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コミュ障召喚士の自分召喚物語  作者: なんてこった
コミュ障召喚士の始まり
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5話 実践

 長い間住んでいたメイガス家の御膝元である町メイガスを後にして、依頼を出した依頼主の許に出発したハル、遂に行使できるようになった召喚術を実戦で実践できると今から顔がにやけてしまっている・・・別に道中に出会ったモンスター相手に使ってもいい気もするのだが、ハルは道中に出会ったモンスターを出会った端から即座にグローブに装着されてる魔力鋼の鋼糸でバラバラにしていった・・・アイザムの「召喚術だけがハルの全てではない」という言葉はここからも来ているのではないだろうか?


 依頼主のいるゴルス村はグランドール領にある村でメイガスから馬車で半日もすれば着く距離にある、何故か馬車に乗らなかったハルは走って村に到着したのだが昼前にメイガスを出て着いた時にはお昼過ぎほど・・・ハルの足は素の状態で馬車より早いようだ、後スタミナとかも。


「ふー馬車に乗ろうと思ってましたが・・・どこに向かう馬車なのかも聞けない私では馬車の利用は絶望的ですね、人生諦めも肝心です」


 実際ハルも頑張った、だが馬車サイドの人間も一方的なハルの視線に長々と耐えてくれていたので文句は言えない・・・というかそんなに時間をかけて乗らないという選択肢を選ぶハルもどうなのかと思う。


「さて・・・行きますか」


 ハルは一層顔を引き締めて村に立ち入る、これから彼に大きな試練が待っているからだ。


 ハルはまず村を見わたしてみる・・・「やはりか」と小さく呟き腕を組み瞼を閉じて思考を巡らす。


(初めての事が多くて村に着いてから気付いたけど・・・私この村初めて来たから依頼主の家とか分かんないよ!!どうしよう、やっぱり住民に訊くのが早いんだろうけど素直に教えてくれるかな?迷惑な顔されて無碍にされるかも、鼻で笑われちゃうかも!ううう・・・どうしよう)


 そんな考え事をしていたハルに突然。


「お兄ちゃんはそんなところで何しているの?」


 突然声をかけてくるものがいた・・・ハルが声の方を確認すると相手は小さな女の子だった。


 ハルは「しめた!」とばかりにニヤッと笑みを浮かべる・・・コミュ障のハルでも相手が子供なら話せる・・・かもしれない。


 ハルは女の子に目線を合わせるためにしゃがみ、目を見て・・・喋れなくなる、やはり子供でもダメなものはダメなようだ、このままじゃただ子供に目線を合わせて睨んでるだけだ。


「あの・・・お兄ちゃん?」


 女の子も動揺している、当然の事だろう・・・話しかけただけで態々目線を合わせて睨んでこられたのだから。


 さすがにこの状態では不味いと馬鹿でも分かるのでそれなりに頭脳明晰で通っているハルはその頭をフル回転させて思いつく。


 即座に実行しようと懐に入っていた依頼書を取り出し女の子に見える位置まで持っていきこれ以上怖がらない様にと笑顔を顔に貼り付ける・・・ただし慣れない自力の笑顔に細めた目から少し覗く金色の瞳は子供の目にどう映るのか?は考慮されて無かった。


「ギャーーーーー」

「!!!」


 子供のガチ泣きは「ウワーン」なんてかわいい物じゃない「ギャー」だ、そしてガチ泣きさたハルは虚を突かれて手はそのままに尻餅をついしまい、情けなく助けを求めてキョロキョロする。


「そんな子供を泣かして何事ですか!」


 突然そんな罵声が後ろからかけられた、とっさに後ろを見たが逆サイドだったみたいで・・・向けた顔とは逆側から罵声を浴びせた女性が女の子に駆け寄った。


「怖かったね、どうしたの?」


 駆け寄った女性が女の子を抱きしめて話を訊く・・・すると少し落ち着いたのか女の子が。


「食べられるかとヒック思った」


 一瞬の沈黙の後に女性は怒りで顔を般若の様な形相に変えて。


「その格好冒険者ですよね?こんな日も高いうちから働きもしないで小さな子供をいじめて人生楽しいですか?」


 女性はハルに言いたい放題罵声を浴びせだした、ハルはハルで突然の女性の登場に思考停止して固まっている。


 一通り罵声を浴びせたらスッキリしたのか、それとも女の子が泣き止んだからなのか息を整えた後、女性は固まっているハルの手にしている依頼書に気が付く。


「あら?あなた依頼でこの村に来たんですね、依頼で来てやっているのは弱い者いじめなんですね?」


 もはやどっちがいじめてるのか傍目では分からない状態だがハルもようやく硬直が解けたようで立ち上がり依頼書の依頼人の名前を指でさし女性を「じー」っと見つめる。


「なんですか?依頼を受けてるのは分かりましたから早く依頼をこなして来なさいよ!依頼人は・・・村長じゃない!なんでこんなところで油うってんですか、早くあの家に行って話を訊いて来なさい!」

「・・・(こくり)」


 なぜあそこまで彼女の態度が悪かったのかは分からないが依頼人のゴルスという人物はこの村の村長らしい、しかも彼女が指さした家にいるようだ・・・ハルは女性に一礼して村長宅に向かう。


 村長宅の扉でノックをすると人の良さそうなおじさんが顔を出す、すかさずハルは依頼書をそのおじさんに見せると。


「おお、ワシの依頼を受けてくれた冒険者の方ですか?」

「・・・(こくん)」

「助かりました、ささっお上がりください」


 おじさんに招かれ家に上がるハル・・・ハルの真の戦いが始まろうとしている。


「紹介が遅れましたな、ワシはゴルスこの村を開拓しその縁でこの村の村長をやっておるものです。それでは依頼の詳しい内容なのですが・・・」


 自己紹介を終えてすぐに依頼の詳しい説明に入るゴルス・・・ハルとしては助かったのだがハルのことを訊こうともしなかった、これには何か裏がありそうなのだが・・・無視された本人はとても助かったと内心喜んでいたのでそんな事を考えもしなかったようだ。


「というわけで最近昼夜を問わず出現しては畑を荒らしていくラージボアの討伐をお願いします、いつ現れるか分かりませんので今からしばらくの間は畑から離れずに見張っておいてください・・・その間に現れた別のモンスターはこちらの依頼内容外ですのでご自身の判断で処分をしていただきたいのですが宜しいですか?」

「・・・(こくり)」

「ではさっそくお願いいたします」


 とりあえず依頼内容を訊いたハルは若干の違和感はもったものの長々と他人の家にいて2人きりでいたことによるストレスから早く解放されたかったために村長の詐術にまんまとかかってしまう・・・実はこの依頼実際は畑を荒らすのはラージボアだけじゃなく他にも複数の種類のモンスターが確認されていたのだが村長はそれを黙ってラージボア討伐だけで依頼を出して他のモンスターは冒険者が勝手に片づけたと言い張り払うべきものを払わないつもりだったのだ、しかも当のラージボアの討伐報酬も相場よりも安いというおまけ付きで・・・。


 もっとも世間の事情に疎いハルにはストレスが無くても気付けなかったかもしれないが。



「あの?まだ何か用があるのでしょうか」

「・・・(こくり)」

「なんでしょうか?」

「・・・(じー)」


 「お願いします」と言われた後に席を立とうとして・・・ハルは座り直して村長の顔を見つめだした、村長は既に知っているモノだと思っていたので説明していなかったのだが・・・ハルは今まで一心に魔力制御やそれを用いた戦闘訓練、他にはモンスターに契約を持ちかけるためなどに外に出ることはあったのだが景色をみたりそういったものに興味を持ったことが無かった、なので。


(ところで畑ってなんでしょうか?荒らされるってことは何かを一か所に纏めて置いてあるんでしょうからきっと倉庫のような物でしょう・・・ではどの建物なのでしょうか?教えてもらわないといけませんけど・・・はぁやっぱり声が出せません)


 ハルの知識は偏りが少し特殊なのだ、その結果、心を見抜かれてるような不気味な視線とまで言われていたハルの金色の瞳が村長を見続けるという状態を作り出し・・・村長は冷や汗を流していく。


(あっ、もしかしたら畑って村の皆が知っているから村長さんもうっかり説明したつもりになっているのかも・・・しょうがないな)


 ハルはおもむろに依頼書を机の上に置いて村長の前に出し依頼書の「畑」と書いてある場所を指先でトントンと叩いてニヤッと笑う。


 村長はその行動の意味が分からなかったがまるで自分の心を見透かしているような瞳に晒され続けていたために、今更気づいたから報酬の上乗せをしろと言う意味なのではと盛大な勘違いを起こして怒り出した。


「今更そんなことを言われても変えることは出来ん、さっさと村の外の畑の見張りをして来い!」


 と言って畑のある方を指さして早くいけと指図する村長、ようやく漠然とだが畑の情報を貰ったハルはニヤッと笑みを浮かべて一礼して家を出る、村長は家を出る際のハルの不気味な笑顔の意味が分からずに更に冷や汗をかくことになった、実際は愛想笑いなのだが。


(やっぱり畑ってこの村にとって常識なんだね、あまりに常識的なことだったから質問されて怒っちゃった・・・馬鹿にされたって思ったんだろうなー悪いことしちゃった、これは私の初仕事だしさっき言ってた対象外のモンスターもサービスで根こそぎ退治してあげるべきだね!)


 ハルの中でまた一つ勘違いが生まれたのだがこの際放って置こう。


 そしてハルが村の外に出た際、突然悲鳴が聞こえた。


「きゃーーーーラージボアよーーー!」


 悲鳴を聞きここは畑というものがあるらしい村の外、関連付けるのはたやすいことだったのでハルは即座駆け出す、とそこには農作物が生い茂った場所で牛並の大きさの猪ラージボアが食事をとっていた・・・数は1匹。


「早速召喚!ハル」


 ハルは早速ラージボアの真横に座標を指定し自分を召喚する、ラージボアは突然飛び出してきた存在に反応が遅れる・・・そんな隙を見逃すほど間抜けではないハルは腰に差してある剣を抜剣し勢いをそのままにラージボアの首を斬り飛ばす。


「すげぇ」


 それを見ていた村人たちは唖然としてそう呟く。


「よし、これは使えるな・・・この剣も中々の切れ味だしこの依頼はもらったな、そういえば依頼のモンスターを早速倒しちゃった・・・よし!ここからはサービスタイムに入ることにしよう」


 そう独り言をつぶやき周りを見て決局畑って何の事を指す言葉なのかイマイチわからなかったようだ、だが他のモンスターが農作物を食べるために侵入する際に農作物が生えている範囲に入ったら村人が「冒険者さん!モンスターが畑に入ってますよ!」って言ってきたので何となくこの農作物を育てている範囲が畑というんだと何となく理解できた。


 その後、ハルは召喚術を駆使して畑に侵入したモンスターを次の日の朝まで片っ端から退治していった、ついでに言えばラージボアも追加で5匹は討伐したので最初の1匹を含むと6匹も仕留めたことになる・・・よくこの村の畑は全滅しなかったもんだと思うが恐らく仕留めたモンスターの血の匂いでいつも以上に集まった結果なのだろう。

因みにこの物語では冒険者ランク等は多分作りません。

受ける依頼は完全に自己責任です。

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