七夕飾り
7月といえば七夕だな~という安直な思い付きで勢いだけで書いた作品です。
我が家では毎年7月に入ると玄関先に笹を掲げる。
近所の人は毎年恒例なので何も言わないが、馴染のない人には不思議がられる。
だがそれも6日の夕方から夜にかけて玄関先の笹を見て納得される。
そう、七夕飾り
子供が小学校低学年まではどの家でも行われていたが、さすがに高校生になっても行っておるのは我が家くらいだろう。
小学生のころまでは短冊に欲しいモノやちょっとした可愛らしい願い事(おねだり)を書いて微笑ましいと言われていた。
中学高校生になると毎年願い事は決まっていた。
『成績が上がりますように』
これ一択だった。
これを見た人は皆、苦笑いをしていたけどね。
私にとっては切実な願いなんだよ。
短冊を付ける時、私は必ず『提灯』の飾りの傍に付ける。
理由は簡単『願い事を書いた短冊を、明るく照らす』という意味が提灯の飾りにはあったからだ。
「明るく照らして願い事が良く見える様にするんだよ」と祖父から毎年聞かされていたのだ。
これにはちょっとした理由がある。
祖父は小さい頃から祖母に片思いをしていて毎年短冊に『彼女が振り向いてもらえますように』と提灯の飾りと共に吊るしていたそうだ。
祖母はその願い事を見て『彼女って誰?』と拗ねながら祖父に訪ねたのが切っ掛けで交際が始まったというちょっとしたロマンスもあったらしい……
「…で、お前の願い事が『成績が上がりますように』だけなのはなぜだ?」
はす向かいに住む幼馴染が笹に短冊や飾りを付けながら不思議そうに私を見つめる。
「なぜって、今の私には切実な願いだよ?もうすぐ期末だよ?成績落したくないじゃん」
「学年トップ10に入っているやつが言う台詞か?」
苦笑いをする幼馴染にムッとしながらも次々と飾りを手渡す。
背の低い私では高い所が届かないから悔しいけど毎年幼馴染の手を借りて飾りつけをする。
いったん地面に置いて飾りつけすればいいじゃんと思っていたのは小さい頃の事。
「確かにいったん地面に置いてからつければ高い位置にもつけられるだろう。だけどな、身の丈に合った願いというモノもあるんだよ。自分の精一杯の努力を認めてもらうには自分の背よりちょっと高い位置に願い事を書いた短冊を吊るした方が天界の神様も『この子は自分の身の丈に合った願い事をしているんだな』って思ってくれるかもしれないだろ?……というのが我が家に伝わる言い伝えだ。それに、上の方に付けたからと言って必ず願いが叶うわけじゃないし、高い位置にばかり飾りを付けたら笹が折れ曲がってしまうだろう?」
小さい頃に祖父にそう言われてからは自分の身長よりちょっと高い位置に吊るすようにしたのだった。
明るく照らしてくれる提灯。
織姫のように織物が上手くなりますようにと願いを込めた吹き流し。
天の川をイメージした菱飾り。
裁縫が上手くなりますようにと願いを込めた紙衣。
お金が貯まるようにと願いを込めた巾着。
星に願いが届きますようにと星飾り。
……次々と吊るされていく七夕飾り。
ひとつひとつに意味がある事を知ったのは中学の頃。
小学生の頃は意味も分からず作っていた七夕飾り。
意味を知ってから私が良く作るようになったは、紙衣と巾着。
意味を知っている祖父母と両親は笑っていた。
そして最近では必ず忘れずに最後に私が飾るのが『彦星と織姫』
今ある恋がずっと続きますようにと願いを込めて作る唯一の飾り。
短冊に込めた願いよりも実はこっちの方が重要なんだよね。
「なあ、この彦星……俺に似ているのは気のせいか?…織姫もお前に似ているような……」
彦星と織姫を手に取ってつぶやく幼馴染に私は笑顔だけで答えた。
カテゴリーは『恋愛』でいいのか?と思わず自分突っ込み(笑)
七夕の笹は妹が小学生のころまで我が家でも飾っていました。
毎年父がどこからともなく笹を持ってきていたので…ほんとどこで貰ってきたのか買ってきたのか…いまだ不明(笑)
七夕飾りは下記のような意味があるみたいです。
紙衣/裁縫の腕が上がりますように
巾着/お金が貯まりますように
投網/豊漁に恵まれますように
吹流し/織姫のように機織が上手になりますように
折り鶴/家族が長生きしますように
短冊/願い事がかないますように
菱飾り/星が連なる天の川をイメージ
ちょうちん/心を明るく照らしてくれますように
織姫と彦星/ふたりのように永遠の愛が続きますように
笹の葉/邪気から守ってくれますように
星飾り/星に願が届きますように
くずかご/整理整頓ができ、ものを粗末にしない子になりますように
小さい頃は意味など知らずに作ってましたね…
簡単な提灯とか吹き流しとか投網とか…