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新訳・エジルと愉快な仲間  作者: ロッシ
第一章・第二部【海賊と俺】
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なぞなぞ①

「さて、本当にどうするんでさぁ?お頭。」


「どうするかなぁ♦️困ったよなぁ♠️なぁ、ルイーダ、なんか分からないか?★」


「え?なんとなく分かったよぉ。」


ルイーダの気の抜けた返事に、俺は勢いよく立ち上がった。


「分かったのかよ!?」


「え?うん。」


「お、そうか♪やっぱりお前を連れてきて正解だったな♥️」


「いやまだ何も言ってねぇしこいつ。とりあえず話を聞いてから判断しろ。」


「ちげぇねぇ。姐さん、分かったことを教えてくんなせぇ。」


「んーとねぇ、さっきからずっと真っ直ぐ歩いてるように感じるけど、この通路ってちょっとずつ曲がってるんだよねぇ。」


「マジか?そうだったか?」


「うん。暗いからよく分かんないと思うけどねぇ。んでね、ちょっと街の地図貸して。」


ルイーダは俺の鞄に手を突っ込むと、ゴソゴソ中を探ると脇の方に入れてあった地図を取り出した。

床に地図を広げると、そこに黒炭で印を付け始めた。


「ここが大聖堂ねぇ。

んでね、この通路の斜度と私の歩幅を考えると、多分こんな感じで歩いてきたはずなんだよね。だから今この辺なんだよねぇ。」


印が付けられたのは、街の北側。

図書館だった。


「んで、このまま通路がこのカーブで続いていくとして、」


黒炭を滑らせた先には、


「時計塔か?」


「だねぇ。んで、その先にはぁー?」


「王立公園。そうか、そしたらその後は大噴水か。そして、」


「そぉでぇーす。そして、大聖堂に戻るのでぇーす。」


ルイーダの付けた印を結んでいくと、見事なまでの円が地図上に引かれたのだ。


「んでね、大聖堂の下にもあったんだけど、そこの壁にも扉が隠されてんのよ。」 


言いながらルイーダが円の内側の壁を指差した。


「は?扉って、どこだよ。」


「見えないでしょー?すんげー上手いこと隠してるんだよねぇ。ぴったり埋め込まれてさ。

んで、ここからは私の想像なんだけど、その扉をね、こうやってね、繋ぐとね。」


図書館の印から、真っ直ぐな線を引き始めた。

図書館から公園、公園から大聖堂、大聖堂から時計台。


「こうやって、こうやって、次はこっちね。」


時計台から走る線は大噴水を結び、最後に図書館に戻った。


「五芒星か。」


「多分こうなるんだと思うんだよね。そんでね、」


続いて、その直線の中心を結ぶように、五芒星の中に円を引いた。


「こうなるの。でね、」


その直線と円の接点と接点のちょうど中心を結ぶように線を引くと、円の中に三角形ができあがった。


「んで、最後にこうなると思うよぉ。」


再び、三角形を形成する直線の中心を結んで円を引いた。


「これ、なぁーんだ?」


「これって、これは聖なる精霊術か?退魔の法陣じゃねぇか。」


「せぇいかぁーい。」


ルイーダが顔を上げると、実に楽しそうな笑みを浮かべていた。


「おいおい、マジか?♣️なんでそんなん分かるんだ?♦️」


「そうだよ。想像なんだろ?」


「そーだねぇ。想像だけど、まぁ多分当たってると思うよぉ。」


「根拠はあるんですかい?姐さん。」


「この島さぁ、なんでこの島だけほとんど魔物がいないん?警備が厳重だから?そんなに厳重だった?田舎の方には軍隊も手が回ってなかったじゃん。なのに強い魔物いないでしょぉー?なんでなん?」


「む、確かにそうだったな。ってことは、これのお陰ってことか?」


「そー考えるとめっちゃ妥当じゃない?多分ね、この街は地下に埋め込まれたこの法陣を護るために作られた街なんだと思うよぉ。

ってか、この建物の配置を見る限り、街自体も法陣を強化する効果を持ってんのかもしんないねぇ。

そんでね、見て、この真ん中の円を。」


「これ、ちょうど城の真下か。」


「そっ。お城の四つ角を綺麗に通ってるねぇ。つまり、この真ん中の円まで辿り着けば、そっからお城に入れるんだと思うんだよねぇ。」


言い終わると、ルイーダは手に付いた炭を俺の上着の裾で拭った。

普段ならここは怒るところだが、今はそんな気すら起きなかった。

ほんの少し歩いただけで、ここまで推測できるこいつの洞察力に、俺は、いや、俺達皆が圧倒されていた。


「まぁでもぉー、全部私の推測で想像なのでぇー、違うかもしれないし、合ってるかもしれないしぃー。」


壁に歩み寄ると、丹念に調べ始めた。

ひとしきり掌で壁をさするように撫で回したあと、真ん中あたりで手を止めた。


「お。なんか書いてあるねぇ。」


その言葉を聞いて、俺はルイーダの側に近寄ると松明の明かりをかざしてそれを読めるようにしてやった。

厚い埃を被ってはいるが、石壁には何か金属プレートのようなものが嵌め込まれているのが分かった。

ルイーダがまたもや俺の上着の裾で埃を拭いとると、そこには何かの文字が見えた。


「えーっと、なになに?」




【天使が200人住む村と悪魔が200人住む村があった。

あるとき二つの村は合併し一つの町ができた。

それから長い長い年月が経ち、あまりにも馴れ合いすぎた天使と悪魔は自分が天使と悪魔どっちなのかということだけでなく、天使と悪魔が200人づついることすら忘れてしまった。


町に100年に一度の祭の年がやってきた。しかしこの祭には天使しか参加することができない。だが上記の通り、町の人々は自分が天使か悪魔のどっちなのか、天使と悪魔が何人づついるのかを忘れてしまっているので、とりあえず一日目は全員祭に参加した。

祭の会場で十字架が配られた。この十字架は他人にかざすと、その人が天使なのか悪魔なのかわかる。しかし自分がどちらなのかは十字架ではわからない。また町の規定でお互い天使なのか悪魔なのか話してはいけない。つまり自分がどちらなのかは自分ひとりで周りの情報から考えるしかない。

ただし、村の全員が悪魔は少なくとも1人はいることを知っている。

自分が悪魔だとわかった人は祭から抜けるものとし、また祭の参加者は全員一日目にとりあえず十字架を周りの参加者にかざしてみたとする。このとき祭から悪魔が全員抜けるのは祭何日目か?】



そのプレートにはそんな文章が刻まれていた。


「なんだこれ?何かの伝承か?」


「いやでも、質問形式じゃねぇですかい?」


プレートの下に目をやると、00、そして0から9までの数字が刻まれた、親指大程度の石板が縦2列に並んでるのが見えた。


「分かった♠️この質問の答えと同じ石板を押すんだな?★」


「どうやらそうみたいだな。」


俺はその文章をもう一度よく読んだ。

天使の中から悪魔を見付ける方法か。


「俺ならとりあえず片っ端から十字架を掲げてくな。早けりゃその日のうちに片がつくぜ。

そういう時は足を使うに限る。」


「確かにな♪なら答えは1だ!♥️」


ロシツキーが1の石板を押すと、それは擦れるような音を上げながら壁の中にめり込んでいった。

そしてしばらくすると同じ音を上げて元の場所に戻ってきた。


「何にも起こりゃしねぇんでさぁ。」


「間違いってことか?」


「バカな!♣️正解だろ!♦️」


「1日じゃ早急すぎるってことですかね?あんまり悪魔を刺激すると何をするか分かりゃしやせんし、少し様子を見つつ動くべきじゃありやせんかね?」


「なるほどな。それも一理ある。なら、数日は行動を観察してみるか。悪魔独特の癖なんかも見付かるかもしれねぇな。」


「俺、気になるんだがよ、天使と悪魔の間に子ができてたらどうするんだ?♠️どっちとして判断されるんだ?★」


「そりゃ難しい問題だな。」


「ちょっとどいてぇ。」


俺達3人を押し退けると、ルイーダが石板を押した。

2を一度。00を一度。


するとどうだろう。

先程はウンともスンとも言わなかった石壁が、重たい音と共に天井に引き上げられていくじゃないか。


「200日!?なんでだよ!?」


「そんな時間はかからねぇんでさぁ!」


「そうだ、そうだ!♪」


俺達は同時に抗議の声を上げた。


「うるっさいなぁ。なんででもいいでしょ。」


「いやよくねぇ!理由も分からねぇで前には進めねぇぞ!」


「そうだ、そうだ!♥️」


「あっそぉー。じゃあ説明してあげよーかー?

すんげぇーめんどくせぇーけど、説明してあげるとしますかぁー。

いい?よーっく聞くんだよぉ。

まず、


悪魔が1人のとき


1日目

天使:悪魔は自分以外に1人いる

悪魔:悪魔は自分以外に0人いる

悪魔は1人以上という前提があるから、悪魔はこの時点で自分だけが悪魔だとわかるよねぇ。


悪魔が2人のとき

1日目

天使:悪魔は自分以外に2人いる

悪魔:悪魔は自分以外に1人いる

悪魔は1人以上という前提があるが、悪魔は「全部で1人の中の1人を見ているのか、全部で2人の中の自分以外の1人をみているのかわからない」


2日目

悪魔は1人以上という仮定ではわからないということを、参加者全員がわかっている。

んだから、悪魔は2人以上とわかる。

天使:悪魔は自分以外に2人いる

悪魔:悪魔は自分以外に1人いる

天使は自分含め3人か、本当に2人かはわからないけど、

悪魔は自分を含めて2人じゃないと2人以上という条件に反するので、自分が悪魔だとわかるよね?


というふうにやると

悪魔がx人のとき

x日目には

天使:悪魔は自分以外にx人いる

悪魔:悪魔は自分以外にx-1人いる


悪魔にとっては、

もし自分が悪魔でなければx-2人しか悪魔が見えない人がおり、x-1日目にわかって抜けるはずだから、x日目に突入することはない

したがって、x-1人しか悪魔が見えない自分が悪魔だとx日目に突入したことでわかるでしょー。


とゆーことで悪魔が200人の場合、199日目が終わって誰も抜けず、200日目が始まった瞬間に悪魔全員が抜ける。っつーこと。


分かった?」



「・・・・・。」

「・・・・・。」

「・・・・・♣️」


「分かったならもう行くよぉー。」


「いや待て!やっぱおかしい!」

「そんなん効率悪すぎでさぁ!」

「そうだ、そうだ!♠️」

「そんなめんどくせぇこと普通やるか!?」

「大体の状況を掴めたら、動くべきでさぁ!」

「そうだ、そうだ!♦️」

「その答えが正解だってんなら、この天使達はひとりずつ説教してやらねぇとならねぇ!」

「時間を無駄にすんのはよくねぇ!」

「そうだ、そうだ!♠️」

「大体、天使とか悪魔とかが一緒に住む町ってどこだよ!」

「そんな平和な町があるならこんなとこに法陣なんか作ってねぇでそこへ移住すべきでさぁ!」

「そうだ、そうだ!★」



「うるっせぇー!!!

この設問の意図はそんなこと求めてるわけじゃねぇからぁ!!天使とか悪魔とか例え話だからぁー!!算数的に答えを導き出せって言ってるだけだからぁー!!」


俺達はがっつりと怒られた。





開いた扉の先には、2本の通路が伸びていた。

やはり、この通路が五芒星を描いているって仮説は当たりなのかもしれない。

俺達は右の道を選び進み始めた。

通路の幅は、外周の円に比べると少し細くなったように感じた。


今度はルイーダが先頭を歩いていた。

いつになく早足だ。

しばらく歩くと、ルイーダが再び壁を探りだしだ。


「ここら辺に扉があるのか?」


俺の質問には一切答えず目もくれず、ルイーダは壁のプレートの埃を落とした。


俺は確信した。


やはりさっきの件で怒っていると。


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