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新訳・エジルと愉快な仲間  作者: ロッシ
第一章・第三部【魔なる者】
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決戦、魔王城②

扉の先の階段を登ると、すぐに玉座の間だった。


広く、天井も高いその部屋の奥。


まず目についたのは、

巨大な、人のものとはまるで規模の違う、とてつもなく巨大な玉座に鎮座する、大きな魔物の姿だった。

今まで出会った魔族とはまるで違う。

大きな角をいくつも生やしたワニみたいみたいな顔を持つ、特大の魔物だった。

いかにも魔族の王様っていった異形の者がそこに存在していた。

そしてもつひとつ俺の目に留まったのは、


「あっ、エジルぅー。」


部屋中に能天気な声が響いた。


「捕まってしまいましたぁー。」


玉座のすぐ側。

縛り上げられて高い天井から吊るされているルイーダの姿だった。


「ルイーダ!無事か!?」


「無事だけどぉ、縄が痛いんですけどぉー。」


「待ってろ!すぐに下ろすからな!」


俺は駆け出した。


そして気が付いた時には右腕から血が噴き出していた。



「なにっ!?」



咄嗟に腕を押さえた。

攻撃された!?

視線を魔王に移して構えを取った。


魔王が動いた気配はない。


微動だにせず、玉座に居座ったままだ。

何をした?

俺は息を飲んだ。


「エジル!」


ルイーダが声をあげた。


「悪い、ルイーダ。もう少し待っててくれ。すぐに助けるからな。」


ちょっと舐めてたかもな。

普通に考えてもまずはあっちが先だったわ。

俺は剣を抜いた。


その左腕からも、血が噴き出した。


「っ!?」


痛みに思わず剣を取り落とした。

また攻撃されたってのか!?

言葉も出なかった。

全く見えなかったぞ!

何が起きてる!?


「エジル!何してんの!」


ルイーダの叱咤が聞こえてきた。

俺はそっちに視線を移し、そして驚愕した。

あいつ、いつの間に近付いてきた!?

そうだ。

ルイーダの位置が先程よりも明らかに近い。

いや、違う。

ルイーダだけじゃねぇ。

魔王との距離も明らかに縮まっている。

俺は視線を周囲に巡らせた。

俺がいたのは、部屋の中央辺りだった。


マジか!?

いつの間にこんなに進んだんだ!?

俺はさっき、部屋の入り口から数歩走っただけだぞ!

こんなに走った覚えはねぇ!

おかしい。

何かがおかしい。

変なことが起きてるのは確かだ。

あのワニ野郎、何をしてやがる。

俺は腰を落とすと、床に落ちた剣を拾い上げようとした。


肩口から血が噴き出した。


しかも今度は深い。

相当に抉られている。


「だぁっ!?」


思わず声が漏れた。


「エジル!」


悲鳴にも似た声が響き渡った。


あまりの出来事に、俺は頭にきて声を荒げた。


「汚ねぇぞ!この野郎!」


そんな俺の罵倒の言葉にも、魔王はピクリとも反応しない。


「てめぇ!やるならやるで、言うことあんだろうが!宜しくから始めろや!!」


自分でも面白いことを言ったと思う。

だけど、それ程までに俺の頭は混乱したいたんだ。

こりゃあ相当まずいわ。

何をされてるかも全く分からねぇのに、深手だけ負わされてる。

これを何度もやられたらすぐに終わりだっつーの。

こうなったら先に仕掛ける方が得策だ。


「ヴァクーム!!」


俺は力ある言葉を発した。



今度は太ももから血が噴き出した。



「ってぇな!この野郎!!」


全力で毒づいた。

とは言え、魔王にも俺の術が直撃してはいるらしく、その皮膚には傷がついているように見えた。

しかし、魔王はそれでも微動だにしなかった。


「エジル!違うよ!後ろ!椅子の後ろだよ!」


ルイーダが叫んだ。


「後ろ?」


「いったぁーっい!!」


ルイーダの言葉に反応した瞬間だった。

玉座の後ろから光が飛び出すと、ルイーダの腿を貫いたのだ。


「ルイーダぁー!!」


俺は喉が張り裂けんばかりにその名を叫んだ。


「隠れてる奴がいんのか!?だったらコソコソしてねぇで出てこい!!」


もう許さねぇ。

俺に攻撃するだけなら勘弁してやる。

だが、動けねぇルイーダを狙うのは許さねぇぞ。


「さっさと出てこい!このくそ野郎がぁ!!」






「相変わらず口が悪いな。」



玉座の裏から声が聞こえた。

足音も聞こえる。

誰かがいる。

歩いている。

この声。


「久しぶりの再会なんだ。」


聞き覚えのあるこの声。

これは、この声は。


「少しは優しくしてくれてもいいだろ?」


玉座の裏から姿を現したのは、


「お、お前・・・。」


長身。

逞しい肉体。

美しい顔。

見知ったその顔は・・・・




「お前は、なんで!?」




つづく。

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