順番待ち だってよ
今流行りという異世界転生ものを始めました!
更に今話題というVRゲーム・・・は止めて、ARゲームを題材にしました!
初作品です!よろしくおねがいします!!
「お兄さん!?」
慌てたような直里の声が響く。
すまん、許せ従妹よ。
だってこうしないと終わりそうにないんだもん。
心の中で謝罪しつつ、ちらりと背後を見やると、オレのことをすっごい睨んでいる愛実と視線がぶつかり、慌てて正面に向き直る。
一方の王様はと言うと、予想通りというか何というか、これまたすっごい笑顔だった。
【クエストを受諾しました】という表示が出た後、ダイアログは縮小し跡形もなく消え去る。
「おお・・・ありがとう、ありがとう勇者様方!!」
「万歳!」「万歳!!」
感激のあまり再びぶわっと落涙する王様。
万歳三唱する衛兵のみなさんを半笑いとともに眺めていると、いつの間にか現れた宮廷楽団によるオーケストラの演奏が開始された。
荘厳な調べを背景に、王様以下一同の万雷の拍手が響き渡る。なんだこれ。
「今!伝説は始まったのです!苦難の旅へ踏み出した勇者達に栄光あれ!」
「栄光あれ!」
演奏のボルテージが最高潮に高まると、地響きを立てて宮殿の入口が左右に開く。
扉までの間は左右二列に衛兵の皆さんが並んでいた。直立不動の姿勢は普段の訓練を忍ばせる見事なものだ。
戸惑いっぱなしのオレ達はなぜかヘコヘコと左右に会釈を振りまきつつ、カーペットを踏みしめながら扉をくぐる。
扉の先は廊下だった。
等間隔に置かれた燭台に照らされた石造りの通路は、20m程で出口になっているようだ。
先程まで割れんばかりに響いていた拍手が遠くなるのを耳にすると、急にどっと疲れを感じた。
他の二人も同じだったようで、軽くため息をつくとお互い苦笑を浮かべる。
「なんか悪いな、変なことに巻き込んじまったみたいで──」
ばつの悪さに後ろ頭をかきつつ切り出すと、直里はふるふると首を振った。
「それを言うなら、最初に【UG】に皆を誘ったのは私です。誰が悪いなんて気にする必要、ないですから」
「すぐちゃんが悪いわけなんて無いし!クソ兄は──まあ、今回は保留で」
「──何だそりゃ」
くすくす、と笑いをかみ殺しうなづき合うと、背後の扉に目を向ける。
重厚な扉はまだ閉じられておらず、少し薄暗い廊下と部屋の境目には、光の筋が出来て赤いカーペットを照らしていた。
「お兄さん、ここはゲームの──【UG】の中なんでしょうか?」
「わからん。──だが、まあ。慌てず対処すりゃ何とかなるだろ」
「何とかって、何よ。わけわかんないし」
小首をかしげつつ疑問を浮かべる直里に、オレの言葉尻を捉えていつもの如く噛みついてくる愛実。
可愛らしく、小憎たらしい二人の少女の姿に、オレは密かに決意を固める。
この中で男は、年長者はオレだけだ。
──しっかりしないとな。
しかしそんなオレの決意をよそに、事態は更に進行していた。
「よくぞ我等が喚びかけに応えてくださった、勇者よ!今こそ我が【ファルシティ王国】を狙う悪しき魔王を打ち倒し、世界を救ってくだされ!!」
突如、部屋から王様のものらしき大声が響く。
慌てて視線を走らせると、室内ではとんでもない事態が進行中だった。
「フフフ・・・フハハハハ・・・ハァーッハッハッハッハ!!!」
高らかに響き渡る哄笑と共にステンドグラスが砕け散り、そこから金髪碧眼マント姿のイケメンが現れた。
魔王だ!
・・・いや、お前さっき帰っただろ!何でまた来るんだよ!?
しかし問題はそれだけでは無かった。
3段笑いで上空にふんぞり返るイケ怪人から視線を移すと、王様の後ろに信じられないモノを見つけて目を見張る。
どう見ても姫様だった。
「──嘘だろ、おい」
当の姫様(推定)は魔王の出現に驚愕した様子で、宙に浮かぶ怪人を見つめている。
──あ、姫様捕まった。
再び視線を戻した先では、金髪碧眼イケメン魔王によってガッチリとホールドされ、金髪碧眼超絶美少女姫が悲痛な声を上げていた。
なんだこれ。
「お、おにい、あれ──」
二人も部屋の様子に気づいたようで、驚愕に眼を見開きながらその様を見つめている。
そして何かに気付いた愛実が、部屋の一点を指差す。
その先には、5~6人ほどの集団が上空を指差し喚いていた。
年齢は中学~高校生くらいだろうか。
全員が黒目黒髪(一名金髪が混じっているが、日本人的な顔立ちを見る限り染めているか、アバター設定で色を変えているのだろう)の集団だ。
何者だろうか?
そんな疑問を挟む間もなく、その正体はアッサリ判明した。
勇者だ。
現在進行形で王様に「世界を救ってくれ!勇者よ!!」と詰め寄られているから間違いない。
そして勇者様ご一行は王様の願いを快く聞き届け(一部誇張表現あり)、王宮は新たな救世主の誕生におおいに沸き立つのであった。
万雷の拍手、そして鳴り響くファンファーレ。
ひどい既視感だ。
そうこうしていると、部屋を覗いているオレ達に気付いたのか、衛兵の一人が扉へ近寄ると「しっしっ」と退去を促してきた。
ゆっくりと閉じられる扉。
王様&衛兵のみなさんに胴上げされる新勇者ご一行の姿が扉に遮られ、バタンと閉じられると薄暗い廊下はシンと静寂に満たされた。
「──なんだこれ」
3人そろってポカーンとしたまま、しばしの間オレ達はその場に立ち尽くすのであった。
どうでしたか?
MMORPGなんかで、フレンドのストーリーシナリオを進めると「お前死んだよな?」と思う事、ありますよね?
次回も読んでください!!