願うのは
目覚めると紅だった。天井に見えるのは上品そうな紅色の布。
(豪華だなぁ。エリザベスって感じ。意味不明だけど)
「ポペパペピパパペパピパパ」
「はうあっ」
驚き反射的に声がした方へ振り向いた。そこに居たのはさらさらした金色とガラス玉を思わせる目をした異邦人だった。
「ど、どなたさま?」
私はベッドに寝ていたようだ。その上を驚いた姿勢のまま異邦人とは離れるようにずり下がる。
異邦人は首を傾げていた。よく見ると眉毛が八の字を描いている。
「ポパペプパピパパペポプパ」
「っ」
(パピ語を話してるっ。奴らの仲間か。私、何されるの。殺される?事情聴取ったって言語が通じなきゃ、向こうの良いようにされる。どうするっ。言葉が通じれば問題ないんだけど。通じてもダメかも知らんけど通じんよりはマシなはず。パピ語を私が話す?無理だワケワカラン。何かの法則があるかもって。夢に挑んでどーするっ。某ゲームのボディランゲージでいけるか?いってくれ。言葉が通じますようにっ)
私は駄目だろうけれど言い募るだけ言い募ろうと思った。
「あのっ、私何もしてませんよっ」
目の前の金髪緑目さんが目を見開いていた。
(私の切羽詰まり具合に驚いたのか、間抜け面でも美形は美形か。心のメモ帳に書いておこう)
「ふふっ。失礼いたしました。先程は驚かせてしまいましたね。御加減は如何ですか、お嬢さん」
「へっ、はぁ大丈夫です」
(驚いた。いきなり日本語で話し出すとか急展開だよ、事件です姉さん。そしてビックリしすぎて、ついつい言っちゃう《大丈夫です》と答えてしまった。大丈夫じゃない気がするよ)
「お辛いところがありましたら、すぐにお知らせくださいね」
「は、はい」
金髪さんはニコリと笑うと頷いていた。そこに扉を叩く音が聞こえた。と思ったら許可を出す前に開いて黒髪の男が入ってきた。
身の丈2メートルくらいで短い黒髪、深い野性味を感じさせる顔立ちをしていた。
「エメス、女性の部屋ですよ。許可なく入るなんて」
金髪さんは眉間に皺を寄せて男に抗議していた。
(そうだぞっ、こう見えて女の端くれ。もっと責めてお兄さん)
なんて考えていたらエメスと呼ばれた男に睨まれた。その目は怖いもので勝手に体が震えだすのを止められなかった。
「ちっ、何もしねぇよ。勝手に怯えてんな」
そう言うとエメスは私から視線を外した。
「先程、目覚められたばかりですから。そうだ、長いこと眠られていましたからお食事など如何でしょう。すぐに用意させますね」
金髪さんはエメスと連れ立って部屋を出て行った。
(えっと、いったい何だったの?)
一度震えた体を手でさすり抱きしめる。
トントンと控えめに扉を叩く音が聞こえた。今度は勝手に入ってこないらしい。
「どうぞ」
「失礼いたします。軽食をお持ちしました。どうぞ、食べられるものだけお召し上がりくださいませ」
恭しく礼をするメイドさんと運ばれてきた食事に私は目先の食欲に支配されるのだった。
「カルロ、何かわかったか」
「えぇ、一つだけ」
「勿体振らずにさっさと話せ」
「はいはい。あんまり急かすのはご婦人に嫌われますよ?
わかったことは一つ、初め彼女と話した時には見知らぬ言語でした。お互いにわからない状態で彼女がこの世界の者ではないことは明らかでしたよ。けれど、直ぐにこちらの言語で話してきた。自然に言葉が出てきています。これで会話が出来ます。懐柔もしやすくなりましたね」
「星を使ったか」
「其れ以外に考えられますか?」
「ちっ」
「仕方ないですよ。言語が同じなら間者を疑わなければならない。喋れないままなら、すんなり神殿保護になったのですがねぇ」
「神官共は?」
「目覚めたことは知らせています。もうすぐこちらに着くでしょう。着き次第、実況見分しますか?」
「早い方がいいだろう。厄介事はさっさと片付けるに限る」
「では、そのように」
男達は神官達と合流するため、女が居る部屋とは違う部屋に向かった。
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