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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
始まりの章
3/20

クラスメイトとルームメイトと

入り口で石榴先生と別れ、僕と西金さんは並んで歩いていた。先ほどまで室内だったのもあり、夕日が目に眩しい。

「しっかし、本当に変わったなーお前」

西金さんが唐突に話してきた。

「多分明日学校で格好の的になるぞ、覚悟してけよ」

「はぁ…」

「……」

あれ? 急に黙ってしまった。

「あの…西金さん?」

名前を呼んでみる。

すると、

「うぐわぁ!」

「!?」

急に変な声を上げた!

「ど、どうしました!?」

「わ…悪い晶、お前に敬語とか、名字をさん付けで呼ばれるのが耐えられん…」

「え…?」

「頼むから、いつもみたいに剛って呼んでくれ」

「つ…剛…さん」

「うがぁ!」

「えぇ!?」

「さ…さん付け無しで…」

「つ…剛」

「何だ?」

あっさりと元気になった!?

「えっと…普段の僕って、どんな感じだったんですか? 剛さ…剛なら知ってる筈だと思いますし」

「ん? そうだな…」

西金さん…いや、剛は顎に手を当てて考え始めた。

「まずは…そんな喋り方はしなかったな。後、そんな弱気腰じゃなかった」

要は…。

「今の僕とは真逆だと」

「そうだな、一応自分の事は俺って言ったり、僕って言ったりしてたけどな」

「はぁ…」

「後それだ」

「はい?」

「その、はぁ…ってやつ、前の晶もよく使ってた」

「はぁ…」

「でも何つうか使い方が違ってた気がすんだよな。前の晶は何か知らんが俺がおかしな事をすると。はぁ…って言うんだよ」

…それって、呆れたため息じゃ…。

「はぁ…」

僕のこれはいわゆる返事だ。

「あー…でもやっぱり晶だもんな、よし! 誰が何と言おうと俺は前の晶と同じように接するぜ、良いよな!?」

「は、はい、その方が恐らく僕も記憶が早く戻るかもしれませんし。これからよろしくお願いします」

頭を下げると、

「うがぁ…」

あ…敬語ダメだったんだ。


病院から数分歩き大通りへ、そこからはほぼ一直線の道のりだった。

商店街を抜け、住宅街に入りしばらく歩いた先、ある建物の前で止まった。

「ここが学生寮だ」

「うん、ありがとう」

剛には敬語は使わないでくれと言われたので、使わないようにしている。

「ちなみに2人一部屋でな、晶のルームメイトは…」

その時、寮の入り口から誰かが出てきた。

「……」

青がかった黒髪で服は制服、こちらを見る瞳にはその髪と似た青が見られる。

見た感じ…少し怖かった。

「おっす、黒石」

剛が軽く挨拶した。

「あぁ…」

黒石という人も返してくる。

「? …晶はどうした?」

え? …僕の名前を?

「目の前にいるだろ」

剛が僕の肩を叩く、

「…は?」

黒石さんは驚きの顔をする。

「晶、コイツがお前のルームメイトだ」

「え…」

「混乱してないで黒石にも説明してやれ」

「あ、うん、えっと…事故の影響で記憶を忘れたらしくて、ルームメイトの事も忘れてしまったそうです」

「そうか…」

黒石さんは納得してくれたみたいだ。

「ですが、今までのように接して下さって構いませんので」

「ああ、分かった…じゃあ改めて自己紹介しようか、俺は 黒石 曜(くろいしよう)。お前のルームメイトだ」

「はい、これからよろしくお願いします」

「ああ…こちらこそ」

「んじゃ黒石、お前が晶を部屋まで連れてってくれ」

「分かった」

「じゃあな晶、また明日」

「うん、また明日」

剛は一人寮の中へと入っていった。

「俺達も入るぞ」

「はい」

黒石さんの後に続き僕は寮の中に入った。

入ってすぐの階段を上り二階へ、長い廊下を歩き扉を七枚見た先で止まった。扉に『208』と書かれている。

「ここだ」

黒石さんが扉を開けて中に入った。僕はその後に続く、部屋の電気がつけられ、室内が見えてきた。

正面にはカーテンが見える、その先は窓だろう、左側には机と椅子が2つずつ、左側には二段ベッドがある。

「下と左側が晶のだ」

「はい」

「…なぁ」

「はい?」

「その敬語、やめてくれないか? 何か調子が狂うんだ」

「あ…すみません」

「さっきの西金みたいに軽めでいいから」

「あ…うん、分かった」

「ふぅ…しかし、本当に変わったんだな」

黒石さんは机から椅子を引き出して腰かけた。

「まぁ、座れよ」

「うん」

僕も椅子を引き出して座る。

「明日、お前を知る人達はどんな顔するだろうな」

「剛にも似たような事を言われたよ」

「仕方ねぇよ、前のお前とは真逆に近いからな」

「…あの、黒石さん」

「黒石でいい」

「じゃあ…黒石、前の僕はどんな人だったの?」

「前か…一言で言えば…」

「……」

「変わり者だ」

「か、変わり者?」

「特技、覚えてないか?」

確か…石榴先生にも問われた気がする。

「うん…全く」

「じゃあ教えてやる。前の晶の特技は、人の心の内を知る事だ」

「…はい?」

「『人を知るには瞳を見る、それが一番手っ取り早い』お前の口癖だったんだぞ」

人を知るには瞳を見る?

「覚えてないか、でもこれでいいんじゃないか?」

黒石は背もたれに背を預けて伸びをした。

「どういう意味ですか?」

「その特技がお前を変わり者に仕立てた事だからな、分からなくなったならそれで変わり者じゃなくなる。変わり者なんてあまりいいもんじゃないからな、このままの方が安定した平凡な生活が出来る筈だ」

「……」

「このままで、よくないか?」

「…それじゃ、ダメだよ」

「…は?」

「僕は良いかもしれない、でも忘れられた記憶を持つもう1人の僕はこのままじゃいけないんだ。今までの人生を生きてきた僕にはこれからも生きてほしい、だから僕は記憶を取り戻す、その結果、変わり者に戻ったとしても僕は構わない」

「…そうか」

黒石は背を戻し、

「…く、あっはっはっ!」

大笑いした。

「えぇ!? どうしたの!?」

「はっは…いや、悪りぃ…やっぱお前は晶だわ」

「はい?」

「多分、アイツがお前と同じ状況になったら絶対そう言ってるぜ」

「はぁ…」

「いくら性格が変わろうと、心とか、そんなんは変わらねぇんだな」

それから僕と黒石は暫くの間会話を続けた。

主な内容は学校の事、明日の時間割りや、教室のある場所等、学校の見取り図を見ながらの細かな説明を受けた。

そうして夜になった。

黒石は二段ベッドの上に上り、電気の紐に手をかけた。

僕も下のベッドに入る。

「あ、そうだ晶」

「うん?」

「明日、俺が起きなかったら構わず置いてってくれていいから」

「うん、分かった」

「じゃ、お休み」

電気が消された。暗闇が目に写る。その中で頭の中に言葉を思い浮かべた。

『もう大丈夫だよ』

すると、

『おっけー』

机の上に置いた鞄の中からピスラが飛び出してきた。

『ごめんね、ちゃっかり鞄の中で楽しちゃって』

『ううん、別にいいよ』

『それに、ひょっとしたらわたしが見える人がいるかもしれないからね』

『うん』

『それにしても良かったね。ルームメイトの人、良い人そうじゃん』

『そうだね』

『でもさ、あんな事言っていいの?』

『どういう事?』

『例えばだけど、もしも記憶が戻ったとする。すると必然的に性格も元に戻る、そうなったら…今の晶はどうなっちゃうの…?』

「!?」

声が出そうになって堪える。そうか…記憶が戻るという事は性格も戻るという事、つまりそれは前の僕が戻ってくる。今の僕は…どうにかなってしまうという事だ。

そうなったら…ピスラともお別れになる…。

「……」

『…晶?』

「え?」

『ちょっと、声声』

『あ…ごめん』

『でね、その話を聞いててわたしなりに考えたんだけどさ、わたし達精霊が見えるなら、それを生かせば良いと思うんだ』

『精霊を?』

『晶言ったよね? この世に存在するもの全てに精霊が存在するって』

『うん』

『だから、見える今の内に記憶に関連する精霊と契約を結べば、記憶をうまく操作して前の晶が今の晶の記憶を持ったままになって、今の晶がどうにかして一緒にいられるかもしれないよ?』

『そういうものなのかな』

『分かんないけどね、でもやってみる価値はあると思うんだ』

「……」

やってみる価値はある、何だか心地よい響きだ。

何だろう…なにか、懐かしくて、聞き覚えのある…。

『晶?』

『え? な、なに?』

『大丈夫? 何だかボーっとしてるけど…きっと疲れてるんだね』

『う、うん…そうだね』

『じゃ、また明日にしよっか、お休み、晶』

『うん、お休み、ピスラ』

そう言ったピスラは何故かまた鞄の中に入った。

僕は目を閉じた。


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