ちょっとした回想 だってよ
今流行りという異世界転生ものを始めました!
更に今話題というVRゲーム・・・は止めて、ARゲームを題材にしました!
初作品です!よろしくおねがいします!!
「あの、お、お兄さん──」
背後から、おずおずと声を上げたのは我が従妹、直里だ。
問いかけに答えようかと思い、ふと思案する。
これだけわけのわからない状況だ、彼女もきっと混乱していることだろう。
普段から愚昧が迷惑を欠けている相手だけに、あまり不安なままにさせておくには忍びない。
ここはどっしりと落ち着いたところを見せて、安心させてやるのがいいだろう。年長者として。
「ああ──その、なんだ。何やら面倒なことに巻き込まれちまったみたいだな?」
「うん・・・」
ぽんぽんと軽く頭をなでてやると、ふっと表情を緩める。
そのまま彼女は小首をかしげ、ぽつりとこう言った。
「えっと、これって【UG】のイベントなの、かな?」
【イベント】──
そう、軽く動転してて気づかなかったが、先程の一幕はまるでRPGのような展開だった。
一昔前だと、一国の姫が浚われて監禁されてるとか、冒頭の文章でサラッと書かれてるパターンが多いんだよな。
そして【UG】。
それは、オレ達がこの場所へ来る直前まで遊んでいたゲームの名前だ。
オレがこのゲームを知ったきっかけは、数か月前のある日、久しぶりに従妹から欠けられた一本の電話だった。
近況報告も早々に切り上げ、彼女が打ち明けたのは、自分が遊んでいるフリーの拡張現実ネットゲームに、オレ達兄妹を誘おうという内容だった。
詳しく事情を聞くと、彼女は仲の悪いオレ達兄妹の仲直りのため、以前からずっと機会をうかがっていたらしい。
オレと妹の兄妹仲は険悪だ。
昔はオレと愛実・直里の3人でよく遊んだものだったが、小学生高学年頃のとある事件がきっかけで、すっかり疎遠になってしまった。
直里は直里でそのことを密かに気に病んでおり、ゲームを通じて関係修復を図れないかと、意を決しての提案だったらしい。
オレも愛実もそれなりにゲームはする方なので、彼女の言葉乗っかることにしたのだった。
尤も、いいかげん兄妹仲をどうにかしようというオレとは違い、妹の魂胆は「クソ兄の毒牙からすぐちゃんを守らなくちゃ!」だったようだが。
【UG】というのはAR──【拡張現実】技術を応用した、一種のネットゲームだ。
完全没入する仮想現実ゲームと違い、このゲームは移動や戦闘など、ゲーム中の動作に自分の手足を使う必要がある。
一昔前に剣型コントローラーを使い、TV画面に表示されるモンスターを斬りつけて進むタイプのゲームがあったが、これはその進化型のようなものだ。
ゲームのフィールドとなるのは、【UG】と呼ばれる広大な地下世界。
各ステージを繋ぐハブとなる【エントランス】を通じ、5種に分かれたステージを探検する──というものだ。
ただし、実際に地下へ潜る訳ではない。石造りの迷宮もおどろおどろしいモンスターも、全て精緻に投影された立体映像だ。
現実を拡張させることで、実物以上にリアリティのある娯楽空間を作り上げる──なんて謳い文句だが、実際その出来は大したものだった。
どう見ても本物としか思えない怪物や、空中に浮かぶ回廊。
そういった現実ではお目にかかれない光景がフィールド所狭しと詰め込まれているのだ。
グラフィックがウリのゲームによく言われるように、現実との区別が付かなくなりそうなものだが、ある1点がこれがゲームであることを証明していた。
【UG】では何があっても死なない。
高所から落下しても、罠にかかって串刺しにされても、モンスターに食い殺されても。
針で刺した程度のフィードバックこそあれど、視界が暗転した後には元通り、五体満足にリスポーン地点に立っている自分が居るのだ。
この、【気軽に死が体験できる】という要素は怖いモノ見たさのある層にバカ受けしたようで、ユーザーの中にはいかに華麗に散るかを競う連中まで居たくらいだった。
オレ達はというと、そんな趣味の悪い遊びをする訳でもなく、普通にゲーム攻略を続けていた。
それというのも、UGにはユーザー間にまことしやかに囁かれる、ある噂があったからだ。
──【迷宮の最奥を踏破したプレイヤーは、あらゆる望みが叶えられる】
迷宮というのは、UGに数あるステージの一つ──【Labyrinth】のことだ。
【Labyrinth】はダンジョン踏破型のステージで、数あるステージでも最難関、全ステージの総集編と言うべき存在だ。
ユーザー間コミュニティには【Labyrinth】攻略スレッドが常時立っており、オレもよく参考にしたものだ。
実際、鬼畜難度と呼ぶべき代物であったが、オレ達はとある事情によりその最深部へ到達することが出来た。
そして隠し扉を発見し、進んだ先にて先程の一幕へと至る──という訳だ。
どうでしたか?
主人公達が来たのは異世界なのか?それともゲームの続きなのか?そのうち明らかになるかも知れません!!
次回も読んでください!!