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なんの変哲もなく異・世界転生(旧題:異・世界転生)  作者: @FRON
第一章:オレ、幼女2名と異世界の地に立つ
10/16

行列!アンロック!ELV! だってよ

今流行りという異世界転生ものを始めました!

更に今話題というVRゲーム・・・は止めて、ARゲームを題材にしました!

初作品です!よろしくおねがいします!!


 


 曲がり角を越して【転生トラック】が姿を消すさまを眺め終えると、視線を本日の目的地へと転じる。


 街並が途絶え、ぽっかりと空白地帯になったスペース。

 そこには、縮尺がおかしく感じる程の巨大建造物がそびえ立っていた。

 継ぎ目の見当たらない黒々とした壁面、円柱状の、高度1000mにも及ぶかと言う、塔。



 ──【混沌の塔】。



 王国が成立するよりはるか過去より、【塔】はこの地に存在し、中に入る方法も一切不明の聖地扱いだったらしい。

 そこへ来ての魔王来襲。

 以降、中へ入れるようになったは良いが、その内部は魔物の巣窟であった。おいそれと入り込めるような場所でない事に変わりは無かった訳だ。


 そして現在、その麓には王国軍の詰所が設けられ、常時監視体制が敷かれている。

 侵入が許可されているのは、王国軍とオレ達、【冒険者ギルド】所属の異世界勇者のみだ。

 そんな訳でオレ達は、【塔】の入口へと続く関所へとやってきたのであった。



「待て、貴様等は──冒険者か」

「ちーっす、今日もお勤めご苦労さんでーす」「ども」「こ・・・こんにちわー」



 関所では、クロスするように槍を掲げた門番の兵士が兜の奥から目を光らせている。

 オレ達異世界勇者は許可証が発行されているので、誰何する兵士にギルド証を提示する。

 兵士たちが一歩下がったのを確認すると、オレ達はその脇を悠々と通り抜けた。


 ──ギルド証。

 フェンタジー物定番のアイテムだが、この世界においてはカード型やタグ型ではなく、【端末(モノリス)】に収められた電子証書として存在している。

 必要があればディスプレイに出してもいいし、空間投影すればこういった場面で役立つ。ペーパーレス化の波は異世界にも届いているのであった。


 しかしまあ、何とも無駄な技術力の高さだ、

 我が妹などは「情緒が無い!」とかなんとかぶちぶち文句を垂れていた。まあ、部分的に同意しなくもない。

 この世界──異世界かゲーム世界か知らないが──は妙なところでSFチックなのだ。


 ともあれ、オレ達は【塔】の開口部へと到達する。

 滑らかで継ぎ目のない表面にぽっかりと口を開けたそこは、高さにして20mはあるだろうか。

 内部には王国軍によりランプが設置されており、視野の面では問題ない。


 ぼんやりと照らし出された通路をしばらく進むと、いきなり視界が開け、だだっ広い空間へと出た。

 壁面に沿って視線を上げると、上端のあたりが軽くもやが掛かっているのが目に入る。

 空間全体で差し渡し数百mはあるらしい。乏しい光源のせいか、空間の端は暗闇に包まれ、壁面との境界がおぼろげになっていた。



【塔】の内部、第一階層基底部の大ホールだ。



 ホールの床面も、外壁と同じようなつるりとした黒い光沢を放つ材質でできている。

 そのまま垂直に視線を上げていくと、ホールの中心部から床が唐突に消失し、代わりに何もない空間が続いていた。


 否。

 光に乏しいこの場所だからこそ目立たないが、そこには「何もない」のではなく、確かに不可視の「何か」が在った。


 支給品のランプを掲げると、オレンジ色の光が中心部のある地点を境に吸い込まれたように消失している。

 丁度、床面が無くなっている辺りからだ。

 基底部の中心には、あらゆる光を吸い込む【混沌】が充満していた。仮にこのホール全体を照明で照らせば一目瞭然であっただろう、


 そして、大ホールには【混沌】へ向け、順番待ちをしている列があった。オレ達と同じ、異世界勇者の面々だ。

 その姿は千差万別、オレのように普段着の者から、全身鎧(フルプレート)、和風の甲冑、体操服、道着などなど。

 そして一部例外もあるが、皆基本的に日本人ばかりである。


 オレ達がこの世界へ来るきっかけとなったゲーム【UG(アンダーグラウンド)】は日本ローカル地域限定でサービス提供されていたから、当然の帰結とも言える。

 情報収集した際に確認したが、やはり皆【UG(アンダーグラウンド)】のプレイ中にこの世界へ飛ばされたとの話だった。

 その数、実に数千人。


 それだけの人間が消えているのだから、当然事件としてニュースにでもなっていそうなものだが、当時それらしい報道は無かったと記憶している。

 それについても聞きこんでみたが、明確な答えは得られなかった。

端末(モノリス)】で考察スレッドを覗いてみたが、陰謀説、集団催眠説など、的を得ない憶測ばかり飛び交っているのが現状だ。


 何故オレ達はこの世界に招かれたのか、疑問は尽きないが、それはそれとして仕事(クエスト)である。

 日本人のサガか、律儀に順番待ちを続ける彼等もオレ達と同業者、つまり【塔】が仕事場なのである。

 トレーナーやパーカーに混じってフルフェイスヘルムやキュイラスで武装した少年少女が見えるのは実にシュールだが、これが異世界における、オレ達の日常風景であった。



 ややあって、順番待ちの列がはけたのか【塔】の中心部へとたどり着く。

 オレは【端末(モノリス)】を取り出すと、あるアプリを起動した。

 名前は【GateSeeker】、他愛のないジョークアプリ・・・とされていた、ものだ。


 その機能は単純明快、現在地をサーチし、扉に類するものをGPSと連動した地図へピックアップする、それだけ。

 ピックアップした後は扉をフォーカスしてアンロック(【モノリス】のロック解除と同じ操作)するミニゲームが用意されているが、それで何があるという事も無い、正にジョークアプリ。

 だが── 【UG(アンダーグラウンド)】そして【混沌の塔】に存在する一部の扉に限って言えば、このアプリで本当に鍵が開いてしまうのだ。


 オレは慣れた手つきでアプリを立ち上げ、周囲をサーチする。

 検索結果・・・1件、「第一階層基底部」。


 それを拡大し、背面に配置されたカメラで正面にわだかまる【混沌】を収めると、ディスプレイには渦巻く混沌が映し出される。

 続いてつるりとしたディスプレイの上を指を走らせる──UNLOCK。

 ピロリンという電子音と共に開錠完了のメッセージが表示され──



 ──次の瞬間、【混沌】の表面に亀裂が生じた。



 音も無く左右へ開いてゆく【混沌】。

 その中には、エレベーターの籠の如き空間が白色光に包まれ存在していた。互いにうなづくと、オレ達はその内部へと踏み出す。

 固い感触を返す床面を踏みしめると、その背後で亀裂が閉じる気配を感じた。



「──行くか」



 オレのつぶやきがきっかけとなったのか、一瞬の浮遊感の直後、オレ達は【混沌】内部をけっこうなスピードで上昇を始めるのであった。






 ・  □  ◇  ・  ■  ◆  ・  □  ◇  ・  ■  ◆  ・






 先程の場面でエレベーターの籠の如き、と形容したが、現在オレ達が居る空間はまさしく【塔】のメインエレベーターとして機能している。

 ・・・とは言っても、一般的なエレベータのように操作パネルは存在しない。コントロールは専ら、【端末(モノリス)】のアプリを介して行われている。

 アプリは今も起動中だが、現在ディスプレイには2F~21Fまでのアイコンが表示されている。行き先として一度訪れた(移動可能な)階層のみ表示される仕様だ。


 尤も、パーティーメンバーが主となり操作した場合はその限りに含まれない。

 つまり、前線攻略組のお零れにあずかっていきなり上の階層へ行くことも可能という訳だ。

 先程の行列の中でも、そういった手合いは元気に呼び込みを続けていた。


 尤も、身の丈に合った狩場でないと苦労するのはゲームと同じで、結局は一から攻略していく形に落ち着くようだが。

 そうやって、自分に合った狩場を見つけたら以降は専ら、そこを主戦場として他へ行かなくなるのが異世界勇者のセオリーとなっていた。


 オレ達もその多分に漏れず、現在は【第二階層】を主な狩場として活動している。

【第一階層】の方が楽で危険も少ないが、その分実入りが少ないという難点がある。

 他にも理由はあるが──実利と力量から自然と落ち着くところに落ち着いた、といったのが実情だろうか。



 到着を待つ間、オレは更に【端末(モノリス)】を操作し、アプリを起動させる。【アバター】のセッティングに使用する定番アプリだ。

 ショートカット登録している衣装セットから目当てのものを選択し、有効化(アクティベート)

 すると、オレの体が光に包まれ、次の瞬間には普段着から皮鎧をベースにした冒険者スタイルへと様変わりしていた。


 このアプリ、【UG(アンダーグラウンド)】で利用していたものと同じだが、服装に限らず体の部位や色形、装備品に至るまで細部を設定可能となっている。

 当時から手軽にコスプレが楽しめると人気を博していたが、この世界へ来てから更にアイテムが追加され、今では棺桶からロケットランチャーまで多種多様なラインナップを誇るようになっている。

 今となってはあらゆる場面に欠かせないツールとして、異世界勇者の間で認識されていた。


 現在のオレは、期間セールの際入手した【冒険者セットCスワッシュバックラー】──身軽さを売りにした軽戦士スタイルのアバターを愛用している。

 基本セットのショートソードを肉厚の大型(ブッチャー)ナイフに換装し、それ以外はそのままで。

 更に必要に応じ獲物を持ち替え、遠近どちらにも対応可能に立ち回るのが、普段のオレの戦い方だ。


 直里のアバターは【戦闘用学生服セットF(ジャージ上下・紺)】、ジャージに拘りのあるらしき彼女らしいチョイスだ。

 見た目はただの芋臭いジャージだが、魔物の爪やキバも簡単には通さぬ防御力(DEF)を備えたスグレモノである。

 実の所、こうした「見た目は普段着だがDEF値が高い」系統の装備は数多く存在し、他にもよく見かけるのであった。


 そして我が妹へと目を向ける。

 そこにはゴテゴテと十字架や髑髏の装飾を飾り付けた、漆黒のローブ姿があった。

【†混沌の闇邪術師ダークソーサラー†セット】をベースに【堕天使ルシファーの翼】【女魔導士メイガスの帽子】【咎血の包帯】という頭痛のしてくるコーディネートだ。


 更にこいつは左右の瞳を黄・碧のオッドアイに調整し、髪の色を目の覚めるような赤毛へと変更している。

 筋金入りだ。

 これでまだ中学2年生になっていないんだから恐れ入る。


 こいつが成長した暁にはどれだけの黒歴史を量産してくれるのか、兄として大変楽し・・・不安で仕方がない。

 今から忘れずに録画・録音しておいて、後で苛・・・もとい、過去を振り返る手助けをしてやらねば、兄として。



 そんなオレに見られているのに気付いたのか、愛実は右斜め45度の角度でポーズを取りつつ、愛用の杖(魔王の爪痕)をゆらめかせながら詠唱に入った。

 邪なる者を滅する聖句が邪悪なるクソ兄を浄化し、世界はまた一歩平和へと近づく・・・らしい。以前そんな事をつぶやいていた。

 うぜえ。


 オレが適当にはいはいかっこいいですねー、とあしらい、我が妹もまんざらでもない反応を返していると、わずかな揺れとともに空間の上昇が止まる。

 目的地に着いたのか、電子音に続き、壁面が左右へと開かれ、オレはまばゆい光に目を細める。

 光が収まるのを待ち目を開くと、そこには鬱蒼と生い茂る巨樹の森が広がっていた──





どうでしたか?

多種多様なアバターでオシャレを楽しむ系のゲームは時々見かけますよね。でもお高いんでしょう?大丈夫、(基本額)無料です!

次回も読んでください!!

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