そして冒頭へ戻る だってよ
今流行りという異世界転生ものを始めました!
更に今話題というVRゲーム・・・は止めて、ARゲームを題材にしました!
初作品です!よろしくおねがいします!!
流石はファンタジー異世界、とでも言うべきか・・・【混沌の塔】内部には数多のモンスター共がひしめいている。
第一層に出現する──【小亜人】
先程遭遇した──【旋風隼】
その他、多種多様なモンスターが各所で待ち受け、襲いかかってくるのである。(ノンアクティブモンスターは自発的には襲ってこないが)
彼等は常人では抗えない強大な力を持ち、それにオレ達異世界勇者は【アバター】や【ギフト】、【魔法】といった手段で対抗。打ち倒すことで日々の糧を得ているという訳だ。
まあ、うちは超能力でズルしてるんですがね。
さておき。
モンスターには一般的な生命体と大きく異なる点がある。それが【魔石】、モンスターが例外なく有する結晶体のことだ。
大きさは大人の手のひら程、長方形で熱さ5mm程の、艶のある材質で出来ている。全種類のモンスターで【魔石】の形状は共通だが、モンスターによりその色は異なっている。
先程挙げた【旋風隼】の【魔石】は目の冴えるような群青色で、既に【魔灰】と一緒に回収済みだ。
【魔灰】というのもモンスター特有の物質で、モンスターは死ぬとその肉体が崩れ、【魔灰】に変化するのだ。
【魔石】もそのまま残るので、一緒に【インベントリ】(アバターの機能で、アバターアイテム他一部の物資をデータ化して収納可能)に入れてある。
獲得したドロップアイテムは冒険者ギルドで換金可能で、交換した通貨は端末に電子通貨として保存される。
・・・風情が無い気もするが、わざわざ貨幣を持ち歩かなくても良いので便利ではある。
また、一部のアバターは引き換えに特定モンスターの【魔石】と大量の【魔灰】を必要とするので、それを目当てにPT狩りの募集が立つ場合もあったりする。
・・・やっぱりゲームだよな?この世界。
「──お兄さん!そっち行きました!!」
緊迫したような直里の声。続いて迫るゴロゴロという低音に意識が現実へ引き戻され、慌てて横っ飛びに回避する。直前までオレが居た地点を、1m強の物体が高速で通り抜けて行った。
今のは妖怪・暴走タイヤ──ではなく、芋虫型モンスターの【輪蟲】。全長2m近い巨大な芋虫で、普段は第二層のそこかしこでのんきに草を食んでいる、大人しいモンスターだ。
ただし。こいつは危険を察知すると回転アタックで襲撃者をハネ飛ばす習性があり、そのまま逃げだしてしまうので倒すのに少々コツが要るのだった。
先程の個体に続き、もう一匹の【輪蟲】が地響きを上げ迫ってくる。このままだと直撃コースだ。オレは接近する相手に慌てず、左右の動きで回転アタックを誘導。衝突するギリギリのタイミングで再び回避する。
目標を見失った【輪蟲】はそのまま樹木に派手な音を立ててぶち当たり、反動で空中へと跳ね上がった。
ガッツポーズを決めたオレの前に落ちた巨大芋虫は、横倒しになったまま目を回している。今なら殴り放題、ラッキーチャンス到来だ。
「・・・っし!狙い通り!!そうそう轢殺されてやりますかっての」
とは言え、オレの武器ではこいつの固い甲殻には少々荷が勝ちすぎる感がある。ここは従妹様にトドメを刺してもらうのがセオリーだろう。
これもまた役割分担、美しきパーティープレイという奴だ。クールなオレは華麗に待つぜ。
──でもそれって、ヒモ男の行動そのものですよね?ないわー、○学生に養ってもらうとかマジでないわー。
(※ここから愛実視点です)
「・・・いやいやいや、役割分担はパーティプレイの基本。オレはヒモじゃない・・・ヒモじゃない・・・ぶつぶつ」
「なーにをブツクサ言ってんだし・・・」
思考の袋小路に陥った我が兄に、呆れたような視線を向け嘆息する。
洞月愛実は兄の事がキライだ。バカだし変態だし、こんな奴に天使なすぐちゃんの事任してらんないし。
とは言え、モンスターに有効打を与えられないのは彼女も同じだった。ここはひとつ、秘められし力を解放しデキる女をアッピールすべきだろう。
「・・・紅蓮の炎よ、異界の森に大輪の花を咲かせよ・・・エル・・・エロヒム・・・テトラグラマトン・・・」
愛用の杖『夜の声』をかざし、力ある言葉(自作)を紡ぐ。真言は空気中を漂う魔素に作用し、世界の理を捻じ曲げるのだ──という設定。
勿論、こんな行動に意味は無い。
しかし──洞月愛実には秘密があった。信愛なる従妹と、実兄と同じ(癪に障るけど)、異能。
彼女もまた、超能力者である。
能力は【発火】と【精神感応】の複合型──【幻燈輪火】。心に深く刻み込まれた光景を現実へと重ね、世界の在り様を変質させる。
必要なのはイメージだ。空に瞬く大輪の花、眩い炎で彩られる、つんざく轟音で世界を塗りつぶす、イメージ。
ゆっくりと狙いをつける。目標は草地に横たわるモンスター、すぐ傍にアホ面さらした物体が居るが──
まあいいや、巻き込んじゃえ。どうせケガ一つしないし。
発動に向け更に精神を集中させると、状況をようやく理解したのか泡を食った様子で兄が逃げ始める。
「てめっ・・・オレも巻き込む気かよ!冗談じゃねえこんな所に居られるか!逃げるぜ!!」
「もう遅いし。たー・・・まー・・・・やーーーー!!!」
構えたワンドの先から、半透明の4号玉(花火玉の寸法で、11.5cmのものを指す)が放たれ、ようやく起き上がったばかりの【輪蟲】へ向かう。
着弾を見届けず一目散に逃げようとする兄だったが、直後、視界を埋め尽くす大輪の花に飲み込まれた。一瞬遅れて凄まじい轟音が鼓膜を震わせる。
【幻燈輪火】は殺傷力を持たない、幻惑の力だ。大本となるのは発火能力で作る極小の火花、それを拡大し、大玉花火に匹敵する爆発と、轟音の幻覚を見せる。
使ったところで火傷一つ負わせられない能力ではあるが、その迫力は凄まじく、初見ではまず見破れない。
閃光による目つぶし、轟音による聴覚のマヒ、反射による行動の束縛と、3つの効果が見込めるわけだ。
至近距離で喰らおうものなら、数分はパニックに陥るのは間違いない。
「目がー!目がー!!」
丁度あんな風に。
両目を覆って転げまわる兄を見下ろし勝者の愉悦に浸る。見ろ、兄がゴミのようだし(笑)。
あのバカには既に能力の事は知られているが(最初に打ち込んだ相手だし)、わかっていても避けようのないものはあるのだ。
「な・・・何やってるんですかー!!?」
唐突に頭上から降ってきた声に、思わずぎくりと身を固まらせる。おそるおそる視線を向けると、そこには宙に浮かんだまま「怒ってますよ」のポーズをとる従妹の姿があった。
何故かは知らないが、彼女は兄にいたく懐いている。そりゃもうベッタリなくらいに。
控えめな性格で、学校では男子と会話もしないような彼女だったが、兄とだけは進んで言葉を交わすのだ。
「今の・・・お兄さんがいるってわかってて巻き込みましたよね・・・?」
「ち、違うし。全然そんなんじゃないし。ただの不幸な事故だし」
「私の目を見て同じ事、言えますか・・・?」
眉根を寄せて覗き込んでくる直里ちゃんに、視線をそらせながら小声で応じる。
彼女は普段おとなしい分、怒らせるとそりゃもう怖いのだ。
その迫力に冷汗を流したじろいでいると、視界の端で頭を振りつつ兄が立ち上がる様子が見えた。
「・・・お前ね、危ないんだから誤爆すんなよマジで」
「反省してまーす(チッ)」
「めぐちゃん・・・?」
低く呟きつつさらに覗き込んでくる。怒ってるすぐちゃんマジ怖いし。
気まずさをごまかす為口笛を吹きつつ視線を泳がせると、兄が足をかけている地面がわずかに変色している所に目が留まる。
何だろう、最近ああいう場所を気を付けろと注意されたような──
そんな事を考えているうちに、立ち上がろうとした兄の姿が下方向へ沈んだ。
「「「あっ」」」
──【落とし穴】だ!!
数瞬遅れて気付いた頃そこに残されていたのは、地面に開いた1m大の穴と滑落していく兄の声。そして呆気に取られ茫然とする私たちだけだった。
どうでしたか?
時系列で行くと、今回のエピソードが初回投稿の直前の場面となります。ふりだしへもどる!
次回も読んでください!!




