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七夕の夜に  作者: ささ
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治療術

エメスは慎重に診ていく。


(頭、中身の破損はないようだ。顔は見ればわかるほど腫れ上がっている。目は潰れてはいないようだ。赤黒い色が広がり皮膚ははち切れそうになっている。口の中も切ったようだ。血が唇につき固まっている。瞼も唇も腫れ上がっている。首は折れていない。腕や足は打撲痕はあるが骨折には至っていない。元は柔らかな肉質なのだろうが赤紫に変色していた。力は弱いだろう。次は胸だが、骨がいくつか折れている。中の物に刺さってはいないようだが、この辺りも暴行を受けたのだろう。両胸が腫れている。悪い血流は少しだがこれから悪化するかもしれないな。腹は、ここも打たれたような血流の歪みがある。中身は無事だ。ん?この中は……っ)


「キシュウっ」


エメスはそれに気付くと手足の縄を風で切り裂いた。囚われていた人物へと手を伸ばすとそっと抱き上げる。


「カルロ。俺は先に戻る」

「では後ほど」


エメスは呼んだ薄紅色の空イルカに乗るとカルロに叫んだ。その顔は先程よりも厳しい。カルロが答えるより速くエメスは飛び立っていった。


「では、此方はもっと詰めましょうか。これからが楽しい時間ですよ」


カルロは腰から鞭を取り出した。その顔はちっとも楽しそうではなかった。



空イルカのキシュウを操りエメスは治療院に急ぐ。その腕には暴行された力無き女がいる。


(力の欠片が全くない。有り得ない。こんな状態の者が空ノ島に行けるはずはない)


腕の中の女に治療術を施しながら考える。


(この力が効くだろうか。いや何としても治さねばならん。これだけの暴行を受けたのだ、力がなければ死んでしまう。ましてや女なのだから)


知らず力を込めて抱きしめた。



この世界には力を持って生まれる。神の御力の欠片をほんの少し。それを持たない者は居ない。エメスは持たない者の話を一度も聞いたことがない。そしてその力は誰しも腹部に宿す。男と女では感じる色が異なっている。温かさも違う。

今回エメスは何も感じなかった。神の御力を何も感じなかったのだ。そして体内を探れば生殖器官の損傷も確認できる。そこで女性であることがわかった。

この世界の女性は弱い。一般的にはそうだ。その代わりに子を育むための柔らかな生命力を得ていると言う。


(この女からは何も感じられなかった)


はやく治るよう祈る。その時、キシュウが治療院に飛び込んだ。

ありがとうございます。

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