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水星のメルキュリアス

そこは、広大で芸術的な都。

雪景色と一体となった、白い岩で出来た壮観な美しいピラミッド郡が目立ちます。

また、どの建造物にも緻密な絵や文字が彫られていて、さらに宝石の様な結晶が生えるように突き出ています。


メル「わあ!きれい!」きらきら


ここへ落ちた水星、メルキュリアスは、この美しい神秘に満ちた町に深く感動しました。


メル「んー、誰もいないなあ」きょろきょろ


ここに他の星はおらず、アレッタもまだこの世界へは来ていませんでした。


メル「怖いなあ……」


心細くなったメルはその場で小さくなってしまいました。

しかし。


メル「ここにいたら怖いのに見つかりそう」


そこは見晴らしのいい開けた広場でした。


メル「この人、王様かな?」


直立する立派な像。

なんとなく見ていましたが、ハッとなって、安全なところを探して町を散歩します。

メルをはじめとする星たちはスタリオンという光なので、ひらひらと漂い移動します。


メル「わあ!これ可愛いかも!」


町にはユニークな彫像がたくさんありました。

モチーフは分かりませんが、メルには可愛いく思えました。


メル「わ!なにあれ!」


また、壁面に口を開けた鳥の彫像のあるピラミッドなんてのもありました。

よく見ると、町のあちこちにはその様な動物をモチーフにした彫刻がいくつかありました。


メル「これは文字かな?」


文字のようなものがびっしりと刻まれた階段を抜けて散歩を続けます。

町は広く、住居や宮殿なんかがたくさんありました。


メル「でも、隠れるには心細いかな」


メルは段々と散歩、というより探検が楽しくなってきました。

いい心持ちになって、適当に即興の歌なんて口ずさみながらズンズンと探検します。


メル「このピラミッド、不思議な感じがする」


なんとなく心の惹かれる、奇妙な感覚に誘われて、メルはピラミッドの中へと入ります。

そうしてトンネルを進んだ奥に神殿がありました。


メル「おおー!」うきうき


朱色に染められた豪華絢爛の神殿。

繊細な彫刻には感銘を受けます。


メル「ひっ!」


その時、ぞわぞわとして、おぞましい気配に気が付きました。

彼女はダークマターという未知のエネルギーに誘われてしまったのです。


メル「あわわわ……!」ぷるぷる


神殿から滲み出た霧のようなダークマターは一ヶ所に集まって、コンゴウインコを模範した巨大な彫像となりました。


メル「きゃあー!」ひゅん!


メルは一目散に逃げます。

ダークマターは彼女らスタリオンを取り込み、抑圧、支配することを目的とします。

とっても危険なのです。


メル「来ないでえー!」


敵は遺跡を破壊しながらメルを飛んで追います。

彼女が遺跡から脱出すると、遺跡は大きな音を立てて崩れてしまいました。


メル「ふえぇぇぇ……」びくびく


敵はメルの前に立ちはだかり、翼を広げて威嚇します。

彼女は何とか敵のついばみを避けて、とにかく町を逃げ回りました。


メル「誰か助けてえー!」号泣


さっきまでの楽しい気持ちはすっかり消え失せて、泣きながら逃げ回ります。

遺跡の間を縫うように逃げるその上空から、敵が鋭い目で睨みつけてきます。


メル「やあだあー!」


しばらく逃げて、遠くに珍しい建物を見つけました。

それは、アレッタの世界とこちらの世界が繋がる瞬間に出来た異物でした。

教会という、この町にとってはある意味で嫌遠したくなるものでした。


メル「そうだ!メルはスタリオンだから扉なんて関係ない!」


言って、メルは黒く重い扉をすり抜けて教会内へと飛び込みました。

一方で敵は派手に扉にぶつかりました。

どうも一度変身してしまえば、元のエネルギー体には戻れないようです。

メルはとにかくここで縮こまって助けが来るのを待ちました。


メル「アレッタ……助けて」ぷるぷる


心に浮かぶ親しい少女。

記憶はないけれど、まるで自分自身のように近くて愛おしい存在です。

アレッタがこの世界を救う鍵で、そして、自身はその手助けをする。

それも無意識に理解していました。


メル「怖いけれど頑張らなきゃ」


それぞれが役割を与えられた物語のようなこの世界で運命の歯車が動き出します。


メル「でもやっぱり怖いよう……」しくしく


その頃、敵はアレッタの召喚を察知していました。

それからもう二人。

変則的で例外的な少女、フィナ。

宿敵であり真の狙いである騎士、クレイド。

彼らの召喚にも気付きました。

教会の上でジッと好機を待ちます。


メル「ずっと上にいる!出てきたメルを食べる気だ!」


メルはますます泣いて怯えるばかり。

そこへ、騎士とアレッタがやって来て、見事に敵を打ち倒して彼女は救われたのでした。


メル「ねえ、騎士さん」


その後。

熱帯雨林での戦いを終えて休憩する騎士へ、メルは質問をします。


メル「騎士さんのお名前はなんていうの?」


騎士「僕にも分からないんだ」


メル「そう。実は、メルも自分のことはよく分からないんだ」


騎士「記憶はないの?」


メル「うん」


騎士「そうか、君もか」


メル「でも夢は見るよ」


騎士「へえ、それはどんな夢だい」


メル「えとね、絵を描いている夢。誰かのことを考えて一生懸命に描いている夢だよ」


騎士「それは素敵な夢だね」


メル「うん!」


アレッタ「ねえ」


騎士「どうしたの」


アレッタ「七面鳥さんがいるよ」ほら


騎士「でかっ!」びくっ


メル「ひいっ!」びくっ


二人よりも巨大な七面鳥が、首をかしげて丸い目で見つめます。


アレッタ「ダークマターかしら」


騎士「そうとしか思えないよ!」あせあせ


アレッタ「でも、焼いて食べたら美味しそうね」


騎士「こんな時に何を言ってるの!?」


メル「騎士さん、メルの力を使って!」


メルを宿した騎士の鎧と盾が凛々しく姿を変えて堅牢になります。

七面鳥がいくらつつこうとも傷ひとつつきません。


騎士「顔はやめて!」よけっ


メル「どうして頭に防具を被ってないの?」


騎士「被り物は苦手なんだ」よけっ


メル「ものすごく狙ってくるよ」


騎士「それでも被らない!せあっ!」


七面鳥がつつき、騎士もつつく。


メル「あのクチバシをどうにかしなきゃね」


騎士「よし、それなら!」


ハルバードを勢いよく振り下ろしてクチバシを砕きます。


メル「いけいけー!」


さらに盾で七面鳥の顎を下から叩き上げて、空いた首へハルバードを振り払います。

首が一瞬飛んで、瞬く間に、敵は羽のようになって散りました。


騎士「ふう、何とかなったね」


メル「やっぱり強いなあ。騎士さん、かっこいい」


騎士「そうかな」えへへ


アレッタ「残念。焼き鳥には出来なかったね」


騎士「最初からそのつもりはなかったよ……」


メル「でも、騎士さんの武器でさばいて、盾を鉄板にしたら美味しく焼けそうだったよ」


騎士「そんな使い方、絶対に嫌だ!」ふい


メル「ふふふ!」くすくす


メルはもう一人ぼっちじゃありません。

これからずっと怖いことが続くけれど、もう一人じゃないから大丈夫。

怖がりだけれど、最後まで、勇気を出して共に戦います。


メル「がんばるぞー!」

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