表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冥界受験地獄

作者: 繭住懐古

「あちらに見えますのが阿鼻地獄でございます」

そう言って赤鬼は窓の外を指差した。そこにはまさに地獄絵図(じごくえず)と言ったような光景が広がっていた。

ここは死後の世界、それも地獄である。俺は今、その地獄を一周する列車に乗せられているところだった。どこかの地獄に送られる前の見学ツアーと言ったところらしい。

ツアーガイドの赤鬼は次々と説明していく。

「あれが叫喚地獄、あれが大叫喚地獄、そしてあれが受験地獄でございます」

「受験地獄?」

俺は思わず聞き返した。

「はい。受験地獄です」

「どんな地獄だよ、それ」

「名前の通り、大学に行くための勉強をする地獄です」

「大学ってどこだよ」

「地獄大学です」

「地獄大学??」

なんだその大学は。行っても何も楽しそうじゃない。っていうかなんで地獄に大学があるのだ。

「そりゃあ、地獄ですからね」

「お、お前、俺の心を読みやがったな!.....まあ、いいや。で、どんな教科があるんだ?」

「へい。国語、地獄、理科、社会、英語です」

「待て待て待て。なに地獄って。そこは数学じゃないのかよ」

「だって算数ならともかく、数学って地獄で必要ないじゃ無いですか」

「そんなこと言ったら、他の教科だってそうだろ!」

「外人の亡者もいますから、英語は必要です」

地獄もだいぶインターナショナルになったものだな。

「じゃあ、社会は?」

「社会は地獄の地理と地獄の歴史、あと地獄の裁判制度を学びます」

「ううん、なるほど。じゃあ理科は?」

「物理と化学と地獄生物ですね」

「なんだその地獄生物って」

「そのまんまですよ。地獄の生物について学びます」

「じゃあ、物理と化学は?地獄でどう役に立つんだ?」

「物理は自分を押しつぶす岩の重さを計算できますし、化学は自分を溶かす酸の成分を知れます」

「そんなの知ってどうするんだ」

「恐怖が倍増しますね」

「バカヤロウ」

そこで、俺はふと考えた。

「....でもよ、国語なんかは本当に役に立たないじゃないか」

「そうですね。でも、それは現世でも同じでしょう」

「とんでもないこと言いやがる!」

「ま、国語は主に芥川龍之介の蜘蛛の糸とかを読みますね」

「へ、へえ〜」

「他に質問は?」

「そうそう、数学の代わりにある地獄ってのはどんな教科なんだ?」

「まあ、簡単に言うと総合問題ですかね。地獄に関する」

「ほお、例えばどんな問題だ?」

「私の好きな食べ物はなんでしょうか、とか」

「は?なんだその問題?どの教科?」

「地獄生物です」

「地獄生物の教科って地獄の生物の食べ物の好みまで聞かれんの?......っていうかお前、『地獄の生物』っていう括りなのか」

「ええ、まあ。ちなみに答えはその日の気分によって変わります」

「ふざけんじゃねえよ」

とっぴんぱらりのぷう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ