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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
comecloseの章
18/20

comeclose ~犯人~

この話も。ついに残り後わずかです。

最後までお楽しみください。

今日の三、四限もD組と合同授業だった。

科目は美術、先生は…、

「今日は人物スケッチをやるぞ」

僕達の担任、石榴先生だ。

「二人一組でペアになった所から書き初めろ」

生徒達がはーいと返事をして席を立ち、次々とペアを作っていく。僕も席を立ってペアの相手を探していると、剛が近寄ってきた。

「組もうぜ」

「うん」

その時、バンッ! と机が叩かれた。

驚いて振り向くとそこには、

「南野さん」

南野さんが画板を持っていた。

「晶、組むわよ」

「え…でも、今剛と…」

「大丈夫だぜ晶、俺は他の人探すから」

そう言って剛は行ってしまった。

「まずはあたしが書くわ、そこに座って」

「は、はい」

さっきまで座っていた席に再び腰を下ろす。南野さんは前の席をこちらに向けて座った。画板を机に立て掛け、鉛筆を走らせる。

「……」

「……」

静かだ……。

南野さんの鉛筆を走らせる音しか聞こえない、周りではペアどうしが色々と話ながら作業をしているのに……。

な、何か話を…、

「晶」

「!?」

南野さんの方から話しかけられた。

「は、はい」

「その……ご、ごめん…」

「え…な、何故謝るんですか?」

「クラスの男子から聞いたんだけど…晶、あたしを訪ねてきたんだって?」

「はい、確かに」

「でも居なかったでしょ、だから…ごめん」

「い、いえ…」

「…あたしはね、青の所に行ってたのよ、あの子も寮暮らしだから」

「はぁ…」

「でね、青が、こんな事もあろうかと! とか言って自分の髪型そっくりのカツラを取り出してね、あたしが青と入れ換わって向こうの学校に行ってたのよ」

「そうだったんですか」

「行ってみて分かったわ、あの子、クラスのムードメーカーだったのよ、だから大変だったわ、少しだけ青を真似してたんだけど…はぁ…疲れたわ…」

想像してみる…南野さんが青さんのように振る舞っている姿を………うわぁ。

「お疲れ様です」

「ありがと…それでね晶」

「はい」

南野さんは話ながらも手を止めていない。

「記憶の方は…どうなったの?」

「少しずつですけど、思い出してきました」

「そう…それで…あ、あたしの事は?」

「はい、あの時ですね」

「横断歩道で…」

「引かれそうになった南野さんを助けた事ですね」

「そ、それ…それでなんだけどさ…」

「はい?」

「…あの時の晶は…戻ってくるのよね?」

「え…?」

「べ、別に今の晶が嫌いだって言ってるんじゃないのよ!? むしろ今の晶も晶で…悪くな…」

後の方が小声で聞き取れなかった。

「はい? 今の僕がなんですか?」

「な、なんでもない!」

バキッ!

鉛筆の芯が折れる音がした。

「は、はい…」

「こ、こほん…」

鉛筆削りを使って鉛筆を削り、再び紙に走らせる。

「とにかく、その辺りはどうなのよ?」

「それは……分かりません。僕のままかもしれませんし、前の僕に戻って僕が出てこなくなるかもしれません」

「……そう」

「なので、すみません」

「別にいいわ……でもね」

鉛筆の音が止まった。

「今の晶も前の晶も、どっちも晶なんだから、どっちかが居なくなるなんて絶対にダメよ」

「そ、そんな事言われても分かりませんし……」

「弱音吐かないの。前に約束したじゃない、弱気腰は辞めてって」

「はい……」

「だからどんな方法だっていい、前の晶も今の晶も消えないようにしなさい」

「……はい」

「描けたわ」

画板をこちらに向けた。

そこには僕が、メガネをかけていない状態で描かれていた。でも、とても上手かった。

「料理はダメだけど絵は得意なのよ、メガネは難しいから外させてもらったわ」

「では、こうすれば」

僕はメガネを外した。

「っ!!」

途端、南野さんが画板で顔を隠した。

「どうかしましたか?」

「な、なんでもないから…メガネ…つけなさい」

「?…はい」

その時、三限終了のチャイムが鳴った。


帰りのホームルーム、石榴先生は連絡事項として一つだけ言った。

「明日は学校の開校記念日で休みだ。活動する部活もあるがそうじゃない奴は間違えて学校に来るなよ…ホームルームは以上だ。日直、号令」



夜……僕は浦井さんに聞いた言葉を思い出す。

その通りだとしたら、この後に見る夢が真実を教えてくれるらしい。

……本当に見ていいのか? 真実を知らずに、このまま時間をかけてゆっくりと思い出していけば良いんじゃないのか?

でも……コレが一番真実に近づける。

だったら、僕は……、


ゆっくりと、目をつぶった。



……ふぅ

こんな事したってどうにもならない

確か、アイツがなんとかしてくれると言っていたな、たまには身を委ねるのも良いかもしれないな……

さてと、帰るか



信号は赤、だがこんな所、車なんて対して通らないし、渡るか

……ん? アレは……

は? 何だ? ……上を見ろ?

上を……



……何だ、アレ?



キキーッ!!


……え?



                                         ドンッ



「……」

カーテンの奥から日が漏れている。朝だ。

今の夢は、僕が車に引かれた時の記憶だ。

……そうだ、あの時に感じた違和感はこれだ。

確かに上を見て止まった。誰かに上を見ろと言われて止まったのだ。いくら車の通りが少なくても、横断歩道の途中で立ち止まるのはおかしかった。

誰かに言われたからだ。

その誰かが……、

「思い出した?」

声が聞こえた。メガネをかけて横を見る。

「……ピスラ」

あの時、事故の瞬間を見ていた一人、僕に見られていた何かだ。

「意外に早かったね。でも、案外いい頃合いなのかも」

「……やっぱり、知っているんだね」

「大丈夫。アクアとトルマはまだ寝てるから」

「答えてよ……ピスラ」

「……そうだよ、わたしはあの時、あそこに意味があって居たの」

「やっぱり……」

最初に疑うべきだったんだ。ピスラの拠り所が何なのか、収縮の精霊という状態関連の精霊が何故あんな所にいたのかを。

「何でこんな事をしたの?」

「それは……わたしが答える訳にはいかないの。でもね、晶の為なのは、間違いない」

僕の為?

「何で……何でだよ! 記憶を失うのが僕の為になるって言うのかよ!」

声を荒げて叫ぶ。

「……それも、忘れてるからなんだよ」

「じゃあ教えてよ! 何で記憶を失う事が僕の為になるのかを!」

「それは……」



それには俺が答えよう



「!!」

扉が音も無く開かれた。パタンという音と共に扉は閉まる。

そこに居たのは、前の僕が記憶を失った原因を作った張本人にして、僕に上を向かせて車に引かせた……犯人。

「黒石……」

僕はベッドから出た。

「久しぶりだな、俺が部屋に居なかったのには気づかなかったか?」

ここ数日黒石を見なかった。そう、ちょっと出てくると言って出ていった日からだ。なぜそれに僕は気付かなかったんだろう。

「裏井から話は聞いた。思い出したんだな?」

「そうだよ」

「それは良かった。学校を休んで準備したかいがあったな」

「準備って、何だよ……」

「知りたいか?」

「もちろんだ」

「悪いが、それは無理だ」

次の瞬間、

「な…」

僕は黒石にベッドへ押し倒された。電気のついていない部屋、カーテンから漏れる光も二段ベッドの上で遮られる。その状態でも、黒石の瞳だけがまるで猫の目のように青黒く光っている。

「何の準備をしていたかは、他に言う相手がいるからな」

「あ、相手って……」

「それには答えてやろう。今、俺の目の前にいる奴だ」

「目の前……」

「コレは返してもらうぜ」

メガネを外された。そのメガネを黒石は右手で取り、左手に持っていた何か、棒状の何かを、

「じゃあな」

目の前で一回転させた。



途端……意識を失った。



終わりが近づいているというのもあり、ここで一つ質問させて頂きます。

もしもこの作品を読んでいる方がいましたら、一番好きな登場人物を教えてください。

もしもご返答がありましたら、その人物を筆者の他作品に登場させようと考えております。

ご協力、お願いいたします。

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