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助けてくれたお礼

あれは中学生になった頃…私はいわゆる、いじめの対象になっていた。

時に物を隠され、時に仲間外れにされる。暴力による行為は無いにしろ、その日々は辛く…長く続いた。

中学を卒業し、高校生になりいじめられる事はなくなると思っていた。

…現実は真逆だった。

人が変わり、いじめはまだ続いた。

学校に行くのが嫌になり。いつまでも夜が続けと思った。

寝なければ夜は明けない。そんな訳は無いが、私は寝ない日々が続いた。

相方に本を取り、読みふけて朝を向かえる日々、すっかり視力は悪くなった。

眼鏡をかけて登校すると、それが次の対象になった。

もう…嫌だった。転校を本気で考えていた事もあった。


そんな時、あの人に出会った。


「東真珠理さん…だな?」

「は…はい」

「俺は中紫 晶。アンタを助けてやる」

た…助ける?

そう言った中紫さんは、急に私を壁際に追いやった。

「!?」

「じっとして…そのまま」

眼鏡を外され、左目を中紫さんの右目で見られた。

「あ…あの…」

目を見られている事もあり、中紫さんの顔がかなり近い、互いの息が届くぐらいだ。

まわりに誰もいないにしろ、とても恥ずかしい…。

そして…何故だろう、

まるで心の中を見透かされているような気がする…。

「……なるほど」

中紫さんが離れた。

「アンタ、同級生にいじめられてるな」

「!?」

私は一言も言っていない、

なのに…何故…。

「な…何故それを…」

「瞳を見たからだ」

「瞳…?」

「人を知るには、その人の瞳を見るのが一番手っ取り早いんだ」

もう大丈夫だから、と中紫さんは言って去っていった…何が大丈夫なんだろう?


次の日…

私をいじめていた人達が、

「今まで…ゴメン。もう…いじめないから…」

開口一番謝ってきました。

最初は新たないじめだと思っていたのだが、本当に私はいじめられなくなった。何故こうなったのか、思い当たる節が一つあり、私は中紫さんを訪ねた。

その時初めて中紫さんが同じクラスなのだと知った。

「大丈夫だったろ?」

「一体何をしたんですか?」

「なに、ただ言ってやっただけだよ、いじめを止めないと、次はお前達だ。って」

私には分かっていた。それだけでは無い事を、

でも、それでも私はいじめから解放された。

「ありがとうございます。中紫さん」

お礼を言うしかなかった。



目が覚めたら、ベッドの上だった。

「…あれ?」

でも病院のそれではない、上には更にベッドがある。

二段ベッドの一段目だ。

つまりここは…、

「起きたか?」

横から声が聞こえた。

頭だけ動かして見ると、黒石が椅子に座っていた。

「黒石…僕は一体…」

「お前、雨の中で急に倒れたんだよ」

「あ…」

思い出した。東真さんと話していたら急に頭が痛くなって…それで、

「倒れてたお前を偶然通りかかった俺がここまで運んだんだよ」

「そうなんだ…ありがとう黒石」

「気にするな、偶然帰り道で見つけただけだからな」

「そういえば…東真さんはどうしたの?」

「ついさっきまでは居たぞ、時間が時間だから帰らせたけどな」

そう言って時計を見た。

僕も壁にかかっている時計を見ると、20時22分。

え…20時?

「く、黒石…僕は何時間寝てたんだ?」

「ざっと…五時間かな」

五時間も…。

その寝ている間…僕は夢を見ていた。

東真さんと出会った頃の、東真さんを助けた瞬間の記憶を見ていた。

つまり…記憶を思い出したのだ。

その間だけだけど……しかし、僕はなんて事をしていたんだ。

東真さんをいきなり壁際に追いやり、顔を近づけて瞳を見るなんて…。

その次の日には東真さんにお礼を言われているし。

一体何をしたんだ…その間が思い出せない、そこが重要な筈なのに。

頭に手を当てて思い出してみる。

「まだ痛むのか?」

その様子を見た黒石が心配そうに聞いてきた。

「あ、ううん。大丈夫」

「そうか、後、コレを晶に渡してくれって、東真って人が」

「東真さんが?」

黒石が指さした机の上を見ると、そこには紙袋が置いてあった。

「なんだろう」

「今見るか?」

「うん」

黒石が紙袋を取り、渡してくれた。

「ありがとう」

「んじゃ、俺はもう寝るから、寝る時に電気を消してくれ」

黒石は梯子を上り二段ベッドの上へと登った。

紙袋を開けて中を見ると、

「なんだろう…コレ」

楕円形のガラスの容器で、中には青く染められた水が揺らめいている。

先端の片方にはチェーンが繋がっているのを見るに、

「キーホルダーですね」

アクアがそう言った。

「きれいですね…」

まじまじと見ている。

「でも何の為にコレを僕に渡したんだろう…」

電気の光に当てたり、左右に振ってみる。

「……」

その動きに合わせてアクアが視線をそちらに動かす。

「……」

その場で回してみる 、

「……」

アクアの視線も回る。

「……」

回す速度を上げる、

「……」

回る速度が上がる。

回す。

回る。

「あ…あぅぅ~」

アクアが目を回した。

「ちょっと晶」

「あ…ゴメン、つい」

「アクア大丈夫?」

「は…はいです…」

「コレが何か分からないならさ、明日あの人に聞いてみればいいんじゃない?」

「あ、そっか」

「それじゃ、わたし達ももう寝よっか」

「はいです」

「おやすみ、晶」

「おやすみなさいです、晶さん」

「うん、おやすみ」


…とは言ったものの、時間はまだ20時、寝るには早すぎた。

黒石はもう寝てるみたいだけど、僕は眠気すらなかった。

その時ふと、思い出した。

精霊が見えるようになってかれこれ二日。なのに見えた精霊と言えば、ピスラとアクアだけだ。

世の中のもの全てに宿るという精霊…この部屋にも様々な物があるのに、その精霊達は全く見えていない。最初の時もそうだったように、眼鏡のような何かを通してのみ見えるのだろうか? 

ピスラは眼鏡、アクアは……いや、それは無いな。

アクアも眼鏡で見えたのだ。最初に出会った時は雨の中だったし、それが関係しているかと思ったら部屋の中で見えたから違う。

じゃあ…僕が見える精霊には何か共通点があるのか?

水の精霊と収縮の精霊…共通点が思い付かない。

でもひょっとしたら2人に何かしら共通点があって、それが僕の何かに…そう、忘れてしまった記憶に関係しているのかもしれない。

「……」

あくまで推測に過ぎないけど…可能性が無い訳ではない…。

「…ふわぁ」

あくびが出た。さすがに眠気が来たらしい、もう寝よう。

明日からはアクアの拠り所探しを始める。

それと、東真さんにキーホルダーについて聞かないと…。

僕は目を閉じた。


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