申し出。お言葉に甘えさせて頂いても宜しいだろうか。」


「しつこいな。いいって言ってるだろ。」


「あぁ、なんと心の広い勇者だ。

勇者など、所詮は魔物退治にしか興味のない偽善者ばかりかと思っていたが。」


「いちおう俺もそれなんだけどな。

今のは聞こえなかったことにしとくわ。

それと、」


俺は背後に佇むルイーダに振り返った。


「国宝を横取りしようとかは考えるなよ。」


俺と視線が合った瞬間、こいつがよだれを拭いたのを俺は見逃さなかった。





そんなわけで、話が冒頭に戻るわけだ。


山岳の城から更に山脈の奥に踏みいった高い山の頂上にある塔に、賊が逃げ込んだのを見たという情報を元に、この場所まで辿り着いたんだ。


「それにしてもこんな高い山のてっぺんに更に高い塔って、こいつを作った奴は一体なに考えてたんだろうな?」


俺は塔の外壁に掌を添えながら、ルイーダの方へと振り返った。


「んー、なんだろぉねぇ。空から敵でも来てたのかな?」


「見張り台ってことか?空から敵って。あぁ、まぁ鳥の魔物とかいるしな。」


「おねーさんには分かりませぇん♪」


「お前でも分からねぇことあるんだな。」


ルイーダはヘラヘラと笑みを浮かべるだけだった。


塔の入り口に施錠はされてなかった。

明らかに鍵穴が見えるものの鍵が掛かっていない。

昔の建造物だし、放棄された時に鍵も破棄されたのしれないが、ここに誰かが侵入したって考える方が自然なのかもな。

俺達は石造りの扉を押し開けると、塔の内部に侵入した。


正面には大きな通路。

その両脇には部屋があるらしく、壁にいくつかの扉が取り付けられている。

天井はかなり高く、俺が本気で飛び上がっても腕一本分は届かないほどだ。

その奥、辿り着くのに数分はかかるであろうずっと奥に、上階へ続く階段が見えた。

俺はまず通路にある扉を開けて中を確認したが、特に中には何も無かった。

正確には古ぼけたベッドやテーブルなんかが置かれていたんだけど、それ以外にめぼしいものは見付けられなかった。


「やっぱりここは昔、誰かが住んでたんだろうな。」


「ねぇねぇ、宝箱無い?」


「んー、ねぇな。」


「じゃ次。」


俺達は全ての扉を開けながら上階を目指した。面倒だが。

まぁ人探ししてるんだから、これくらいはやらないといけないよな。

2階に上がると、またもや同じような造り。

そして正面奥には階段。

再び俺は部屋の扉を開けてみた。


「何かあった?」


「いや、何もねぇな。」


「あっそ。次。」


そんな調子で更に上へと登る。

延々と同じような造りの階層が続く中、時折、部屋の中に魔物が巣くっていたりして、それを倒しながら進んでいった。

一体どのくらい登ったんだかも分からなくなった頃、ある異変が起こった。

上階から人の気配が降りてきたのだ。

俺は咄嗟に身構えた。

しかしそれは杞憂だった。

降りてきたのは、会ったことは無いが、勇者の一行だったのだ。


「全く、せっかくここまで登ってきたのに行き止まりとはな。やってらんねぇぜ。」


「とんだ骨折り損よね。」


「あいつ、残ってどうするつもりなんだ?」


口々にそんな不平を口にしていた。


「どうしたんだ?」


俺はその3人に声をかけた。


「何だ?お前も盗賊を追ってきたのか?

やめろやめろ!上に行っても行き止まりだぜ!」


「あーぁ!早く町に戻ってお酒でも飲みたいわ!」


「お前も早いところ引き上げろよ。」


3人はそう言い残すと、さっさと階下へと降りていった。


「行き止まりって言ってたな。」


「だねぇー。」


「かと言って、ここで引き返すのもなぁ。

とりあえず上は見に行くか。」


「なんか誰か残ってるっぽいしねぇ。」


「そんなことも言ってたな。」


俺達は3人の言葉は気にも留めず、階段を上がって行った。

階段を登りきると、突如として突風が俺達を襲った。

突然のことに思わずバランスを崩したが、なんとか体勢を保つことに成功した。

顔を上げると、そこは今までの階層とはうって変わって壁は無く、柱だけで支えられた吹き抜けの空間が広がっていた。


「すげぇな!飛ばされんなよ!」


「こっから飛んだらすっごい遠くまで行けそぉだねぇー♪」


「そんなん言えるんなら心配ねぇな。」


柱を巻くように更に螺旋階段が上に伸びている。

ルイーダが飛ばされないように支えながら、その階段を一歩一歩踏みしめて行った。

かなりの距離を登り、次の階層が頭上に近付いてきて俺は自分の目を疑った。


「ありゃりゃ?上の階、ひょっとして床、無い?」


「あぁ、ねえな。」


言葉の通り。

今の俺達から見たら天井にあたる上階の床は、完全なる吹き抜けになっており、反対側に見える階段に辿り着くのことは不可能になっていたんだ。


「これのことか。」


階段を登りきり再度見返してみても、そこはどう見ても吹き抜けで、対岸に渡れるような足場は一切存在していなかった。

そしてそこには、


「お前・・・。」


ひとりの長身の男が佇んでいた。



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