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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
comecloseの章
19/20

comeclose ~真実~

いままでの出来事、すべての始まりはこの出来事から始まっていた

…目を開けた。ここは……寮のベッドか。

だが、妙だな。何で俺は横向きになって寝ている? 寝相はそんなに悪くないと思うんだがな。

身を起こしてみると、

「お目覚めか? 晶」

部屋に電気はついていないが、黒石が椅子に座ってるのが見えた。

「珍しいな、お前のが早起きなのか」

「まぁ、そういう事だ」

「それじゃま、久々に一緒に学校に行くか」

「いや、今日は開校記念日で休みだぜ」

「は? 開校記念日って、まだ当分先じゃ……」

「なんだ? こっちの晶も記憶喪失か?」

「こっちの?」

「思い出せよ、今日は何の日かを」

「何って、開校記念日だろ? 後は金曜日で……あぁ」

そうか、思い出した。俺が望んだんだったな。

「全てを忘れて過ごすのはどうだった?」

「本当に出来たんだな。あの時はお前の勝手な思い付きを言ってただけだと思ってたけど」

「記憶を無くすなんて方法知らねぇよ、でも似た事は出来た。要は思い出せなくすれば良いんだ。だから」

黒石はいつものように左手でペンを回し、

「記憶というものを縮めて分からなくしたんだ」

ビシッとペンを向け、ある一点を指した。そちらに目をやると、全長15センチぐらいの何か……いや、

「コレが精霊か」

「ああ、収縮の精霊、アイツはピスラって名付けていたな」

「アイツ、ね…一度会ってお礼を言いたいぜ」

「今は無理だ。アイツは今、事の内容を頭から見ているところだ」

「そうか」

「……で、どうだった?」

「まぁはっきりと言えば、楽しかった。でも分かった。コレじゃ駄目だってな」

「ほぅ、何故だ?」

「上手く言えねぇんだけど、学校があるから休みを楽しめるっていうか、何かで辛い事とかがあってこそこういう発散が意味を持つっていうか」

「ふぅーん。俺には分からねぇな」

「つまり、なんだ? ただそれだけを続けるのは辛いって事だ。最初は良くても、続けているとそれの嫌な所も見えてしまい、辛くなる。だから休みが必要になり、だからといって休み続けもまた辛くなるんだ」

「凄いな晶、休みの間にもそんな事考えてたのかよ」

「まぁな、さて……休みも堪能したし、また改めて人助けを開始するか」

「あー……その事何だがな」

「ん? どうした?」

「実はな……」




…ここは、何処だろう? 確か、僕は黒石に……そうだ…、記憶を失う事が僕の為になる理由を。

「……!」

何だろう? 声が聞こえた。

「こ…な…し…けて…終…な…だ…?」

よく聞こえない……耳をすましてみる。

「じゃあ止めるのか?」

今度は聞こえた、この声は黒石だ。

「どうせ続けても止めても同じだろ?」

他の声が聞こえた。これは……前の僕? こんな声だったのか。

それ以前に、今僕はどこに居るんだろう?

目を動かしてみる……何かが見えた。アレは、黒石だ。

「じゃあ、アレだ。こうしよう、休みにしよう」

黒石がそう言った。

「休みにしよう?」

前の僕が聞き返す。

「人助けを一時的に休むんだ。その間晶にはゆっくり休んでもらうと」

「そんなめちゃくちゃな……いくら休みにしたって俺には困っている人が目に映っちまうんだぞ?」

「じゃあこうしよう、お前の記憶ごとその能力を無くそう」

「んなあっさりと……出来るのかよ、そんな事」

「そりゃ、考えておくよ」

「そうかよ」


…こうして前の僕は人助けを休み始めたらしい。

だが、ある時困っている人を見つけてしまった。

その人を助けたのが、休むという話を黒石とした日から3日後の日曜日。僕が、僕になった日だ。

その人を助けた後、前の僕は三階のトイレへと行き。一人、呟いた。

…物は使えば減る

物は無限ではない

無限な物は物と呼ばない

だが、ものは違う

ものはものと関わり無限に続く

だから俺は無限なものを使って無限なものを減らしている

人の能力で困っている人を助けるなんてな

この目の能力も、困っている人も

どちらも無限に増え続ける……堂々巡りさ

何故俺はこんな事をしているんだ?

よく考えたら、人とは何かと違うからだろう

だったら……


ピシッ


前の僕が自らが映る鏡に拳を震った。鏡はヒビが入り、映らなくなる。


今の俺じゃなくなればいい

今の俺だから、助ける側に回っているんだ

俺だって……助けられる側に回ったっていいじゃないか

「……ふぅ、こんな事したってどうにもならない。帰るか」


…僕が去っていった。

そうか、前の僕も人助けをしながら、誰かに助けてもらいたかったんだ。

助けている人物が、一番助けを求めていたんだ。

…そしてこの後、僕は車に引かれて病院へ運ばれる。

そこで今の僕が目覚めた。

そう……僕が、だ。

そこにもまた、忘れていた。いや、僕達が知らない真実があった。



「大丈夫か?」

病室に黒石が入ってきた。隣にはピスラがいる。黒石にも見えていたんだ。

ベッドの上で目をつぶっている僕に声をかける。当然、答えない。

「安心しろ、怪我はしないように工夫したからな、後は…」

黒石は服のポケットから何かを取りだし、傍らにある机の上に置いた。

「……人には二つの人格が、光サイドと闇サイドがある。本人格に何かがあった時に出てくる、もう一つの人格……とある科学者が遺書のように残した言葉だが、それを使わせてもらうとしよう」

それは、あのメガネだ。

元々僕はメガネなんてかけていなかった。東真さんの瞳を見た時にそうしたように、そんな物は人の瞳を見る際に邪魔になるからだ。

「コレで大体はOKだ」

アレは黒石がかけさせるように仕向けた物だったんだ。

「後は、任せたぜ」

黒石が隣にいるピスラへと言った。

「任せなさい、わたしが演じればいいんでしょ?」

「その通り、別に何処かへ行くのはいいが、収縮をしている限りあまり遠くには離れられないんだろ?」

「そうよ、でも安心して、わたしは逃げない。だってわたしの契約者になってくれる人なんでしょ?」

「契約者ねぇ……その辺りは詳しく知らねぇから分からねぇけどよ、契約者が出来るとどうなるんだ?」

「はっきり言えば、拠り所が要らないのよ、わたしみたいな状態精霊のはぐれ者は、拠り所が無いとすぐに消されるから。契約者を探すか、拠り所を探すか、どちらかしかないの」

「ふーん……だったらその事、晶に言ってみろよ。もしかしたら助けてくれるかもしれないぜ」

「まぁ、少しだけテストはするけどね。わたしが見えてないようなら諦めるし」

「その辺は大丈夫だ。用意もしてあるからな」

「ふぅん……」

「まぁ頑張れよ、俺も知らなかったっていう役を演じ始めるから。じゃあな」

黒石は出ていった。

「……」

病室にはピスラと、寝ている僕が残った。ピスラが僕を上から眺める。

「……これで、わたしもこの人も助かるのね」

ただ、そう言った後、

「さて……演技ね、わたしが原因であなたは車に引かれた。うーん……あなた、より、君、の方が良いかな?」

僕が起きるまで、演じる役を模索していた。



…そして、僕が、僕として起きた。


いつの間にか気付けば19話という長さになっていたこの話ですが、この度次回で最終回を迎えます。後少しだけですが、お楽しみください。

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