9話 過剰戦力
さて、モンスター討伐は順調に進んでるようだがそれはハルのいない陣地のみハルが後詰めをしている右翼側は配置されていた兵の数、冒険者の数が少ない為苦戦を余儀なくされていた・・・というのも。
「くそっ!何匹流れてくるんだよ、いくら何でもこんなに流れて来てたらこっちのみが持たねえ!」
「兵隊共め、さっきからわざと討ち漏らしてないか?こっちが1匹倒してる間に2匹はづつ増えてるじゃねーか!」
「やべぇ、このままじゃ被害の方が大きくなっちまう」
ベテランの冒険者たちが必死にモンスターに攻撃を加えているが劣勢を覆せない、ここにハルがいれば話は変わるのだがハルは後方で棒立ちしている何故なら。
「くそっ!おい、やっぱり新人共も戦線に加えるべきじゃないのか。囮くらいにはなるだろ?」
「それで生き残ったガキに報酬をかすめ取らせるのか?俺は嫌だぞ!」
そう、彼らは自分達が冒険者として先輩だという事を理由に後輩の冒険者たちを参加させず戦果の独り占めをはかったのだ・・・因みに兵隊たちも意地悪で討ち漏らしを流しているわけではなくラカンから事前に後詰めの方にハルがいるから無理に深追いしないように言われていたため向かってくるものを確実丁寧に仕留めていた結果どんどん討ち漏らしが増えてしまったのだ。
そんな様子を見てハルは独り言をつぶやく。
「おやおや?先輩方思ったより苦戦してますけど・・・支援に向かったほうがいいのではないですかね?」
「そうだよね~あいつらの態度はムカついたけどそろそろ死人が出ちゃいそうだよね~」
「なるほど、限界が近そうですし参戦・・・へ!?」
(ダダダダダダ誰ですか!って言うか今私ナチュラルに喋れたような気がします、やった!)
謎の声に反応したハルは久しぶりに人と喋れて思考がどっかに飛んでいく、そんなハルを見た謎の声の主が。
「行くんならあたしも手伝うよ~、んっどしたん?」
「・・・(はっ!)」
思考が戻ったハルが声の主を見る、身長は自分の胸元に来るかくらいの身長で肩にかかるくらいの黒髪の少女が首を傾けてハルにその黒い瞳を向ける、慌てて挙動不審な動きをするハルを見た少女は吹き出し。
「何してんの、面白い奴~(けらけら)」
「・・・(ポリポリ)」
「はは、おかげで緊張もとれたし、良ければ一緒に行かない?」
「・・・(こくり)」
(これは・・・友達が出来るチャンスなのでは!)
「んじゃいくよ!」
彼女は最後に一言いうと颯爽と駆け出す、それを見たハルも後を追い駆け出すと瞬時に少女に追いつく。
「へ~追いつかれるなんてね~足には自信あったんだけどな~」
「・・・(ふるふる)」
彼女の言葉にハルは十分早いという意味のつもりで首を振ったのだが彼女は挑発と受け取ったようで。
「むっ!こうなったら引き離してやる!」
「・・・!」
(あっちょっと待って!)
更にスピードを上げた彼女に簡単に追いつくハル、さすがに今回のスピードが限界なのか諦める少女。
そんな二人を見た他の待機していた新米冒険者も参戦しようと走り出した。
「おい!やばいぞ・・・ガキどもが動き出しやがった」
「へっ丁度一休みしたいと思ってたところだし丁度いい、囮にして一旦下がるぞ」
ハル達2人が到着し参戦するのと同時にベテラン冒険者たちは後退する、尤もそんな事に気を取られるほどハルは彼らに興味は無かったので気にせず戦闘を開始したのだが。
「新米しばらく頼んだぜ」
すれ違いざまにそう呟いたベテラン冒険者に少女が「キッ」と睨んでいたがすぐさま自分たちに迫ってきていたはずのモンスターを見据えるために前を向く、しかし。
「あれ?なんで止まっているの?」
「・・・」
(ふむ、魔力をもう少し抑えとくべきでしたね・・・)
モンスター達は何かにおびえる様に蹲り始めていた・・・ランドトルーパーは弱い竜であるがれっきとした竜である、そのためにそれなりに知能があり自分たちが相対してしまった存在の強大な魔力に反応して生きるの放棄したのだ・・・つまり降伏しそのまま服従のポーズをとっているのだ。
因みにハルはこの方法でいろいろなモンスターに契約を迫ったが千匹中千匹睨まれた瞬間泡を吹いて喉を詰まらせて絶命したためにそれ以降この方法はとっていない。
「・・・」
(さて・・・どうしたもんですかね?)
「ちょっと、この状態ってどういう事か説明できる?」
少女がハルの袖を引っ張りながら訊いてくる・・・こんなに近くで異性に話しかけられたことの無かったハルは当然固まり、その変化を察知した竜たちは素早く体勢を立て直そうとしたが、後続の新米冒険者たちが間に合い攻撃を加えドンドン討伐される。
「あっしまった!モンスターの行動に動揺して出遅れた!」
「・・・(はっ!)」
(いけないいけない、うっかり意識が飛んでいました・・・とりあえず魔力を抑えときましょう・・・いや」
「ほら!あんたも急ぎなよ、手柄が無くなるよ」
「・・・ハル!」
「ほえ?・・・きえた!?」
ハルは魔力を押さえるついでに自分召喚で自分を弱体化召喚する・・・消費魔力が小さくなればそれだけ召喚獣も弱くなる、勿論自分召喚にも適用可能なのだ。
少女は消えたハルを探してくれてるようでキョロキョロしているのでハルは勇気を振り絞り彼女の肩を指先でトントンして気づいてもらった。
「んっ?あっいた、も~突然消えるから驚いたよ!っと喋ってたら手柄が減っちゃう、急ごう!」
「・・・(こくり)」
とりあえず周りで乱戦状態のモンスターには目もくれず兵の範囲もうから逃げてきたばかりの元気なランドトルーパーを狙うことにした。
「あんたは足止めして!あたしが仕留めるから」
「・・・(こくり)」
2匹のランドトルーパーが駆けてくる、ハルは指示通り2匹の足を鋼糸で絡めとり転倒させる、と少女が腰に差していた剣をランドトルーパーの口に差し入れ頭を飛ばす、実に鮮やかな手並みで新米冒険者なのかが疑問に思える腕前だった。
負けじと自分たちの後方の乱戦中の者たちのランドトルーパーの頭を近い順から勝手に切断するハル・・・いきなり目の前で戦闘中のモンスターの頭が切り飛ばされた冒険者たちは唖然と立ちすくんでいたが・・・それはまぁうんハルが悪い。
等とハルが遊んでいる中でも2匹目の頭を切り飛ばす少女、そんな感じでしばらく2人で仕留めていたら戦闘終了を告げる鐘の音が草原に鳴り響く、どうやら討伐は終了したようだ。
「やったね!」
「・・・(?)」
駆け寄ってきた少女が突然ハルに拳を突き出してくる・・・ハルが彼女の行動に困惑していると。
「も~!こうするんだよ~」
「・・・(!)」
少女が突然ハルの右手を掴んで拳を握らせて自分の拳と突き合わせる、と少女は「にひひひ」と満面の笑みをハルに向ける・・・ハルは案の定硬直するが。
「よーしそれじゃあてめえら!これから取り分を俺らが決めるから死体を持ってこーい」
というベテラン冒険者の言葉にハルの硬直は解けた。