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木星のユピテル

わたくしは木星のスタリオン、ユピテル。

天然で掴みどころのない性格をしていると、どこかの誰かさんは言います。


ユピテル「ううん……ここはどこかしら」


気が付けば、湿地帯を抜けた小高い丘の先にある森林の中に、ひっそりと潜む遺跡にわたくしはおりました。

白い石灰岩の上に建てられた純白の遺跡が森の緑と仲良く遊んでいます。

側には結晶の生えた、たくさんの池も見つけました。


ユピテル「なんて素晴らしいところでしょう!」


わたくしはすっかり上機嫌になって、のんびりと遺跡を飛んで巡りました。


ユピテル「あら、よく見たらこの池は誰かが作ったものみたいね。きっと昔の人は雨水を貯めて飲んでいたに違いないわ」


それからわたくしは、一番大きなピラミッドの階段を、跳ねるように、ぴょんぴょんと登ってみました。


ユピテル「まあ、素敵な景色!」


そこから見える景色は本当に素敵でした。

眼下に広がる森の向こうには、黄金色に輝くサバンナが遠くまで広がっていたのです。


ユピテル「あそこを駆け抜けたら気持ち良さそうね」


色んな想像を膨らませるのに夢中なわたくしは、山のように茂る巨大なサボテンには全く無関心でした。

今思えば不気味で目立っていたはずなのに、どうしてかしら、やっぱり全く興味を示しませんでした。


ユピテル「んー!気持ちいいわ!」


このサバンナのようにどこまでも自由なわたくしは、鋭い茨の触手が地面から伸びて次々に襲ってくるのに対して、それにも気付かないでサバンナを駆け抜けます。

正直に言って、とても楽しかったです。


ユピテル「まあ、何かしら」


急にですよ。

ゴゴゴ、と地鳴りが聞こえました。


ユピテル「きゃあ!」


突然、動き出したサボテンの山に、わたくしはようやくダークマターの気配を感じました。

本当に驚いて悲鳴を上げました。


ユピテル「やだいつの間に、どうしましょう」


おろおろまごまご。

わたくしはこうして、あっという間に捕らわれてしまったのでした。


ユピテル「めでたしめでたし」


マルス「どこがめでたいのよ……」


ユピテルを解放した一行はサバンナを歩いていました。


アレッタ「ユピテルはうっかりさんね」


ユピテル「そうかしら」


メル「いい?ユピテルお姉さん」


ユピテル「なあに、メルちゃん」


メル「ダークマターは本当に危ないから、これからはちゃんと逃げないと駄目だよ」


ユピテル「そうね、分かりました。でも、また追いかけられるようなことなんてあるかしら」


アレッタ「ねえ、見て」ほらほら


騎士「うわ!夜が来た!」びくっ!


メル「きゃあー!逃げろー!」ひゅー


騎士「あ!メル!」


マルス「首飾りに入ればいいのに、メルってば」


ユピテル「はっ!わたくしも逃げなきゃ!きゃあー!」ひゅー


マルス「馬鹿じゃないの!待ちなさいちょっと!」


夕空を塗りつぶさんばかりの黒い大群は、騎士の頭上を激しい音を立てながら通り抜けてメルとユピテルを追いかけます。


アレッタ「困ったね」


騎士「一難去ってまた一難だよ」がくっ


ウェヌス「おお、楽しそうなことしてるな」


マルス「ここは自分たち三人が力を合わせて乗り切るよ」


ウェヌス「三人て、あたしら人じゃないぞ」


マルス「いちいちうるさいね」


ウェヌス「間違えたのマルスだろう」


マルス「間違え、て、細かいことはいいの」


アレッタ「二人とも見て」ほら


ウェヌス「二人ともて、だからあたしら」


騎士「戻ってきた!」


ユピテル「コウモリさん、こっちよ!こっちこっちー!」ひゅー


メル「呼ばないでー!」ひゅー


ウェヌス「よし。楽しそうだからほっとこう」


マルス「人でなし」


ウェヌス「人でなして、何度も言うけどさ」


騎士「あーもう!とにかく闘うよ!」


ウェヌス「りょ」


マルス「まずは自分の力を使いなさい」


騎士は夕陽を背に、空間を蹴って、雲よりも遥か高く空へ駆け上がりました。


ユピテル「助けてくださーい!」ひゅー


メル「メルも助けてー!」ひゅー


コウモリの大群は二人を追って、騎士のいる上空目指して滑空します。


騎士「うわ……あのコウモリそれぞれ子供くらい大きい……」きしょ…


ウェヌス「丁度いい、都合よく焼きやすいぜ」


ハルバードをハンドキャノンに変えて狙いを定めます。


ユピテル「わたくしは味方です!どうか撃たないでください!」あわわ


ウェヌス「ごめんユピテル。戦いに犠牲はつきものなんだ……」


ユピテル「そんな……!」


騎士「いや撃たないよ!」


放たれた熱は二人の間を抜けて炸裂、コウモリの大群を蹴散らしました。


騎士「うわわ!」


ところが数があまりに多く、残ったコウモリ達がバタバタと慌ただしく盾で身を守る騎士をすり抜けて、まだまだ二人を追います。


騎士「アレッタ!」


アレッタ「はーい」


ユピテル「助けてアレッタ!」ひゅー


アレッタ「うん、任せて」


メル「疲れたよー!」ひゅー


アレッタ「もう少しの辛抱よ」


騎士はマルスの力で再び空中を駆け巡り、コウモリ達を追跡します。

それからユピテルとタイミングを合わせて、先回り、アレッタを宿して敵の前へと立ちはだかりました。


騎士「体が落ちる。一発で決めるよ!」


アレッタ「わかった!」


ハルバードの先から噴出した水流は、コウモリ達を瞬く間に渦巻く水の球体に閉じ込めました。


アレッタ「トドメよ!」


球体を圧縮して爆散。

コウモリ達は見事全滅、二人を無事に救出することに成功しました。


ユピテル「二人ともありがとうございます」


アレッタ「無事で何より」


ウェヌス「でも楽しそうだったじゃないか」


ユピテル「ええ、とても楽しかったわ」


マルス「もう勘弁してちょうだいね」


ウェヌス「そうだメルちゃんも、今度逃げるときはあたしの胸に逃げなさい」


メル「胸?どこ?」


ユピテル「あら、逃げている間にどこかに落としたみたいね」


アレッタ「それならみんなで探しましょう」


騎士「ええ……」


くたくたになった騎士はその場にへたりこんで、この成り行きを疲れきった顔でしばらく見守るのでした。

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