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魔法少女を教育しよう

 


 深夜、埼玉のとある公園に茉莉はいた。


「教育係なんて引き受けたけど、しばらく身体動かしてないから実践的な指導なんて出来ないよなぁ」


 茉莉はこの一年間、小説家という言い訳で自宅にひきこもり続けていた。


「うわっ、幽霊かと思った」


 巽八千代がやってきた。

 格好が制服だったので、茉莉が注意をする。


「幽霊とは失礼な。それと巽、深夜なんだから制服で来るなよ、補導されるぞ。あと教育する新人はどうした?」


「新人さんはトイレだって。てか朱通さんには服装について言われたくないね。なにその全身真っ黒な格好。遠くからだと肌が目立って幽霊見たいに見えるよ」


「目立たない格好の方がいいだろうが」


 そういって茉莉は漆黒の外套をはためかせた。


「まあ二十五のオバサンだから自分に自信がなくて黒いの着ちゃうんだよね」


「違うから、これは美姫が……」


 巽の後方からスーツを着た女性が茉莉たちの方へ真っ直ぐに向かってきた。


「なんかOLがこっちに歩いてきてる」


「あ、それが新人です」


「は!?新人って、あれ大人だろ……」


 魔法少女の新人といえば十代の学生と相場が決まっていた。

 しかし、あれはどう見ても茉莉と同年代、もしくはそれ以上だ。


「あ、巽先輩、お待たせしてすいません」


 OLが学生の巽を先輩呼びでお辞儀までしていた。

 このOL、遠くだとわからなかったが凄い胸が大きい。むっちりとした太ももとパツパツのタイトスカートがセクシー過ぎる。

 OLは巽へのお詫びが終わり、茉莉の方へ向いた。


内納(うちのう)侑巳(ゆうみ)と申します!二十八歳です!ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします!」


 年上は聞いていない、熱意は伝わってくるがどうしたものか。


「あ、朱通茉莉です。よろしくお願いします」


「それでは早速ご指導のほどよろしくお願いします!」


「あー侑巳ちゃん、別にそんな畏まらなくていいからね。この朱通さんってだらしないニートみたいなもんだから」


 早速巽が二人に茶々を入れた。


「なんで巽が内納さんを呼び捨てにしてるんだよ、年上だろ」


「朱通さんはわかってないなぁ。私はね、魔法少女歴でも魔法少女の実力でも侑巳ちゃんに勝ってるわけ、つまり私が下手に出る必要は無いの」


 茉莉は巽の言葉を聞いて内納侑巳を見る。すると内納侑巳は顔を少し傾けて微笑むだけだった。


「なるほど、つまり巽は私のことを上に見ているからさん付けで呼ぶんだな」


 茉莉がニヤリと笑って巽を見た。


「ち、違うし!魔法少女歴では負けてるけど実力は一緒だから!上に見るとか有り得ないし!ただ……美姫さんが……」


「あーはいはい、もう巽のことは置いといて。内納さん、最後に意思確認をしたいのですが、魔法少女になる意思を。その、魔法少女の衣装は私たちには少しキツイものがあると思うので」


 茉莉は内納の年齢的なことを気にして聞いた。


「大丈夫です!巽先輩の魔法少女の衣装すごく可愛くて私も着てみたいと思うくらい大丈夫ですから!」


 内納は前傾姿勢で茉莉に魔法少女への想いをぶつけた。


「そ、そなんだ……」


 内納は茉莉と違い、魔法少女やる気勢だった。


「それに、もう仕事辞めちゃったので魔法少女やるしかないんですよね。なんか私たち似てますよね、年齢も境遇も……」


「そうですね……」


 二十代後半の闇は深い。


「あともう一組来る予定なんですけど、時間がもったいないので指導始めますね」


 茉莉は持ってきていた紙袋から星のついた安っぽいステッキを取り出した。


「うわぁ!可愛いですね!魔法少女っぽいです!」


 内納は一転、ステッキを前にしてテンションが上がっていた。


「えと、このステッキは魔法少女の標準装備で、魔法少女協会からもらえるものです。役割としては魔法少女の魔力操作を手助けする装置みたいなものです。どうぞ」


 茉莉からステッキを受け取った内納はアニメなどにいそうな魔法少女のポーズを色々取り始めた。


「これで私も魔法少女ですね!ファンタジーの仲間入りです!ニチアサ枠です!」


 はしゃいでいる内納に続いて説明する。


「そのステッキは持ち主が放出する魔力を集める役割があります。その集めた魔力を打ち出して戦うのが一般的な魔法少女の戦い方です」


「一般的ということは例外もいるあるわけですね、巽先輩みたいに」


「内納さんは巽の魔法をご存じなんですね」


「はい、かっこよかったです!」


 巽八千代、中学生。雷属性の魔法を扱うBランク魔法少女。

 魔法少女歴は一年。

 戦闘にステッキは使わず、独特の体術と雷魔法を合わせた近距離特化の魔法少女だ。

 相手次第でランク以上の実力を発揮する期待の新人でもある。


「戦闘スタイルについて強制はしません。魔力を上手く操作出来るまではステッキを使ってもらいますが、その先は自分の好きな武器なども使用可能です」


「朱通先生はどんな魔法少女なんですか?」


「私は日本刀と火の魔法で……」


 そこまで言って茉莉は思い出した、自分が火属性を失っていることに。


「何言ってるの?朱通さんは雷でしょ?」


 火といった茉莉に対して巽が訂正した。

 巽は茉莉が火の魔法を使っていたことを知らないのだ。


「そうだったね、そう!私は雷魔法を日本刀にまとわせて戦うの」


「朱通先生かっこいいです!日本刀!朱通先生の線の細い身体と白い肌と日本刀のアンバランスな感じが凄いファンタジー感あって私的にはドストライクです!」


「あはは、ありがとうございます」


 茉莉が内納に魔力操作のコツをレクチャーしていたらもう一組の新人がやってきた。


「茉莉さん遅れてごめんなさい!紗奈がごねちゃって」


 学校指定と思しき名前入りのジャージを着た二人が来た。

 茉莉は千尋が連れてきた少女をみる。

 胸元には阿賀谷と刺繍がされていた。


「阿賀谷さんね、初めまして、私は朱通茉莉、これからよろしくね」


 茉莉は紗奈に手を差し伸べた。その手を紗奈が握ろうとした瞬間、茉莉の背中から「ガシャン」という物音とともに日本刀が落ちてきた。

 紗奈はびっくりして手を引っ込めて千尋の背後に隠れてしまった。


「あー、留め具が緩んでたかな。ごめんね、びっくりさせちゃって」


 茉莉は日本刀を拾い上げ、雑にベルトの隙間に突っ込んだ。


「そ、それって銃刀法違反なんじゃ?」


 紗奈が常識人らしい反応を示した。


「だから隠してるんだよ?」


 ばれなきゃ犯罪じゃない、魔法少女はみんなやっていると紗奈を軽く洗脳し、内納に説明した魔法少女についての基礎知識を教えて今回の教育は終わった。





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