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七夕の夜に  作者: ささ
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星合いの夜

あれから一年が過ぎた。はやいようなおそいような。この一年を降り返る。


私参上おもてなしを受ける。その後、貴族の来襲、国王の陳謝、他国からの間者、空イルカの乱、神殿内部の行事発案、就職などなど。


そして、今年の儀式は私とエメスが担当となった。


なぜだ、解せぬ。


今、私は儀式の現場に向かっている。空ノ島の天ノ川まであと少しというところを歩いている。

隣にはエメスがいる。ここに来るまで私専用になった空イルカ(大きなシャチにしか見えなかったが空イルカなんですってよ、奥さん)を何故か追い払いエメスの空イルカに同乗させられた。エメスの腕の中に囲われての移動はある種のご褒美であり拷問だと思う。

思い出して顔が熱くなった。何か悔しいので隣を歩くエメスを睨みつけた。が、すぐに視線を逸らした。




(なにあれっ、無理直視無理っ。とんでもないわ。小首傾げてほんわり笑うってあざといな、あざといなっあざとっ。甘すぎる視線でなにしてやがるんじゃい。あーうーおーうー)



顔に血を上らせ赤くなっている私に気付いているんだかいないんだかわからないが歩く速度は合わせてくれているようだ。


(なにその気遣い。ほれてまうやろー。もう泣くぞ私はなくぞっ)


この一年の間でエメスとの距離は近付いたと思う。物理的にも精神的にも。最近はやたらめったらに触れてくる。最初は子供に対する扱いのように思っていたけれど、この所視線が甘い気がする。女扱いされてるのかと思ってしまうが、まさか私相手にはしないだろうと思っている。本当は思い込もうとしている。優しくされたら絆されるでしょう。私は、絆された。


儀式の場に向かって歩きながらも頭の中は関係ないことを考えていた。



到着した。変わらず天ノ川には叶え星が流れている。私はエメスに向き直り礼をした。


「今日はよろしくお願いします」

「あぁ」


エメスは力強く頷き手を差し伸べた。私はその手を強く握った。


今日この儀式において、私は宣言しようと決めていた。なにに対してのものかと言うと、自分に対してのもの。

もう夢からはとっくに醒めている。

この世界で生きるしかないことを認めよう。それをエメスという見届け人の前で、世界に宣言する。

私は一度強く目を瞑ると深呼吸した。ゆっくりと目を開く。エメスが穏やかな目で見ていた。私がなにをしようとも守ってくれる。その誓いをしてくれた時と変わらない目だった。

何も恐れることはない。この世界は私にこんなにも優しい。

一つ息を吐くと、深く吸い私は宣言した。






ミヤコは宣言した。この世界で生きることを。そして世界は歓迎した。

天ノ川の叶え星たちは輝きを増して天上へと上っていく。


突然ミヤコが泣き崩れた。


「ミヤコ、どうした?」

「……元気だって伝えられた……向こうも元気だって」


しゃっくりすらあげるミヤコを抱きしめ星を見る。ミヤコの願いが一つ叶ったようだ。


それから毎年、一日だけミヤコの両親と話すことができるようになった。星たちが幾つも重なり合い異界と繋げたのだろう。



次の星合いの夜には宣言しよう。


「ミヤコと共に幸せになります」



お付き合いいただきありがとうございました。


改良したいところはありますが、これにて完とさせていただきます。

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