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七夕の夜に  作者: ささ
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息抜きになればいいなあ。

私は気分高揚のノリで叶え星をつかんで天ノ川に投げ入れた。水に投げ入れたのとは違って水音はならないし、跳ね上がる物もなかった。周囲に静寂が訪れている。


(あれ……まずかったかな……)


周囲の反応が怖い。けれど、すでにやってしまったのでしょうがない。他の叶え星を見上げてみた。柔らかな光は変わっていない。


(ひとつだけ返したって意味ないんだよね。やるなら全部だけど、もう叫ぶのはやめよう。そして、この星達は勝手に戻っていかないのかな?投げるのが面倒くさくなったよ)


投げる作業は何回かを考えようとして叶え星を見つめた。次の瞬間、叶え星達は我先にと天ノ川に戻っていく。


(うわー、私の思いをくんでくれるなんて、とっても良い子達だったのね。ありがとう。君達のことは覚えている限り覚えているよ)


夢の出来事なんてすぐに忘れるだろうとぼんやり見ていた。

それがいけなかったのか、天ノ川が急に空に向かって隆起した。ぐぐっと伸びると先から眩しい光を纏った物が幾つも吹き出し私達に降り注ぐ。


「これはっ」

「なんということだ」

「星がこれほど」

「世界が変わる」


神官さん達が何やらブツブツ言っているが最後まで聞き取れなかった。



(いったいこれはどうしたことでしょう。お家にお帰り、をしたはずの星達が輝きを増してこちらへ戻ってくるではありませんか。……マジか。これって明らかにマズイよね。過ぎたる力は破滅を呼び込むと疼く第三の目が示しているわ。なんて悟り開いてないから第三の目なんて開眼してないよっ。それに開眼してもまつげと瞼がないと目を守れないやろが。ドライアイは嫌だ)


ぼんやり眺めていたけれど星は消えない。神官さん達が血管切れてしまうんではないかと思える程、顔を赤くして目を血走らせて何かを唱えている。何を言っているのかわからないほど、それぞれがブツブツと唱えている。



収拾がつかない状況をどうしたものか、叶え星に願ってみようか、なんて考えたところ目の端に動く黒いものを見つけた。


エメスがこちらに向かって歩いていた。その顔にはどこか呆れたような色が浮かんでいる。


「まったく、お前は何をしたいんだ」


呆れを含んだ声音ではあるけれど、嫌な感じはしなかった。


「えっと、過ぎた力を持っているのは怖いから戻そうと思いまして」


溜息つかれた。


「力がなくなった貴方を我々が処分するとは考えなかったんですか」


エメスの後ろからも呆れた声があがる。カルロは疲れたような顔をしていた。


「処分……」


(全然考えていなかった。利用価値の無いものを養ってくれるような甘い展開は無いよね。考えればわかることだ。馬鹿だな私。それにしても夢の割には変なところでお堅いよね。甘々なご都合主義もあるのに。変なのー)


私が黙っているとエメスは息を深く吐き出した。


(幸せが逃げるぞ、さっと吸い込め。さぁさぁ吸い込めー)


深く考えることを避けた私はさらさらと流れ消える思考を続けた。

お読みいただきありがとうございます。

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