異世界転生トラック野郎伝説キリオ だってよ
今流行りという異世界転生ものを始めました!
更に今話題というVRゲーム・・・は止めて、ARゲームを題材にしました!
初作品です!よろしくおねがいします!!
あ れ か ら 4 0 年 ! !
伝説は、あの日から始まった。
勇者として異世界転生したオレは並み居るモンスターをちぎっては投げちぎっては投げ、イケメン魔王を抹殺。
助け出した姫様はオレのそんな姿に惚れ、入籍。
救世王として鳴り物入りで【ファルシティ王国】国王として即位したオレは、国中の美女を後宮へ集め、酒池肉林ハーレム三昧の日々。
直里は新しい恋を見つけて結婚、今では幸福な家庭を築いている。
愛実はこう、なんか、幸せになった。
オレは国の英雄、そして今では晴れて王国の主となった。
世界は救われた。悪役は退場。文句の付けようのないハッピーエンドだ。
かくして世界は平和になったが、オレ達の戦いは終わらない。
本当の戦い(夜の)はここからだ──!!!
・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・
「──さん・・・お兄さん!着きましたよ・・・?」
「ふぁ・・・っ?」
控えめに、しかし強く揺さぶられる感覚。
浅い眠りから意識が浮上するのを自覚すると、ぼやけた視界は急速に色を取り戻していく。
そこには、気遣わしげな色を載せた瞳がオレを覗き込んでいた。
「直里・・・?」
「はい、直里です。・・・お兄さん、よく寝てましたね?」
安心したようにくすり、と笑った彼女は小首をかしげ、オレを揺する手を止める。
トレードマークの芋っぽいジャージ上下にセミロングのストレートヘアがよく似合っている。
今日も我が従妹様は将来有望だ。
「ん・・・ふぁぁぁぁあ。お前、確か王様と再婚したんじゃ──」
「・・・何ですかそれ!?ぜ、絶対まだ寝ぼけてますよね?はやく起きてくださいってばぁ!!」
唐突に発せられたショッキングな発言に、直里は涙目のままがくがくとオレを揺さぶる。
いい具合にそれが目覚ましになったのか、ようやく思考がクリアになってきた。
いくらイケメンでも中年の後妻は嫌か。うん、よく考えなくても当然だわな。
軽く伸びをして辺りを見回すと、厚手の布地で覆われた壁面が目に入った。同じものは壁の3面に続いており、1方向にだけ開かれている。
ほの暗い室内(?)にそこから陽光が差し込んでおり、細かいホコリを照らして光の筋を形作っている。
その眩しさにオレは軽く目をしばたかせた。
そんなオレの様子を若干ジト目のまま直里は一瞥すると、軽くため息をついて外へ出て行った。
それに続き室外へと足を踏み出すと、オレの視界に巨大な黒いシルエットが飛び込んできた。
──【混沌の塔】だ。
・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・
あ れ か ら 4 0 年 ! !
──ではなく、およそ4か月。
それだけの時間が、王宮での1件から経過していた。
結論から言うと、オレ達は帰ることができなかった。
王宮で魔王と対峙し、王様から詐欺くさい方法で世界を救うクエストを受諾したあの日。
王宮の外に出たオレ達が目にしたのは、いかにもファンタジーといった中世ヨーロッパ風の街並だった。
街ゆく住民に尋ねて回ったが一様に首を傾げるのみで、ゲームフィールドから出る方法も何も、満足の行く情報は得られなかった。
結局、わかったのは──
ここが【ファルシティ王国】の都、【王都ファルシティ】であること。
同じような境遇の者達は他にも、それこそ無数に存在すること。
オレ達のような【勇者】は冒険者ギルドへ所属し、日夜【塔】へ挑んでいること。
この三つだった。
──疑問はある。
ここはゲーム世界なのか?それとも本当に剣と魔法の異世界なのか?
なぜ他にも勇者が居るのか?王様を始めとした王国の連中は何を考えているのか?
しかし、そんな疑問とは無関係に、オレ達は日々を生きてゆかなければならない。
腹も減るし住むところだって必要。つまり衣食住、そして金だ。
幸いにも、オレ達異世界勇者には、共通にして最終目的となる役割・・・要するに働き口が用意されていた。
──【混沌の塔】の探索だ。
「・・・遅い!いつまで寝てんのよクソ兄!!」
腰に手をあて、怒ってますよ、のポーズで我が妹が睨みつけてくる。
その隣では苦笑を浮かべた我が従妹がそれをなだめていた。
近頃では見慣れた、異世界(推定)の日常風景だ。
「クソとはなんだクソとは。──まあ、居眠りについては謝るぜ、あんまりにも振動が心地よかったもんで」
「あ、あはは・・・」
ぶちぶちと文句を垂れる妹様を華麗にスルーし、オレは先程まで寝床にしていた場所へ目を向ける。
合金製のボディ、コンパクトながらパワフルなゴムタイヤ、陽光を反射しにぶく光るヘッドライト。
どこに出しても恥ずかしくない、立派な自動車であった。
この車、実はこの国──【ファルシティ王国】の主要な交通・流通手段となっている。
ピックアップトラック、またはダットサン等と呼ばれる車種のこいつは、完全無人運転で人やモノを素早く、大量に運んでくれるのだ。
──おいおい中世ファンタジーだろ?大気汚染とかヤバいんじゃないの?と思わなくもないが、そこは安心、【魔導エンジン】搭載で全くクリーンなんだそうだ。やったぜ。
そしてとうとう出ました、魔導。
これぞファンタジーって感じ。
若干ムリヤリな気もするが、そこは目を逸らすようにしている。
いいじゃない、便利なんだもの。
ちなみに、名称は【転生トラック】。
色々と言いたいことはあるだろうが、名付けたのはオレじゃないので許してほしい。
だってナンバープレートにそう書いてあるもん。 ※衝突しても転生できません
そんなわけでこの車両──【転生トラック】はオレ達を運ぶという役目を果たしたからか、軽く車体を揺らすと街道へ向け走り出す。
日頃の感謝を込め敬礼でそれを見送ると、オレはきびすを返し今日の目的地──
【混沌の塔】へ再び目を向けるのであった。
どうでしたか?
無人運転車両は既に、一部の地方で試験的に運用が開始されているようです。未来世界の道路には運転手は居ないのかも知れないですね!
次回も読んでください!!