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プロローグ

待ち合わせの時間から、15分ほどが過ぎた頃だった。ようやく、携帯の待ち受け画面に彼女の名前が表示された。



・・・水原あゆみ。



ここ最近、彼女とは喧嘩ばかりで仲直りの意味も込めて、今日のデートに誘ったのだ。夜景の見えるホテルで、少しいいワインを飲んで喧嘩のことも水に流してもらうのもよかったが、あゆみが静かなところで夜景を見たいと言ったのだ。



「・・・今、どこ?迎えに行こうか。」



待ち合わせ場所まで指定したくせに遅刻かよ。そんな気持ちをぐっと我慢し飲み込んだ。



「ごめんね、迷っちゃって。どのあたりに車停めてる?」



説明しようとしたとき、ちょうど目の前の曲がり角から赤いコートを着た彼女と車の中から目が合う。



小走りに駆け寄ってきたあゆみが、助手席側に立つ。片手には電話を持ちながら、「降りてきてよ。」なんて遅刻してきたはずのあゆみが、偉そうに言った。

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