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コミュ障召喚士の自分召喚物語  作者: なんてこった
コミュ障召喚士の始まり
6/62

6話 空間魔術?

 早朝ゴルス村の外、畑の前で一晩寝ずの番をしたハル・・・畑の横に積み上げたモンスターの死体の山を早朝畑仕事に出てきた村人たちはそれを見てどう思っただろうか。


「どうやら皆さんお仕事の時間の様ですね?少しだけ寝ておきましょう・・・どうせ何か来たら騒がしくなって嫌でも起こされるでしょうから」


 そう独り言をつぶやいたハルは軽く眠りにつく為に近くの木に背を預ける、昨日は日が落ちてからもモンスターの襲撃は頻繁におきていたのでゆっくり休む暇もなかったのだ・・・おかげで畑の横に積み上げられた死体の山があるのだが、因みにラージボアの首だけは分けて置いてある、討伐数が分からなくなったら大変だからという理由でだ。


 これを見た村人たちはと言うと。


「おい、あの冒険者あれだけのモンスター共の死体を一晩であんなに積み上げて俺達が来たとたん狸寝入りを始めたけどどうゆうことだと思う?(ひそひそ)」

「お前だってわかってんだろ?・・・どうせまた村長が変な注文の依頼をして冒険者の機嫌損ねたんだろ?あの冒険者はそのことに対して自分はこの程度寝てても出来るほどの実力があるんだけど依頼内容は今のままでもいいのか?ってアピールしてんだよ(ひそひそ)」

「確かに俺も昨日のあいつの戦い方見たけど飛んでもなかったぞ(ひそひそ)」

「とんでもないって?」

「馬鹿!声が大きい・・・昨日な、あいつが使った魔法なんだけどそこにいたはずなのに気づいたらラージボアの横に瞬間移動してたんだ・・・あれって多分有名な空間魔術ってやつだろ?(ひそひそ)」

「な!お前、空間魔術っていったらそれが使える奴は魔力があれ間は無敵だって言うあれか?確か数人しか確認されてないって言う」

「だから声がでかいって!まぁそうだよ・・・確かメイガス家の長男がその使い手でこの間の武術大会でも優勝したとか、噂では竜を象った鞘を腰に差していたそうだぞ?(ひそひそ)」


 ハルの知らない間に村人の間でどんどん話が飛躍していく・・・そしていずれ村長の耳に入るころには、メイガス家の当主がお忍びで冒険者としてこの村の依頼をこなす振りをしつつ監査をしている、寝たふりをしているが持ち前の空間魔術で村人たちを逐次監視しているんだろう・・・という話になっていたことをハルはまだ知らない。


 そんなハルは昨夜の戦闘でいくつか気づいた点もありホクホク気分で仮眠中である・・・気づいた点とはまず自分召喚中に傷ついても召喚解除したら傷が消えているという事・・・まだハルは試してないが恐らく召喚されたハルが死んでも召喚状態が解除されるだけで召喚した側は死ぬことはないだろう・・・多分。

 また召喚された方の体で手に入れた物を持っていても召喚解除したらその場に残ってしまう、モンスターの死体を集める際に死体の山の前で召喚して新たに倒したモンスターの死体を拾って召喚解除しても死体が拾った場所で転がっただけだった。


 そして召喚される際に持っていた物は召喚解除する際に手放して身に着けていなくても召喚する前同様に身に着けた状態で戻る、これもモンスターの死体を持ったまま死体の山の横に指定して召喚した後死体を山に積んで召喚解除したらハルの上に死体が降ってきたのでハルは本気でビビっていた。


 この事からハルは自分召喚を使った商売を軒並み諦めた、ところで召喚されたハルの肉体はハルの魔力によって構成された偽の体、本体と言える肉体は召喚する際に魔法陣に取り込まれて異空間と呼べる場所に行ってしまうようだが悪影響とかないのか気になる所である・・・因みに今仮眠をとっているのは生身の体なのだが最初に召喚した体でやりくりしていたので生身の体があった異空間の時間が止まっていたなら仮眠は必要ないはずだということまでハルは気づいている。


 調子に乗って長い時間本体を放置してたら餓死してしまうってことだを。


 さて、ハルが仮眠に入って数時間ほど・・・もはや仮眠の域を出てしまっているが昼のさしかかった頃にようやく動きがあった。


「御休みの所申し訳ありません・・・今宜しいでしょうかメイガス様」


 村長がハルを起こしに来た・・・ハルも声に反応してゆっくり瞼を開けて目の前に村長の顔があったのでゆっくり瞼を閉じてやり過ごすことにした。


「あの?今眼を開けてくださいましたよね?」

「・・・」


 無視を決め込んだハルはなかなか意固地だ・・・尤も完全に目が覚めてしまっていたのだが、そんなハルは高速で今の自分の状況を顧みる。


(なんで目覚めたら村長さんがいるんですか?私に寝起きドッキリなんてして何が楽しいんです!・・・とりあえず落ち着きましょう私、何とか起きていないと誤魔化すとして、そもそもここに依頼主が来る理由を考えましょう・・・と言っても私だって昨夜は結構頑張りましたし、成果はきちんと目に見える場所に置いてますよね?ではなぜここに村長さんがいるのでしょうか・・・しかもモンスターが出たって雰囲気でもありませんし?うーん)


 狸寝入りをしたまま思考を続けるハルに村長は話しかける。


「あの・・・この際寝たふりのままでいいですので聞いてください!昼前ですしうちで食事でもしに来ませんか?」


 村長がハルにそんなことを言ってくる・・・ハルはその言葉であることに気づいた・・・。


(えっ昼前?・・・あれ?もしかして私・・・もしかしなくても寝すぎた?仮眠のつもりが普通に寝過ごした!やばいやばいやばいやばい!そりゃ依頼主自ら見に来ますよ!こんなに堂々とさぼっていたら村人から苦情だって来ますよね!そんな私を気遣って叱るにしても家に呼んでくれるなんて、なんて親切な人だろうか!いかん・・・いつまでも無視してたら失礼かもしれない、よし!)


 ハルは「カッ」っと目を見開き「バッ」ッと立ち上がるハルの口より効果音の方が相手に情報を与えてくれる事実にハルは気づかない。


「あっ起きられましたね!では立ち話もなんですし早速私の家で話を聞かせてください」

「・・・(こくん)」


 村長の案内で村長の家に入る、一度来た家なのに態々案内しなくても道くらい分かるのになんてハルは決して言わない、というか言えない・・・勿論ラージボアの首6つともちゃんと持って来ている。


 村長に案内された応接間で椅子に座るように促される、ハル自身期待してなかったのだがやはりご飯は出なかった、もしくは話の後なのかもしれないが。


「早速ですが今回の依頼についての事なのですが・・・」


 そう切り出した村長は微妙に震えていた・・・村長に着いたハルについての情報はこの村に対して「お忍びついでのメイガス流抜き打ち監査の執行者兼メイガス家当主」だ、村長は自分の行動を振りかえったら笑えないことしか思い出せない。

 

 しかし村長の震えてる様を見たハルは村長が相当怒っていると誤解して完全に固まった。


「まずはこの度の無礼の数々をお詫びいたします!」

「・・・(じー)」


 村長が突然椅子から立ち上がり土下座をする・・・もうこの時点でハルは完全にパニックである・・・そんなハルを置いてけぼりにして村長は謝罪の言葉を並べる。


「本当に申し訳ありません!昨日貴方様にいただいた最後のチャンスをよく考えもしないで反故にしてあまつさえ怒鳴ってしまった私の罪はとても重いと存じております!ですがどうぞ一度だけでいいのでお慈悲をいただけないでしょうか!」

「・・・(じー)」


 村長は噂話を聞いた瞬間に思い出したのは昨日ハルが家を出る際の笑顔と指先で依頼書に「トントン」と無言で叩いた姿だった、村長はあの行動がメイガス家としての注意だったのだと勘違いしたのだ、勿論ハルは全くそんなこと思ってなかったので村長の言ってることに対して思考停止状態である。


「どうかお慈悲を!メイガス様!」

「・・・(!)」


 村長の最後の言葉にようやくハルも何が起きてるのか考え着く・・・もちろん見当はずれな考えで。


(あー!村長さんも私の素性に気づいた口なのかもしれないね?どうりでこんなに震えてるわけですよ・・・メイガス家ってそんなに怖いのかね?そんなことないつもりだったんですけどね?・・・いや、アイザム兄さんは怒らすと怖いし、あの強さは反則級ですから少しわかりますね。仕方ない)


 とりあえず額を床に押し付けたままの村長に何とか声をかけようとするハル。


「私・・・メイガス・・・ないただの・・・冒険者・・・村長・・・こ・・・ください」


 ハルとしても頑張ったのだが案の定これである・・・ハルが言いたかったのは「私は今はもうメイガスを名乗っていないただの新米冒険者です、村長さんどうか怖がらないでください」であるが・・・村長には、「私は今はメイガスではないただの冒険者だから村長さっさこれ書いてください」と聞こえたらしく。


「分かりました、依頼書に完遂のサインを書かせていただきます。6匹のラージボアですから18000コインです、・・・こちらの依頼書をギルドに提出してください」

「・・・(こくり)」


 村長はハルの依頼書に完遂のサインをすると成功報酬を渡し依頼書を返してギルドに報告するように教えてくれた。


「どうか最後に私の数々の非礼をお許しください」

「・・・(こくり)」

「おお!ありがとうございますありがとうございます・・・ありがとうございます」


 村長は泣き崩れてしまったのでハルはそそくさと村長宅後にする。


「それにしてもなんで私がメイガス家の者ってわかったんでしょうか?きっとこの村の誰かが私の顔でも知ってたんでしょう、さてさて依頼の完遂報告をするまでがお仕事ですから早速走りますか!」


 そう独り言を言って村を後にして走り出すハル、その後ろ姿を村の人間は畏怖を込めて見送った。

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