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理不尽な世界を変えるには

目を開けるとそこは異世界という感じではなく歴史の教科書に載っているような一昔前のヨーロッパのような街並みだった。魔王討伐なんて言われるからてっきり俺はどの街にも魔物や化け物であふれていると思っていたのだがそんな感じは全くさせないほど美しく澄んだ街だった。


「どうですか?この街、意外といいでしょう??」


どこからか先程まで一緒にいた天使の声が聞こえる。いるはずのない彼女の声に俺は驚きながらも辺りを見渡すとそこにいたのは1匹の鳩に似た丸っこい生物だった。

いやいや、まさかなと思いつつもその生物の方をちらりと見るとその生物は羽をパタパタとさせながらこちらへ向かってきた。

(嫌な予感しかしないけど一応聞いてみるかぁ。)


「あのー、もしかしてヤクミさん...ですか?」


恐る恐るその奇妙な生物に話しかけるとその生物は口を開きやはり先程別れたはずの天使のような声で話し始めた。


「えーっとですね勇希様、完全に忘れてたんですけど私もここの世界であなたのナビゲーターとして共に過ごすことになってたんですよね...この世界で天使族はこういった動物の体をコントロールし天界から直接テレパシーを送り行動するようになっているんです。えーと、ですので今後もよろしくお願いします。ね?」


つまり要約するとこのドジっ子天使は俺との話に花を咲かせすぎたせいで1番しなくてはならない魔法のことや言語のことなど案内人としての仕事を一切合切忘れていたらしい。俺の一話前の恥ずかしいセリフをできれば是非返していただきたいものだ。

こうして俺はその鳩に似た何かを通して喋りかけてくるヤクミさんの説明を今度はしっかりと聞いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから約1時間が大抵のことは理解することができた。1つはこの世界での言語と文字のこと。言語は今まで自分が話していた言葉で統一されているらしいが文字の方は自分で覚えなくてはいけないということ。2つ目は金銭のこと。天界はどれほどの金を持て余しているのかわからないが俺にお祝金とかなんとかでポンと一千万も出してくるんだから相当持っているのはよくわかった。ちなみに足りなくなったら自分で稼げとのことだそうだ。3つ目はヤクミさんのナビゲートとしての能力のこと。できることは敵の魔力値と身体能力の高さをはかることのみだけだといっていた。そのことについてもう少し聞こうとしたのだがその言葉の後でヤクミさんは俺の肩でスヤスヤと眠り始めた。

(天界での仕事は大丈夫なのだろうか...)


「まぁまだ1日目だし今日は魔法の確認だけするか。えーっと、俺の魔法はっと」


魔法 デリート『消去』全ての魔法を2時間無効化する魔法。ただし使用中は自分も魔法を使えなくなる。

1つ目の魔法からすでに肉弾戦に持ち込む魔法って、どれだけ俺を傷だらけにさせたいのだろうか、、、


魔法 完全なる盗賊『ア・ラバー』敵の魔法、もしくは身体能力を全てコピーする魔法。ただしコピーしたものが魔法の場合魔法は己のものとなり元の術者は使えなくなってしまう。なお魔法のコピーは5個までしかできないため5個目の魔法をコピーした時点でこの魔法は身体能力のコピーしかできなくなる。

つまり身体能力を奪えば解除するまで相手を無抵抗にでき魔法を奪うとその魔法は自分のものとなり相手はその魔法を失うということらしいが奪える魔法は5つまでということか。使いやすいような使いにくいような不思議な魔法だなぁ。

で、次が最後だよなってあれ、この能力は...


魔法 天国と地獄『ヘブンズヘル』能力不明所持するだけで不運に見舞われる。


最後の魔法、これはおそらく復讐をしようとする俺への罰なのだろう。俺のやろうとしていることは決して許されることではない、そんなことはわかっている。だからこの魔法は自分への戒めとしておこうと決めた。

その後魔法の出し方など簡単に脳から得た情報を頼りにまねていると俺はふとヤクミさんの能力に疑問を持った。



「あのー、ヤクミさ..」


そう言おうとした時後ろになにかがぶつかる感触がした。ふと振り向くとそこには銀髪の傷だらけな小さくか細い少女が小刻みに震えながら立っていた。が、少女が来た道から声が聞こえると慌てて俺の後ろへ隠れていた。

どうやら追われているらしい。少女が来た道からはつり目のとても大柄な男と青い髪の明らかに異様な雰囲気の男がやってきていた。

そして俺と女の子の姿を見つけると一番大柄な男が俺に話しかけて来た。


「おい兄ちゃんよぉ、そこの後ろに隠れてるゴミみたいな女こっちに返してくれねぇかなぁ?兄ちゃんも痛い目あいたくねぇだろ?な?早く出してくれよ」


怖くて足が竦む。あの時の恐怖を鮮明に思い出す。当時中学生だった俺を教育の一環と称し殴り続けた体育の教師にそっくりだ。

怖い。が、怖さよりも大きな感情があることに俺は驚いた。それは殺意と苛立ちだった。その苛立ちはそいつがその教師に似ているからという理由で込み上げてくるものではなく、この少女をここまで怯えさせたことへの怒りだった。少女が生前の自分と重なり、助けなくてはという使命感が自分の脳に強くインプットされる殺意が心のそこから込み上げてくる。


「お前らみたいな人間みんな死んでしまえばいい。」


そう呟いた瞬間顔に鈍い痛みが走った。どうやらあの男に殴られたらしい。

野次馬がどんどん集まってくる。皆面白がったり見て見ぬ振りをしたり本当にクズばかりだ。


なんだこの雑魚気持ち悪いななどと言いながら大柄な男は俺の存在などなかったかのように後ろにいた少女の首を掴み連れて帰ろうとしていた。少女は苦しみながら必死にもがいている


ここで諦めたら絶対にダメだ。

このクソみたいな世界を変えるにはここで俺が変わらなくちゃいけない。もう二度とあの頃の自分にはなってはいけない。ならば今自分にできることはこの授かった魔法しかない


「完全なる盗賊」


体のそこから魔力が込み上がってくるのを感じた。絶対にあの子を助ける。そして復讐するんだこの理不尽な世界全て手に!


「目の前の男の身体能力を全て奪ぇぇえええ!」


一瞬ピカッとあたりが光り何も見えなくなる。

目を開けると目の前にはさっきまで立っていた男がマリオネットの糸でも切れたかのようにその場に倒れていた。

周りにいた人々や首を掴まれていた少女、そして倒れた大男は一体何が起こったのかわからないとでもいうような表情をしていた。


俺は初めて魔法を使い、初めて人と対立をした。



















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