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なんの変哲もなく異・世界転生(旧題:異・世界転生)  作者: @FRON
第一章:オレ、幼女2名と異世界の地に立つ
13/16

お宅は平成派?それとも昭和派? だってよ

今流行りという異世界転生ものを連載してます!

更にVRならぬARゲームの要素も入れました!これできっと人気間違いなし!!

よろしくおねがいします!!

 

【アバター】。

 元はサンクスリット語で、神や魔の化身を表す言葉らしい──だが、オレ達異世界勇者の間では装備品から外見変更、更にそのボーナス効果までを包括したシステム全般を指す。

 オレが愛用している活劇剣士(スワッシュバックラー)セット装備も、我が妹のオッドアイも、愛すべき従妹お気に入りのジャージ上下も全部【アバター】だ。

 冒険者として活動する異世界勇者達にとって、【アバター】は生活必需品であり、日々の糧をつぎ込む対象でもある。


 この世界へ来る前──【UG(アンダーグラウンド)】から共通のシステムだが、あの頃はステージ成績によって得られるボーナスポイントと【アバター】を引き換える方式だった。

 それが今ではクエスト報酬や【魔石】の換金で得られる電子通貨が主な【アバター】の入手手段となっている。

 その種類は実に数万点に上り、組み合わせによるバリエーションはそれこそ無限大だ──


 と、まあ。ここまで長々と語ったのにも訳がある。



<デッ デデッ!デデデデーッ!!><Finish attack-ready...><ギュイーンギュイーンギュイーン>

「せいやぁーーーーー!!!」



 掛け声ひとつ、天高く飛び上がった後に流れるような動きで放たれる必殺飛び蹴り。

 インパクト数十tにも及ぶ一撃は【大角兜(ビッグホーン)】──第二層に生息する甲虫型の重量級モンスター──が誇る重厚な甲殻をものともせず、その外皮もろとも突き破り、着地。

 轟音を上げ立ち上る火柱の跡に残されたのは、琥珀色の【魔石】と舞い散る【魔灰】、そしてメタリックカラーの全身スーツに身を包んだ人物だった。



「すげー・・・」

「・・・!・・・・・・!!(目をキラキラさせながら見守る)」

「ふわぁ・・・!」



 見守るオレ達からそれぞれに感嘆の息が漏れる。直里は目を真ん丸にしているし、我が愚昧(めぐみ)はどこか琴線に触れたのか、興奮しきった様子で両手を握りしめている。

 かく言うオレも興奮を隠しきれない。何しろ本物の変身ヒーローだ。

 どちらかと言うとダークヒーロー(クソコウモリ)派の自分だが、こうして実際に目の当りにしてみると男子としてワクワクせざるをえないのであった。






   ・  □  ◇  ・  ■  ◆  ・ 






 ──説明しよう!

 現在位置は【混沌の塔】13F、通称【世界樹】の幹から樹液が染み出す、格好のハンティングスポットだ!

 こういった場所には多数の虫型モンスターが集うので、異世界勇者達はこういった場所を情報コミュニティ等でやり取りしているのであった!


 そしてオレ達3人組は冒険者ギルド──正式には【王立職業安定所(ハ○ーワーク)】──の臨時PT募集に参加し、ここへ来たという訳である!

 しかし、待ち合わせ場所に現れたのは・・・なんと、全身スーツのヒーローなのであった!!!

 状況説明おわり。



「・・・おにぃ、さっきから何ブツブツ言ってんの?ぶっちゃけキモいんだけど」

「んおっ!?こ、声に出てたか・・・いや、気にすんな。ちょっと、そう、連携技のシミュレーションをだな・・・」



 愛実はいぶかしげにオレの顔をジロジロ眺めていたが、やがて興味を失ったのか「あっそ」とつぶやき去ってゆく。

 危ない危ない、特撮番組風に今の状況をまとめていたらつい熱が入ってしまった。ここが日本なら不審者として通報(110)されていた所だ。

 まあ、異世界に警察は居ないし愛実には元々嫌われている。問題は無い。無い。


 ──気を取り直して。


 問題の人物へ改めて目を向ける。全身を包むメタリックカラーのスーツ、赤やオレンジを基調とした目に鮮やかなカラーリングがなされたヘルム、陽光にきらめくバイザー。

 彼(彼女?)の名は【マスケラス】、悪をくじき弱きを助ける正義の仮面ヒーロー・・・という設定である。

 放つパンチ力は5t、必殺キックは30t!その威力の前に凶悪なモンスターも爆発四散やむなし!!である。


 ──賢明な読者諸君は既にお気づきだろうが・・・これ、【アバター】なのだ。

 全身一体型のボディスーツに、動きに併せかき鳴らされるBGMやSE。超人的な身体能力はおそらく【ギフト】の恩恵だろう。

 先程組み合わせは無限大と言ったが、そのわかりやすい一例と言えるだろう。


 実は以前から、ユーザー間コミュニティでは臨時PTに現れる仮面の(マスクド)ヒーローが話題になっていた。

 しかし・・・実際に目の当りにした実物は予想のさらに上を行く代物だった。

 ジャンジャンバリバリSEを奏でながらモンスターを爆発四散して回る姿はまさに無敵超人。我が愚昧でなくとも興奮まちがいなしだ。



「──【光輝(エスパーダ・デル)(・ソル) 】ッッ!!」



 まさしく鎧袖一触。ちょっと造りが安っぽい割によく切れるブレードを振りぬいた後には、真っ二つになった【燐光蝶(モルフォ)》】──状態異常を得意とする蝶型モンスター──が残されていた。

 ふたたび巻き上がる爆炎に、オレ達はスタンディングオベーションで応える。普段は従妹様に頼りっきりのオレ達だが、今日はもうこいつ一人でいいんじゃないかな。

 そしてさっきからやたらと興奮した様子の我が妹。彼女は左右不揃いの瞳(オッドアイ)を爛々と輝かせたまま、【魔石】の回収を終えたところへ駆け寄る。



「あ、あの!【マスケラス】さん!」

「ッ──何だ」



 ぶっきらぼうな感じの、若い男の声が応える。スーツの中身はオレと同じか、少し上くらいの男らしい。──いや、声だって【ギフト】で変えられるし、そうとは限らないかもな。

 そして我が妹は敵が捌けた今がチャンスとばかりに、時節の話題から好きなアニメと矢継ぎ早に質問を投げかけている。それに対し彼(?)は「ああ」「・・・いや」等と素っ気無い感じで返しているようだ。

 あいつ特撮好きだからな、たぶんこの機会に仲良くなっておきたいんだろう。変な事口走って機嫌損ねないといいけど・・・


 そんな状況が続き、何か失礼でも働きやしないかとハラハラしつつ眺めるオレ。

 会話はほぼ一方通行だが、怒ったり邪険にする様子も無いところえお見る限り、粗暴なタイプという訳では無さそうだ。

 単に口数が少ないだけだな、あれは。



「それでそれで!さっきこう、ビョーンって飛んでからビュン!ドッカーン!!ってなったキック!あれ凄かったし!」

「・・・と、どうも」

「マジ凄かったし!あれ、何ていう必殺技なの?あたしも呪文の名前、自分で付けてるから参考にするし!」

「・・・」



 無言。

 唐突に訪れた静寂に何事かと目を向けると、うつむいた様子の【マスケラス】はぎくりと肩を震わせると、何かをこらえるように手を握りしめ、ゆっくりとかぶりを振る。

 そのまま背を向けた彼は、絞り出すようにつぶやいた。



「俺に質問を──するな」

「あっ、はい」



 なんとも気まずい空気。・・・とうとう怒らせたか?

 オレはスーツ姿の助っ人に向け「ごめんなさい」のジェスチャーを送ると、彼(?)は気にしていない、といった風にこくこくとうなずき、そして何かに気付いたように首を巡らせる。

 オレも耳をすませると、【世界樹】の上層からガサガサと何やら迫りくる音が聞こえてきた。どうやら追加のモンスターのようだ。


 再度、彼(?)に視線を戻すと、丁度ブレードを構え走り出したところだった。再び剣劇の音が巻き起こり、モンスターの第2波との戦闘が開始される。

 戦闘音が鋭く響く中、若干気落ちした様子の我が妹の肩を軽く叩いてから加勢に回る。あまり助っ人にばかり仕事をさせるというのもまずいだろう。

 幸いと言うべきか、敵の数には事欠かないようだ。サブウェポンの短弓を取り出すと、オレは矢をつがえる。


 攻撃の合間を縫って愛実の様子を盗み見ると、下唇をぎゅっと噛みしめた後軽く滲んだ涙をごしごしとふき取り、キッとモンスターの群れを睨みつけた。

 ──どうやらあまり引きずらずに済んだようだな。

 内心やれやれ、と思いつつ攻撃を再開すると、後ろから走ってきた愛実にすれ違いざまにローキックを入れられた。


 何故だ。






    ■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■






 あれから数時間後。


【混沌の塔】の麓。王国軍が睨みを利かせる駐屯地の一角で、オレ達3人と1人は互いに向かい合っていた。

【マスケラス】の黒光りするバイザーを照らす日差しは低く、だいぶ色合いも赤みを増している。

 時刻は午後4時。既に【塔】での戦いは終わり、オレ達は戦果の分配に入っていた。



「・・・本当にいいのか?これでは──」

「いいっていいって、むしろ貰いすぎな位なんだからよ。オレなんて今日は死にかけのモンスターに止め刺してただけだし」



 互いに表示させた投影ディスプレイには、本日の狩りで発生したドロップの分配結果が表示されている。オレ達3人とマスクの彼(?)で3:7の割合だ。

 あれから暫く狩場に張り付いていたオレ達だったが、オレにできる事と言えば撃ち漏らしたモンスターの処理くらいしか無かった。モンスターの撃破は彼(?)が一人でやってくれました。

 それでいて、ここ数か月で見たことが無い程の収益だった。これで均等分配なぞしたらバチが当たるというものだろう。


【マスケラス】はしばし逡巡するそぶりを見せていたが、やがて納得したのか軽く首を振る。「承諾」のボタンに触れると、明滅した後に宙に浮かぶ投影ディスプレイが消失する。

 オレ達3人は互いにうなづき合い、そっと息を吐く。彼(?)とは次があるかもしれないし、こういう頼りになる奴には少しでもいい印象を保っておきたいからな。

 割り当てられた【魔石】や【魔灰】は目減りしたが、これも将来への投資という奴だろう。



「さて、これで清算も終わったし・・・打ち上げにでも行くか?【マスケラス】さんは──」

「あたしと遊びに行くし!いっぱいお話しするし!ね!ね!」

「いっ、いや──この後用事がある、のでな」

「あぅ・・・」



 ついでとばかりに誘おうとした所で妹のインターセプトが。

 鼻息荒く両手を握りしめ喰い気味に話しかける我が妹と、タジタジといった様子の彼(?)。

 しばし熱烈な攻勢を掛ける愛実であったが、やがてすげなく断られがっくりと肩を落とした。


 まあ、予想の範疇だな。どうやらウェットな付き合いは苦手なようだから、うちのPTに誘ったりするならもう少し付き合いを続けてからだろう。

 そうこうしている内にこまごまとした話はまとまり、臨時PTは解散する流れとなった。

 互いに握手を交わすオレ達の背後では、寂しさもひとしおといった様子で涙をにじませる愛実を、苦笑いしつつ直里がなだめている。


 今回()のチャレンジは残念な結果に終わったようだが、オレも別れ際にフレンド登録を持ち掛けてみるか。まあダメ元だけど。

 二人の様子を横目で見つつ、オレは話を切り出すタイミングを計る。



「うう゛ー、マスケラスさぁ゛ーん」

「めぐちゃん、泣いてばかりだとマスクさんもお別れし辛いでしょ?」



 一方、当のマスクさんはと言うと、べそべそと涙を流す我が妹をなだめたいのか、おろおろと両手をさ迷わせては引っ込める動作を繰り返している。

 マスクの英雄様(マスケラス)は初対面こそ無口で無愛想な印象だったが、こうして見ると意外と言外の意志表示が豊富で見てて飽きない。案外素顔は素朴ないいヤツなのかもしれないな。

 うちのPTはこれまで色々あって少数編成でやってきたが、ここはメンバー拡充に向け積極的に動いておくべき場面かもしれない。


 いつ誘うの?今でしょ!



「それで、もし良ければうちとフレンド登・・・」「──ま、また、会えばいい。 お、お前さえよければわた、俺と──

「「──!?」」



 チャンスは今、とばかりに切り出したオレに、【マスケラス】のつぶやくような一言が被さる。

 はて、と視線を上げると、びっくりしたような表情の彼(?)と目が合う。(見えないけど)


 そのまま凍りついたようにお見合いを続けるオレ達。

 なんというタイミングの悪さ。

 いや、そんな事より、今「わたし」って言いかけなかったか──!?


 混乱しきった思考を纏めようと灰色の脳細胞をフル回転させる。

 一方、マスクの彼(?)は微動だにしないままだったが、やがてゆっくりと愛実の方へと視線をさ迷わせる。

 その時。




<ジャンジャンジャッジャジャジャジャーン アディオス・アミーゴ!!>

「「「「 えっ 」」」」



 唐突に鳴り響くSE。

 戦闘中も賑やかだった電子音声(うた)が止んだ後に残されたのは、4人揃ってポカーンと呆け顔を並べたオレ達だった。

 今のでいい具合に頭の中身がリセットされたのか、さっきまで泣きじゃくっていた愛実も鳩が豆鉄砲を喰ったような表情でSEの発信源を見つめている。



「えーと・・・い、今の歌は?」

「歌は気にするな」

「あっ、はい」



 ──フレンド登録の事をすっぱり忘れていたのに気付いたのは、その場から解散し冒険者の宿へ戻った後のことだった。






  ・  □  ◇  ・  ■  ◆  ・






「ううううううっ!私のバカ、私のバカ~~~ッ!!!」



 王都の一角、異世界勇者に対し割り当てられた家屋の一つ。

 仮面の(マスクド)ヒーロー【マスケラス】が滞在する室内にガンガンと何かを打ち付ける音と、嘆きの声が響いていた。

 その声色は桐緒(キリオ)達が耳にしたそれより若干高く──むしろ幼い。


 がっくり、と「orz」のポーズで壁にむかって崩れ落ちる姿は、明らかに年端も行かない少女のそれであった。



「何であそこでセットSEが暴発しちゃうかなぁ・・・絶対ヘンに思われたよね・・・うう、結局フレ登録できなかったし・・・はぁ」



 ──説明しよう!仮面の(マスクド)ヒーロー【マスケラス】は幼女である!!

 齢は10!本名【城南博美(じょうなん ひろみ)】!!

 特撮ヒーローをこよなく愛する彼女は、自宅以外では常に尊敬するスーツアクターと同サイズのボディへ【アバター】で換装し、自ら考案した戦闘スーツで日夜戦い続けている!


 一人で!!


 異世界にて念願の変身ヒーローになれた博美であったが、ロールプレイ抜きでは他人と会話もままならない。彼女は極度の人見知りなのであった。

 これまでに登録できたフレンドの数は──ゼロ!

 彼女が臨時PTにのみ姿を現すのは・・・単に誘うフレンドが皆無だからなのであった!!


 ヒーローとは──いつだって孤独(ボッチ)なものである。



「今日の子達・・・私と同じくらいだったなあ。あのお兄さんは目つきが悪くてコワそうだったけど・・・」

「ローブの子といろいろお話しできて嬉しかったな・・・でもなんて返していいかわからなくてつい、何時もみたいに・・・はぁ」



 今では日課となった装備の点検を続けながら、少女は一人ごちる。

 こうした情景は彼女にとってもはや日常風景となっていた。


 何を隠そう、【マスケラス】が使う武器、SE、BGMは全て彼女が考案、あるいは素材を集め作成したものである。

 いわゆる「天才」に分類される彼女は、そのありあまる才覚を発揮し現在に至るまで、王都最強のソロプレイヤーとして君臨していたのであった。

 今回のようなチョンボも愛嬌のうちである。──尤も、それが友達作りの局面にばかり頻発している事はもはや説明するまでも無いだろう。



「ジャージの子とももっとお話ししたかったなあ。また誘えば一緒に行ってくれるかな・・・?うう、でもフレ登録・・・わ、私のバカバカ~~~!!」



 考え込んでいるうちに再び思考が袋小路にはまったのか、頭を抱えへたり込む少女。

 しばしカーペットの上で転がりながら悶えていた彼女だったが、やがて力尽きたのか仰向けにごろりと寝転がる。


 咳をしても独り(ボッチ)

 唸っていたところで部屋の広さを無駄に実感するだけだ。

 神により孤独の祝福を与えられたような少女であったが、寂しいものは寂しいのだ。



「はぁ・・・今日はもうご飯食べて寝よう」



 どっこいしょ、とばかりに立ち上がると、それから歯磨きとおフロも、とぶつぶつ一人ごちつつ、保存庫へと向かう。

 保管庫には王国謹製の完全栄養糧食と飲料水が数か月分は備蓄されているのだ。

 徹底的に孤独だが、生活にはこれっぽっちも困っていない博美であった。



 ──これからも戦いの日々は続くだろう。しかし決して敗北は許されない!

 行け!負けるな!正義の戦士【マスケラス】!!

 いつか共に戦う仲間が見つかる・・・その日まで!!!





どうでしたか?

物語の区切りとして、前回までが最初のシーン。次のシーンまで今回のような短めのエピソードを2つ挟む予定です!

次回も読んでください!!

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