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新訳・エジルと愉快な仲間  作者: ロッシ
第一章・第二部【海賊と俺】
28/84

開拓者の街②

中心部に近付くにつれ、殺気立った人々の密度が増していく。


そして、遂に俺達はルイーダの居城へと辿り着いた。

正面玄関の前あたり。

人々が取り囲んでいた。

群衆の中をかき分けるように進もうとするも、思うようには進めない。

ようやく人の隙間から、その先で起きていることが見えるようになってきた。



そこには、


傷だらけで血を流し、倒れ伏すルイーダの姿と、その前に立ち塞がる老夫の姿があった。



「聞け!皆の者!!

これ以上この娘に指一本触れることまかりならん!!」


「どくんだ!町長!!その女は魔女だ!!

殺さなければならない!!!」


そうだ!

そうだ!!


群衆が口々に騒ぎ立てる。

老夫とルイーダを取り囲む人々は、今にも二人に襲いかからん勢いだ。


俺達は人の群れを飛び出し、二人と群衆の間に割って入った。


「なんだ?!貴様らは!!邪魔立てすると容赦はせんぞ!!!」


群衆の先頭に立つ、逞しい男が怒声を上げた。

どうやらこの男がこの反乱のリーダーの様だ。


「色々と申し訳ねぇとは思うが、こいつは俺の仲間なんだ。

手ぇ出すってんなら、まずは俺が相手だ。」


「この状況で仲間を名乗るとは見上げた根性だな。真っ先に逃げ出した、魔女の下僕共とはえらい違いだ。

だがしかし!

その女を生かしてはおけん!

貴様らもろとも殺すことになるぞ!!」


俺の両脇から、ロシツキーとアルシャビンが一歩ずつ前へ出る。


「おーっと♠️待て★」


「俺達も相手になるぜぇ!!」


「皆、巻き込んですまねぇ。」


「バカ野郎、エジルバカ野郎♪そりゃもう聞いたっつーの!♥️」


「俺達ゃ仲間でさぁ!地獄の底まで一緒に行くってもんだぜぇ!!」




「そこまでじゃ!!」



一触即発のその時だった。

老夫が口を開いた。


「お主らの苦しみは痛いほどよく分かっておる。

しかしじゃ、お主らがこの今の暮らしを手に入れられたのは、誰のおかげなのじゃ?

このルイーダがおったからに他ならぬであろう。」


「確かにその通りだ!だが、度が過ぎるぞ!」


「それもよく分かっておる。この娘も人間じゃ。歯止めが効かぬこともあるじゃろうて。

だからと言って、行いが許されるとも思うてはおらん。

贖罪はせねばならぬ。」


「ならばどうすると言うのだ?!」


老夫が懐から取り出した紙を、リーダーの男に手渡した。


「こんな紙切れがなんだと・・・」


紙面に目を落とした男の顔色が変わるのが分かった。


「これは、本当か?」


「紛れもなく。」


リーダーの男が群れへと戻り仲間と何やら話し込み始めた。

ざわめきが広がる。

皆、互いに顔を見合せ、口々に感嘆の声を漏らしているように聞こえた。

 

しばらくすると、一人の男がその場から去っていった。

また一人、去っていく。

それに続いて続々と人が散り始め、あれだけ大勢いた人の群れは、いつの間にか跡形もなく消えて無くなっていた。


老夫が倒れるルイーダに歩み寄ると、彼女を抱き起こそうとしゃがみ込んだ。

流石にじいさんひとりじゃ無理だろ。

俺も近付いて、じいさんの隣に膝をついた。

膝をつくと同時に、じいさんの体が硬直したのが分かった。


「っつ!」


漏れ出た声が俺の耳に届いた。


「何やってんだぁー!?♣️てめぇー!!♦️」


ロシツキーが怒鳴り声を上げるのが聞こえた。

振り返ると、人の頭が見える。

金色の髪を長く伸ばしている。

その頭には見覚えがあった。


「許さない、許さないぞ。ルイーダ様は僕の物だ、ルイーダ様は、僕の物だ!」


そうだ。

こいつは、ルイーダの下僕だ。

長髪の男が素早く立ち上がった。

手にはナイフが握られている。

そのナイフから、真っ赤な血がしたたり落ちているのが見えた。

そこでようやく俺は状況を理解した。

なんせ、じいさんの脇腹から血が吹き出したんだからな。

血の量から見ても傷は深くない。

内蔵も外れている。

俺は瞬時にじいさんの傷の状態を把握した。

が、まずい。

相手は老体だ。

失血自体が致命傷になりかねない。

俺は長髪の男に視線を移した。

そいつは俺を見下ろしていた。


「お前なんか、お前なんか死んでしまえ!!」


あまりの出来事に、ロシツキーもアルシャビンも、一瞬動きが鈍ったようだ。

止めに入るのも間に合わなかった。

俺すらも反応が遅れた。

長髪はナイフを振りかざすと、思い切り俺に突き立てた。



湿った、鈍い音が辺りに響き渡った。



俺は目を疑った。

その場にいた誰よりも速かった。

俺を抱きかかえるように覆い被さったんだ。


ナイフが突き立てられたのは・・・




「ルイーダ!!」




俺はその名を叫んだ。


長髪の腕を振り払うと、何事もなかったようにルイーダはすっと立ち上がった。

その背中には深々とナイフが突き刺さっていた。


「ごめんね。」


そう呟いた。


「う、うわ、うわぁー!!」


長髪の男は発狂したかのように雄叫びをあげると、ルイーダに向かって突進した。


「ありがと。きっと好い人が見つかるから。」


ルイーダが駆けた。

数歩だけ駆けてから、まるで燕が空を自由に飛ぶように宙に舞い上がると、向かってくる長髪の首を太ももで挟み込んだ。

そのまま倒れるように上体を反り返した。

ルイーダの体重と自らの勢いに引っ張り上げられるように、長髪の体は空中に巻き上がった。

ルイーダは地面に両手をつくと、勢いよく体を捻った。

長髪はルイーダを軸に弧を描きながら宙を舞い、背中から叩きつけられると、ぐったりと動かなくなった。


そして、ルイーダも動かなくなった。





「レーマン!!♠️」

「まずいぞ!早いところ手当てしないと!」

「そこのクソ野郎をどっか捨ててこい!」

「どこか治療できる場所に運べ!」

「バカ野郎!動かすんじゃねぇ!」

「傷はそんなに深くねぇぞ!」


海賊達の声が入り乱れ、忙しなく走り回っている。


俺はゆっくりと這いながら、ルイーダの元へと近付いていった。

ルイーダの顔を覗き込んだ。


「おい、ルイーダ。しっかりしろよ。嘘だろ?また悪ふざけしてんだろ?なぁ、起きろよ。」


「すぐに手当てすればじいさんは助かるぞ!ルイーダを看せろ!」


レーマンが俺を押し退けると、ルイーダの背中の服をハサミで切り裂いた。


長髪を叩き付けた衝撃で、ルイーダの背中のナイフは抜け落ち、おびただしい量の血が流れ出ていた。


「こいつは、心臓まで届いてる。おいエジル、傷をしっかり押さえとけ。動かすと逆にまずい。」


レーマンはそう言うと立ち上がり、踵を返そうとした。


「ちょっと待てよ!!」


俺はレーマンに向かって吠えた。


「どこ行くんだよ!!」


「エジル。じいさんの方がまだ助かる可能性は高い。じいさんから処置する。」


「ルイーダを見捨てんのかよ!?医者だろ!?」


「医者だ、バカ野郎!!医者だから、助かる命を助けるんだよ、バカ野郎が!!すぐに戻るから、今は堪えろ!」


「てめぇ!!」


反射的にレーマンに掴みかかろうとしたが、それを止めたのはメルテザッカーだった。


「エジル!落ち着くんだど!」


「ふざけんな!離せ!離せよ!」


「エジル!世界樹の雫はもうないんだど!?あれなら、おでみたいに姐さんも助けられるんじゃないんか!?」


「そんなんもうねぇよ!ねぇんだよ!ふざけんなよ!ルイーダが死んじまうよ!」


「メルテ。すまんが、そいつを押さえててくれ

。じいさんの処置が終わったらすぐに戻る。」


そう言い残すと、担架代わりの木の板に乗せられたじいさんの元へと走って行った。

じいさんはロシツキー達に担がれて、すぐ近くにあった家屋へと運ばれていくのが見えた。


「離してくれ!」


メルテザッカーの腕を振りほどくと、急いで肩掛け鞄をまさぐった。

鞄から洗ってある手拭いを引っ張り出し、そいつでルイーダの傷口を力いっぱい押さえた。

血は流れ出なくなったように見えるが、手拭いは真っ赤に染まっていく。

ぐったりと倒れるその横顔から、みるみるうちに血の気が引いていくのが分かった。


「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!嘘だって言ってくれよ!!」



ちくしょう。なんなんだよ。

なんでこうなっちまうんだよ。

せっかくまた会えたのによ。

なんで俺は何にもできねぇんだよ。

ルイーダが俺を助けてくれたんじゃねぇか。

お前のくれた実がなかったら、俺は死んでたんだぞ。

なのによ、お前が死ぬんじゃねぇよ。

お前が死んだら俺は、俺は。

なんで俺は何にもできねぇんだよ!

死ぬな。

死なないでくれよ。


「ルイーダ。」


無意識に俺はルイーダを抱きかかえていた。


「死ぬな!」


強く抱き締めた。





「そんなに強くしたら痛いよぉ。」


胸に抱きかかえたルイーダの声が漏れ聞こえてきた。


「喋るな。もう喋るな。」


俺は首を振った。



「エジルはすごいねぇ。いつの間にこんなことできるようになったのぉ?」


「ルイーダ、無理するな。本当に死んじまう。」


「どぅへへ。」


ルイーダは小さく笑いながら俺の手を握ると、自分の背中の方へと回させた。

血でヌルヌルした感触がする。

ルイーダに導かれた俺の手は、それしか感じなかった。


「傷が・・・・・」


「ほら、治ってるでしょ?」


俺は勢いよく顔を上げた。

腕の中に横たわるルイーダがにっこりと微笑んでいるのが見えた。

俺は驚いてルイーダの背中を手でさすったが、血の感触と少しザラザラした感触以外には何も感じられなくなっていた。


「くすぐったいよ。」


か細い声で呟くとルイーダは目を閉じ、そのまま俺の胸に体を預けた。




「無事か!?★まだ生きてるか!?♪」


ロシツキー達が木の板を抱えて駆け寄ってきた。

俺はゆっくりと顔を上げた。


「もう、大丈夫だ。」


皆が慎重にルイーダの体を木の板に乗せた。

その時、ハサミで切られた服の隙間から背中が覗いた。

ナイフで刺されたはずなのに、傷口はどこにも見当たらなかったが、

代わりに俺が見たのは、大きな傷痕。

ずっと前についたんだろう、何かで潰されたみたいに肌がザラザラになっていた。


俺はジャケットを脱ぐと、そっとルイーダの背中に被せた。










傷は治っていたが、血が失われ過ぎた。

ライーザの自宅に運び込まれたまま、ルイーダは三日三晩、昏睡状態が続いた。


ライーザと、街の有志の女性達が、寝ずの看病を買って出てくれた。


俺達は、ルイーダが目覚めるのをただ待つしかできなかった。


老父も一命をとりとめた。

しかし衰弱は回復しなかった。

元々、彼の命は尽きようとしていからだ。

「ルイーダが目覚めるまでは死ねんわい。」

そう言って頑張っていたけど、

三日目の朝、老夫は息を引き取った。


ルイーダの目覚めを待つことはなかった。


四日目の朝。


ルイーダは目を覚ました。



「ヨハン・・・・」



目覚めたルイーダが始めに発した言葉だ。

そしてそのまま泣き崩れた。


「じじぃ、ごめんなさい。ごめんなさい。」






ようやく立ち上がれるまでに回復したルイーダを連れ、俺達は老夫の家を訪れた。


老夫の家は解体され、反乱のリーダーグループを筆頭に、地下を掘る工事が進められていた。


「じじぃ・・・・」


またしてもルイーダが言葉を詰まらせた。


ここは、老夫とルイーダの思い出の地。

二人が懸命に働き、街を大きくさせた場所。

二人は本当の家族のように、苦楽を共にしてきた。

そんな二人の思い出の地。



俺は、老夫の最期の言葉を思い出していた。


「わしの家の地下には、金鉱がある。

わしらは、もし街に何か起きたとき、その金鉱を役立てるため、誰にも言わずに隠してきた。

あの紙はわしの家の権利書じゃ。

あの紙が街の物になれば、街が自由に金を採掘することが出来る。

あの家を、思い出を手放すのは辛くもあったが、ルイーダの作った多くの負債を返済するには、この方法しか思い付かんかった。

あの娘がおらんようになっては、思い出なぞ何の意味もなさなくなるからのぉ。」









「おい、お前ら!」


リーダーの男が、こちらに気付き声を張り上げた。

ルイーダの身体が固まるのが分かった。


「ルイーダ、怖ければ俺も行くぞ?」


俺の問いかけに首を横に振る。

そして、ゆっくりと歩みを進め始めた。

リーダーの元へ近付くと、ルイーダは深々と頭を下げた。


もし何か起これば、俺はすぐにでも動き出す準備は出来ていたが、

リーダーの男はルイーダの謝意を受け入れた様だった。


額に汗こそかいていたものの、ルイーダは力強い足取りでこちらに戻ってきた。

その手には、小さなライオンの置物が握られていた。


「これ、じじぃとよく聞いてたライオンのオルゴール。お家が壊される時、あの人が取っておいてくれたんだって。


見てこれ。」




そう言って差し出したライオンの口には、金色の環っかが咥えられていた。


「これ、神器か?」


「そう。ずっと前から持ってたんだけど、エジル達が帰ってくるまで、家に置いたまま忘れちゃってた。」


「優しい人達に出会えて、良かったな。」


「ごめんね。・・・・ありがとう。」





それから、街には世界で初めての民主制というものが取り入れられ、住民選挙によって新しい町長にライーザが選出された。


平穏を取り戻した街は、採掘された金の力も相まって、更なる発展を遂げていくだろう。

ここにはもう老夫の力も、ルイーダの力も必要ない。

無事に一人立ちを果たしたのだ。








船の自室から出てきたのは、見慣れた姿だった。

服はいつもの青い柄物のやつを纏っていた。

長く伸びていた髪は肩の上で切り揃えられ、いつものコサージュが乗せられている。

それは3年前と何も変わっていないように感じる姿だったが、前髪だけはワンレングスの中分けに変わっていた。



俺達は、甲板へと上がっていった。




「ほんとだど!おでは見たんだど!」


甲板の上では、メルテザッカーが集まった海賊達に、身ぶり手振りを交えながら何かを説明していた。


「エジルの体がぱぁーって光って、それからルイーダの体もぱぁーってなって、光がなくなって、そしたらルイーダが目を開けたんだど!」


俺とルイーダは、甲板に並べられた樽の上に腰を下ろすと、その輪に加わった。


「きっと、きっとエジルがルイーダを治したんだど!」


大声をあげながら、俺を指差した。

それに合わせて皆の視線が集まった。


「いや、そうなのかな?俺はそんな自覚ないけど。」


「どぅへへ。そうだよぉ。」


ルイーダが俺の脇腹を肘でつついてきた。


「だがよ、回復させる術は存在しないって言ってなかったかい?」


そんな俺達にポドルスキが問いかけてきた。


「ねぇよ。精霊術に治癒の術はねぇ。それは間違いない。」


「じゃあ何故なんだい?」


ポドルスキの疑問の声に困った俺は、仕方なくルイーダの方に目を向けた。


「んー。知らない。」


笑っていた。


「多分きっと、それは精心術でさぁ。」


アルシャビンが腕を素振りしながら口を開いた。

自分が空間を削り取る時みたいに肘を曲げながら腕を上下させている。


「なるほどな♥️なら説明がつく♣️」



精心術。

人間の心を元に発現する術。

精霊術では成し得ない、特別な力を持つ術。

同じ術は2つと無く、その人にしか使えない、言わば使い手の心を映し出す術。



「きっと、姐さんを助けたいってエジルの心が発現させたんでしょうや。

精心術使いはそう多くねぇけど、大体は相手を倒したいとか、何かを壊したいとか願った時なんかに発現すると聞きやす。現に俺も、復讐を誓った時に使えるようになったし。だから攻撃的な能力であることが多いと聞きまさぁ。」


「すげぇことだよな♦️明日をも知れないこの世界♠️誰かのためだけに力を使いたいと願うなんて、そんなん、お前にしかできないよ★

世界で一番優しい力なんじゃねぇか?♪」


そーゆーことを平気な顔して言うんじゃねぇよ。

本当にバカだな。

俺は無性に気恥ずかしくなった。

だけど、納得できる部分もある。

今考えると、俺自身が魔族との戦いの後で死ななかったのも、この力のお陰なのかもしれねぇ。

だとしたらやっぱり、俺を救ったのも、ルイーダを救ったのも、ルイーダ自身なんだろうな。

だって、きっと、この力はルイーダのくれた実の力なんだろうから。


「違うよぉ。」


ルイーダが俺の顔を覗き込んだ。


「きっかけはそうかもしれない。だけど、エジルの力は間違いなくエジルの力。だからそんな難しい顔しないのぉ。」


なんでもかんでもお見通しかっつーの。

俺は頭を掻いた。


「長いようで短かったねぇ。」


ルイーダは樽から下りると大きく伸びをした後、甲板の柵に体を預けて気持ち良さそうに海を眺めていた。

鼻歌を唄いながら。

あのオルゴールの曲を。


俺はその背中を眺めていた。

背中の傷。

そしてあの時のあの動き。

どうしても口に出せず、俺は自分の胸の内にしまっておくことにしたんだ。






「そう言えばだ♥️」


唐突にロシツキーが懐をまさぐり始めた。


「まだこいつを渡してなかったな♣️」


取り出されたのは、孤島の国の国印だった。


「ほらよっ♦️」


放り投げられたそれを受け取った。


「生温かいんだけど。」


「当たり前だ!♠️懐に入れてたの見たろうが!★そんなことはいいんだよ、どうでも!♪

これで目当ての物は全て揃ったんだろ?♥️」


「あぁ。」


俺はルイーダの元へと歩み寄ると、振り返った彼女の手に国印を手渡した。


「これで4つだねぇ。」


樽の上に国印を置くと、ポーチの中から錫杖の遊環、マントの石座、オルゴールの飾りを取り出して、順番に並べていった。

それぞれが共鳴するように、黄金の輝きを放っている。

今にも何かが起こりそうな雰囲気だった。


「これ、どうなるんだ?」


唾を飲んでからルイーダに問いかけた。

ルイーダがゆっくりと俺の方へと振り返った。


「知らなぁーい。」


俺は真顔でその顔を見つめるだけだった。




つづく。

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