来たれ!期待の大型新人! だってよ
今流行りという異世界転生ものを連載してます!
更にVRならぬARゲームの要素も入れました!これできっと人気間違いなし!!
よろしくおねがいします!!
(一人目)LV1 19歳・男 後衛希望
特技・好きな学科
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特技:
初見アニメのCV当て。
有名プロダクション所属の女性声優なら正答率100%の自信アリ
好きな学科:
保健体育
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志望の動機
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貴PTに生JSが居ると聞いて志望したでござる。
生JSを四六時中prprできると今から興奮度1000%でござるwww
早くクンカクンカしたいwwウハwwwモエルwwwwww
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採用担当官雑感:
論外。
(二人目)LV5 17歳・男 前衛希望
特技・好きな学科
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特技:
生物の解体
特に人型生物であれば骨格から内臓の位置まで全て把握
生物標本作り、革のなめし、骨彫刻作成 等
好きな学科:
保健体育
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志望の動機
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貴PTを選んだ理由は──特にありません。
話は変わりますが私は生物の解体が好きでして。
それを目当てにダンジョンへ通ってたんですがね・・・
何故か前のPTが解散してしまいまして・・・。
おかしいですよね?
私はただ、できるだけ長く楽しめるよう頑張っただけなのに。
貴PTは理解のある方々であることを願います。
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採用担当官雑感:
誰か警察呼んで来い!
・・・あ、警察居ないんだった。
ともかく教育に悪そうなので×。
(三人目)LV3 13歳・女 後衛希望
特技・好きな学科
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特技:
病属性魔法
好きな学科:
理科
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志望の動機
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わたしは、貴PTの活動に魔法使いとして力になる為、志望しま
した。
必ずお役に立ちます。よろしくお願いします。
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採用担当官雑感:
今までの惨事が何だったのかと思うほどシンプル・・・いや、まともな内容。
特技欄の誤字が気になるけど。闇・・・?
ひとまず、会って確認することに決定。
・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・
「──今、何と?」
「はい。特技は病属性魔法・・・です」
ここは【王立職業安定所】、冒険者ギルドが有する施設のひとつで、異世界勇者に対しクエストの斡旋やPT募集の仲介を行う・・・まあ、RPGゲームの冒険者酒場のようなものだ。
通称ハロワ。
オレはその2階、軽食もとれるラウンジの一角に来ていた。
白系色で統一された室内にはシンプルなテーブルと1対の椅子が並んでおり、勇者諸君がめいめいに歓談や食事を楽しんでいるようだ。
そして向かいの席には、10代前半の痩せぎすな少女がちょこんと座り、伏し目がちな視線をこちらへ向けている。
改めて手元の資料に再び目を落とす。
──【歪沢紗檻】、年齢13歳、女。
服装は深い緑色のサテン地のローブ、とんがり帽子に先の反り返った靴と、伝統的な魔女スタイルのようだ。どうやら相当念入りに後衛魔法職としてロールプレイしてる感じだな。
色々と突っ込みたい点は満載だが、何はともあれ聞いてみない事には始まらない。オレは自然と浮かんでくる苦笑いを営業スマイルで上書きし質問を続けた。
「で・・・では、病属性魔法とはどのような事が出来るのですか?」
「病属性魔法・・・とは、補助・デバフに特化した魔法系統、です。主に探査や妨害に効力を発揮・・・します」
「マジか」
おっといけない、思わず素が出てしまった。
内心の動揺を誤魔化すように咳払いをひとつ。対面の少女の様子をチラ見すると、きょとんとした様子でこちらを見つめているようだ。
なおも帽子の下から向けられる視線を感じつつ、オレは質問を続ける。
「オホン!・・・ええと、それは闇属性魔法──の間違いでは無く?」
「はい。・・・と言うか、この世界に闇の系統魔法は存在しま、せん。ちゃんと【端末】のHELPにも、そう、書いてあります」
「マジか」
また言っちゃった。
素早く【端末】を操作すると・・・あった。本当に「病」って書いてある。
──闇じゃないのかよ!闇とはいったい・・・うごご。
オレは愕然としつつ、こと今の状況に至った経緯について思い返していた。
こんな面接もどきをしているのにも理由がある、ウチの年少組の為だ。
3人一組でそれなりにやれているオレ達ではあるが、今後のことを考えるといつまでもそうは行かない。
どこかで必ず無理が出てくるのは想像に難くないからだ。
これまで過ごした4か月。この異世界から帰還する手がかりは一向に見つからず──また、帰還できたという噂もとんと聞かなかった。
ここへ来た当初に比べ、直里達の髪もすっかり長くなった。
気持ち身長も伸びたように感じる。育ちざかりの彼女達にとって、4か月は外見の変化を伴うに十分な期間なのだ。
少なくとも、このままで良い筈がない。
彼女達を無事、家族の元へ帰すため──取れる手段があれば可能な限り取っておきたい。
その為には力、そして仲間だ。
単純な力なら既にある。3人そろって超能力者である事は、他には無いうちのPTだけの大きなアドバンテージだ。
だからこそ、オレ達と『秘密』を共有し、帰還に向け共闘できる仲間が必要だった。
改めて目の前の少女について考える。
たどたどしいながら受け答えはきちんと出来ていた。特技もまあ、実際に存在する魔法系統だ。
信頼できるかどうかは──これから時間を掛けて確かめて行けばいい。
なら──後は実技試験だな。
・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・
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第二層-11階 混沌の森 - chaotic Forest
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「──『ココ・ガアノオンナノ=ハウスネ』」
【魔法】発動のトリガーとなる呪文に応じ、深緑のローブに身を包んだ少女──【歪沢紗檻】──の周囲を仄かな光を放つ粒子が舞う。
すると目の前に新たな投影ディスプレイが開き、周囲のマップが3次元表示された。直里達の前にも同様のものが開いたところを見る限り、魔法の効果はPT間で共有できるらしい。
マップ表示に目を落とすと、オレ達を中心とした地形が克明に表示されている。
──範囲は半径30m程だろうか。【落とし穴】に警戒しなければならない第二層では特に頼りになるだろうな。
「もう、ひとつ──『ホカノ・オンナノ=ニオイガスル』」
再び光の粒子が舞う。
新たに開いたディスプレイには4つの青い光点と、離れた場所に無数の赤い光点が表示されていた。
察するに青がオレ達、赤がモンスターだろうか?試しに数歩動いてみると、青い光点がつられて動く。どうやらリアルタイムに周囲の索敵ができるようだ。
しかし、闇・・・じゃなくて病属性呪文の構文は『オンナノ』がよく出てくるな。
そういうものだと納得できなくもないが、なんか猟奇的でやな感じ。
しかしまあ──効果は大したものだ。
──【魔法】。
異世界勇者がモンスターに対抗するための手段の一つであり、その系統は地・水・火・風の4つに光と闇・・・じゃなくて病、を加えた6属性。
使用条件は異世界勇者であること、コストとなる【魔灰】を持っていること。
そして──『LVが1以上であること』。
その効果によっては戦闘や探索を有利に進められるので、魔法使いは野良PTでもちらほら見かける存在である。
とは言え、触媒となる【魔灰】の消費コストが結構辛いので魔法オンリーでやっていくのは難しいと聞いたことがある。
前線攻略の大規模PTなんかでは【魔灰】をPT間でプールし、固定の専門魔法職に割り当て運用しているのだとか。
同じような例は野良PTでもあり、戦利品から【魔灰】を多めに融通することで【魔法】の恩恵に預かる場合があるようだ。
とは言え、コストに対するリターンが狙えるラインは中々に厳しいものがあるらしく、【塔】の深部に長期滞在するような大規模PTでも無ければそうそう見かけられないようだ。
そのせいか、現存する魔法使いは普通の物理アタッカーと兼任だったりする場合がほとんどである。
実戦で運用するには色々と難点があるこの世界の【魔法】だが、採用している連中が居るという事はそれに見合ったリターンがあるという事だ。
オレはその事実を今日、実際に目にする事となる。
■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■
「──【念障壁】っ!!」
若木が生い茂る藪をへし折りつつ飛び出してきた【大角兜】。
本来なら完全な不意打ちとなったであろうその突進は、不可視の壁に激突して阻まれた。
轟音を上げ障壁と鈍色の角がせめぎ合い、競り負けた【大角兜】の頭部が上に跳ね上がる。
そこへすかさず、両サイドから【念動剣】が貫き、大量の【魔灰】をまき散らしてモンスターは息絶えた。
草地の上に転がる【魔石】と一緒にストレージへの回収を終え、緊張を解きそっと息を吐くオレ達。
もうこれで何度目になるかわからないが、今回も彼女の魔法に助けられた形となる。
不意打ち、敵の見逃し、突発的遭遇。その全てを常時展開される索敵MAPが丸裸にしていたからだ。
敵がどこに潜んでいるか、どこまで接近しているのか、全て把握できている以上は奇襲など受けようもない。
「・・・す、凄いです、ね。今の、高階──さんの魔法ですか?」
「え、えっと──」
「ま、まあそんな感じかな!それより今のタイミング、索敵魔法が無けりゃ完全に被弾してたわ。オレ達ここを主戦場にして長いけど、、ここまで安定感のある狩りができたのは初めてかもな」
「そ、そうですよ!歪沢さん凄いです!」
若干際どい内容に踏み込みかけた会話を横から修正しつつ、第二層の探索を続ける。
感知魔法の効力は実際大したものだ。足を棒にして獲物を探す必要も無く、赤い光点目指しサーチ&デストロイを繰り返すだけで普段の倍以上もの成果を叩き出している。
こりゃ楽だわー、一度味わったら抜け出せなくなるレベルで。
最初はどうなるものかと思ったが、彼女は正直アタリかも知れないな。
そんな事を考えつつ視線を向けると、何故かこちらを熱っぽく見つめていた少女と視線がかち合う。
一瞬ぎくりとしつつ、そのまま見ていると向こうの方からそっと視線を外した。こんなやりとりもさっきから何度目かになる。
──何だろう、オレ何かしたかな?
顎の先に手を当て首を捻っていると、何故か若干不機嫌な従妹様が右手後方から、ぴったりと身を寄せてくる。
気になるのはこちらもなんだよな。でも怒らせるような事した覚えも無いし──
そんなことを考えていた時の事だった。
「お、またなんか来たみたいだし」
「何だ、また敵か?この方向は──上か」
愛実の声に索敵MAPをたぐり寄せると、一つの赤い光点が接近しつつある所だった。
3次元表示されたマップを指先の操作で回転させつつ、接敵までのタイミングを計る。
第二層の戦いで怖いのは、頭上や足下の死角から襲い来るモンスターの不意打ちだ。
それが防げるなら恐れるものなど何もない。
そうタカをくくり、オレの頭からはこの階層で警戒すべきもう一つの『脅威』がすっぽりと抜け落ちていた。
「もうすぐ見えますね、右手にある大木の裏みたいです」
「よーし、全員準備はいいな?いつも通り直里が先制、愛実が攪乱、オレがフォローと撃ち漏らしの処理だ。歪沢さんは索敵しつつ後ろで待機しててくれ。それじゃ──」
戦闘開始まであとわずか。残る時間を秒読みするように、若木の葉をビリビリと震わせる重低音。──待て、この音は!?
目と鼻の先、という距離にまで接近した所で、ようやく赤い光点の正体に見当が付く。
音の発生源となる橙黒二色の巨大なシルエットが飛び出すのと、オレが叫ぶのはほぼ同時だった。
「──【軍隊蜂】だッッ!!」
【軍隊蜂】。
第二層のほぼ全域に生息する──虫型飛行モンスター。
その外見は「巨大スズメバチ」とでも呼ぶべきもので、全長は1.5mにも達する。
この階層における死亡原因の中でぶっちぎりの1位であり、『空飛ぶ災厄』とまで呼ばれる「手を出してはならない」モンスターである。
その恐ろしさは、金属鎧を容易に食い破る大顎や生半可な刃物では太刀打ちできない甲殻ではなく──その習性。
主に、第二層の上下にひらけた場所を巡回するこいつは、危険を感知すると同族を呼び寄せるフェロモンを広範囲にまき散らすのだ。
【軍隊蜂】の同族は第二層に広く分布し、その大部分がフェロモンに反応し増援として駆け付ける事となる。
その結果待っているのは、空を埋め尽くさんばかりの『災厄』の群れ。
いつだったか、絶える事のない被害に腰を上げた大手PTが有志を募り、高層階に陣取る【軍隊蜂】の巣に強襲を仕掛けた事があった。
結果は──言うまでも無く惨敗。
異世界勇者達は予想をはるかに上回る『数の暴力』の前にあえなく全滅し、それ以来奴等の存在はこの階層のアンタッチャブルとなっていた。
それが今、オレ達の目と鼻の先に迫っている。
(どうする!?逃げるのは・・・駄目だ、隠れられる場所が遠すぎる。攻撃するのはもっと駄目だ、それこそ全滅ENDまっしぐらだ・・・!)
ひりつく危機感を肌に感じつつ思考を巡らせる。
直里の攻撃力なら、不意をつけば仲間を呼ばれる前に倒しきる事は可能だ。実際、これまで突発的に遭遇した場合そうやって切り抜けてきた。
だがそれも、あらかじめ対応パターンを打ち合わせ、不意の遭遇に備えていたからこそだ。
その直里も突然の事態に驚き、攻撃に移れないでいる。
探知魔法というアドバンテージにより弛緩したオレ達に、『空飛ぶ災厄』に対する心構えは無かった。
打つ手はない。
頭の芯が急速に冷えていく感覚に、オレはこういう状況にもう一つ用意していた策を実行に移す事を決意する。
「う・・・おおおおおッッ!!」
「え──!?」
「お兄さん!?」
脳裏でかちり、と歯車の合う音が聞こえる。
距離を消し飛ばせ。
最速で、一番甲殻の薄い場所に、獲物を叩き込む──!!
コマを飛ばしたように視界を埋め付くす橙黒のストライプカラー。
その関節部にありったけの力でナイフを突き立てたて、オレは叫んだ。
「この蟲ケラ野郎!てめえの相手はこのオレだッッッ!!!」
黒く艶やかな複眼に驚愕の色が点ったことを確認しつつ、素早く視線を愛実へと走らせる。
わずかな時間、交差するオレ達の視線。
はっとしたように息を飲んだ我が妹は、オレの意図を察したのか小さくうなずくと、次の瞬間には二人の手を取って駆け出していた。
「えっ、え──!?」
「めぐちゃんっ!?待って、お兄さんが・・・!!」
「振り返んなし!あんな奴知らないし!しゃべってる暇あったらとっとと逃げるし!!」
二人の両手を強く握りしめたまま、脇目もふらず走リ続ける。
その様子に何かを思い出したのか、直里の表情がはっと強ばったものになった。
愛実は鍔広帽子の下できゅっと口を引き結ぶと、耳をすまさねば聞き取れない程の大きさで、ぽつり、と続けた。
「──お兄が、そう言ってるし・・・!!」
【軍隊蜂】のフェロモンを阻止できない状況にもし陥ったら?
あらかじめ、様々な状況を想定してオレ達3人の間で幾つかの取り決めがされていた。
──この場合、死ぬのはオレだ。
1を捨てて他を生かす。
生かす優先順位は直里が上位、あの子はまだ一度も死んでいないからだ。
異世界勇者は死なない。とは言え、死なずにいられるならそうするに越した事は無いだろう。
どうせなら綺麗な身体のまま返してやりたい、というのはオレの願望だ。
きちんと取り決め通りに妹が行動してくれたことに感謝しつつ、巨大昆虫との格闘を続ける。
うなりを上げて迫る毒針の一撃を【跳躍】を交えつつ躱しながら、隙を見て拾った石を投げつけると、【軍隊蜂】は不快そうにカチカチと警戒音を鳴らしつつ、黒々とした複眼でオレを睨みつけてきた。
そんなオレ達の様子に駆け付けようとしたところを、手を掴まれ紗檻は憮然とした様子で振り返る。
「あんたも逃げるし!仲間呼ばれてからじゃ手遅れになるし!」
「そん、な──!!」
嫌です、と叫ぼうとした彼女は、右手を包む小さな手がわずかに震えていることに気付き、はっとその視線を上げる。
真紅のローブに身を纏った少女はその目に涙を滲ませていた。ジャージ姿の少女もまた、珠のような涙を零しつつ、苦悩を滲ませる表情で何かをこらえている。
二人とも納得ずくの行動なのだ。その事を察し、少女もまた決意を固めた。
「──『ズット・ココデ=クラシマショウ』」
ぴしり。
何かがずれる音を立て、周囲を埋め尽くしていた緑が一面の闇へと変貌する。
突然の事態に見回すと、オレ達を中心とした20m四方が切り取られたように、そこから先が漆黒の闇に包まれていた。
「わたし、達の居る所だけを切り取って──孤立させました。音も、光も・・・フェロモンだって、ここから外には行けないし、入れ、ません」
ゆらり、と左手を掲げ、戸惑ったようにホバリングを続ける【軍隊蜂】を指差す。
三角帽子の下には幽鬼のごとく光を放つ、開ききった瞳孔が巨大昆虫を見据えていた。
「これ、なら、いい・・・ですよね?だから──私のために死んでくだ、さい。『オニイチャン・ドイテ=ソイツコロセナイ』──!!」
次の瞬間、黒色光のビームが少女の指先から放たれ、【軍隊蜂】に突き刺さった!
肢の1本と翅の大半を失い、たまらず地面の上に地響きを立て落下する【軍隊蜂】。
子供の腕ほどもある肢をバタつかせもがく様子をぽかんと眺めていたオレ達であったが、ようやく状況に追いついたのかめいめいに動き始める。
「さ、【念動剣】──っ!!」
高速で舞い踊る不可視の刃が、身動きの取れない身体を容赦なく切り裂く。
しばし痙攣を続けていたが、やがて力尽きたのかその動きを止めたモンスターを目にして、ようやくほっと息をつくオレ達。
やれやれ、と肩をすくめ、オレは愛用のナイフを鞘に納めた。
「あ、危ないところ・・・でし、たね」
「うおおお!!?」
間近からぼそり、と蟇の鳴くような声が聞こえ、たまらず飛び上がるオレ。
慌てて振り返ると、やけに熱っぽい視線を向けてくる痩せぎすな少女の姿があった。
何故か首筋にちりちりとしたものを感じつつ、改めて彼女に向け感謝の意を伝える。
「び、びっくり・・・じゃなくて、ありがとな。正直命拾いしたぜ」
「うふふっ・・・あ、貴方のため、です、から」
「・・・むっ」
オレの一言にしなを作り恥じらう少女。
その様子に何かを感じ取ったのか、警戒度を上げた様子でこちらに注意を向ける直里。
あまり普段感じた事のない、「じとっ」とした従妹からの視線に違和感を感じつつ、オレは続ける。
「しっかしまあ、凄いもんだな【魔法】ってのは。あの『空飛ぶ災厄』を倒せちまうんだからよ」
「仲間を呼ぶ、以外はそんなに危ない相手じゃない、です、から。・・・私、お役に立てまし、たか?」
「ああ!メチャクチャ助かったぜ!」
再びくねくねと頬を染め恥じらう少女。
その様子を苦笑しつつ眺めていると、何故か従妹様の機嫌が更に急降下したようで、イラ立ち混ざりの視線が後頭部に突き刺さるのを感じる。
何故だ。
そうこうしているうちに効果が切れたのか、正四面体に切り取られていた周囲の空間が解放され、森の緑と草いきれ、葉擦れの音などがどっと押し寄せて来る。
うるさいように響く虫の音にオレ達は何とも無しにほう、と息をつくと、互いに顔を見合わせるのだった。
・・・本日の狩りもそろそろ頃合いだろう。
「じゃあ、帰るか」
そう提案するオレの声に、3人は否応なく賛成するのであった。
・ □ ◇ ・ ■ ◆ ・
無事帰るまでがダンジョン探索。そして帰ったらお待ちかねの清算タイムだ。
本日の成果は第二層の定番モンスターが山ほど、そして【軍隊蜂】が1匹。
普段から腫物扱いされている空飛ぶ災厄サマは討伐例が少なく、その分【魔石】も希少だ。
本日のMVPとして、明るいオレンジ色の【魔石】は助っ人の彼女に進呈することとなった。
おっかなびっくりな様子で5インチ大の結晶体を握りしめる少女に、今日の感謝を伝えるオレ。
青白い頬をわずかに染めて恥じらうその様子を眺めていると、再び後頭部に強い視線が突き刺さる気配を感じる。
何事かと振り向くと、オレの動きに合わせ「ぷいっ」と視線を逸らせる従妹と、きょとんとした表情の我が妹の姿があった。
「──何かあった?」
「・・・何でも無いですっ!!」
・・・何だろう、オレ何かやらかしたかな?
モヤモヤしたものを抱えつつ、魔法使いの少女へ割合多目に【魔灰】を渡しつつ清算を終える。
前回に続き取り分の割合は減少傾向だが、結果として収入は上がってるんだから問題は無いだろう。
頼りになる助っ人とも知り合えたしな。
【塔】の麓で諸々の手続きを終えた後、名残惜しそうな様子の彼女と別れ、オレ達は宿への帰途についた。
結局、PTメンバーとして誘うには至らなかったが、途中でフレンド登録しておいたしそこはおいおい考えればいいだろう。
そんなことを二人に伝えると、何故か直里から猛烈な拒否反応が返ってきた。
「だ・・・駄目です!あの子は却下、却下です!!」
「ええ!?で、でも頼りになっただろ?オレがこうして無事なのもだいたいあの子のお蔭だし・・・」
その言葉に従妹様は「うう~っ」と可愛く唸りを上げると、ちらりとオレを一瞥してからそっぽを向いてしまった。
どうしたものかと困り果てていると、左脛に鋭く痛みが走る。
思わず「痛ってぇ!」と呻きつつ目を向けると、舌を出した我が妹がオレをまっすぐ睨みつけていた。
「このクソ兄貴!すぐちゃん苛めんなし!!」
「苛めてねーよ!つかお前、状況わかって言ってねーだろ絶対!!」
「そ・・・そんな事ないし!このバカ!バカ兄!!」
再び繰り出してきたローキックをかわすと、互いに天地の構えをとり威嚇し合うオレ達。
普段こういう場合、横合いからハラハラしつつ見守るのがうちの従妹様なのだが、今日に限ってはその様子が無い。
疑問に思いちらりと視線を向けると、僅かに頬を染めたままジト目でオレを睨んでいるところだった。
・・・何だか今日は、彼女の普段見ない様子を見る事が多い気がするな。
「う~・・・駄目なものは、駄目なんです。だって───から・・・」
ぼそぼそとつぶやくその言葉は、後半が愛実の威嚇音にまぎれて聞き取ることができなかった。
おのれ駄妹め。
ともかく。
どうやら今回は従妹様が反対票を入れるのは確実らしい。そうなると愛実も付き合って反対に回るだろうし、彼女を誘うのは見送った方がよさそうだ。
若干残念ではあるが、家庭内の不和と引き換えにはできない。ここは諦めるのが肝心だろう。
しかし──直里は何故、こうまで拒否反応を示したのかね?
宿に着くまでの間、しばし首をひねっていたが、結局答えは出なかった。
どうでしたか?
ヤンデレ魔術師、人呼んでヤン・ウェンリー!!
次回も読んでください!!




