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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
comecloseの章
17/20

comeclose ~ヒント~

…きっかけは事故だった

ある時階段を上っていたら上から足を滑らせた生徒が降ってきて俺を巻き込み

踊り場へ落ちた

そこでその生徒の顔が俺の近くにあり、目を見た

その時だ

その生徒の記憶、心の内を見てしまった

それからだった…


「……」

瞳を見て人の心を見る事が出来る…きっかけは、そんな偶然からだったのか。

でも…何だろう、この夢は二、三日前も見ていたものとは何かが違う。

これだけ時間枠がおかしい、人助けを始めたのは高校生の頃だというのだから高校に入ってからの事だろうけど。二、三日前の夢とはどうも繋がらなかった。


『おっはよ~さ~ん』

目が覚めて一番に頭の中に声を送られた。

この声は…トルマだ。

『おはよう、トルマ』

上半身だけ起こしてメガネを探す。

『あー待った待った、そのままで聞いてくれい』

『ん?』

『まだ2人が起きてない間にな、言っておきたい事があって』

『言っておきたい事?』

『あのね…うちってさ、役に立ってるかな?』

『え…?』

『うち…時計台で記憶の精霊も見つけられなかったし…いつもお喋りで騒がしいし…あまり役に立ってないなと思って』

姿は見えないが、トルマが落ち込んでいる様子が目に浮かんだ。

そんな事を思ってたなんて…普段のトルマを見ていたら想像できなかった。

『…ちょっと、聞こえてるよ晶くん』

「あ…」

しまった…頭で考えるとトルマの頭に直接届けられてしまうんだ。

『…でも、うちだって役に立ちたいんだよ』

『トルマ…』

『あんな事があってから…うちは心を入れ換えたの、いたずらで百回じゃなくて、人助けで百回を目指そうと思ってるんだ…だから、晶くんを記念すべき一回目にする為にうちは頑張るよ』

『…うん、これからもよろしくね』

『こちらこそ!』


昼休み…僕はD組に赴いていた。

その理由は、

「南野なら休みだぞ」

南野さんを訪ねてだ。

「そうですか、ありがとうございます」

クラスにいた生徒に聞くと、南野さんは休みらしい、

それも三日前から。

今日は水曜日、つまり今週南野さんは学校に来ていないという事だ。

何をしているのだろう…。

「中紫」

「ん?」

声をかけられた方を向くと、そこには浦井さんがいた。

「こんな所でどうした」

「浦井さんこそ」

「俺は黒石を訪ねる為に来たのだが、休みらしい」

「黒石を?」

そういえば黒石もD組だ。

僕が寮の部屋を出るときはまだ寝ていたと思うけど、また休みなのかな?

「全く…アイツは昔から変わらないな」

「浦井さんって黒石と仲良かったんですね」

何だか似た雰囲気だし、波長が合いそうだとは思っていた。

「言ってなかったか? 俺と黒石は小中も同じなんだ」

「へぇ…」

D組から離れ、渡り廊下を並んで歩く。

「アイツは昔っから変わり者だったからな…だからD組に入れられたりするんだ」

D組が特に変わり者の集まりだと教えてくれたのは浦井さんだ…けど、

「それは…きっと違うと思いますよ」

「…というと?」

「人というのは皆違うもの何ですから、特に変わり者を集めるなんて出来ませんよ。きっと普通のクラス分けの結果ですよ」

「ふぅん……そういや中紫、記憶の方はどうなった?」

「少しずつですが、思い出してきていますよ」

「そうか…記憶の方はそれとして…性格は戻らないんだな」

「性格…ですか?」

「前の中紫はな、はっきり言ってD組候補ぐらいの変わり者だったんだぞ」

「それは…人助けをしていたからですか?」

「それもある。だが瞳を見ただけで人の心を知るなんてのもしかりだ」

「はぁ…」

「…だが」

浦井さんが立ち止まった。僕もつられて立ち止まる。

「だからこそ、俺達は変わり者だったんだ」

「俺…達?」

「俺と黒石、そして中紫の3人だ。中紫が疑問を解き、黒石が解決策を考えて、俺が実行する。そうして人を助けていた事もあるんだ」

「そうなんですか…」

「俺はとても楽しかった。だが後の2人がどう思っていたかは分からない…特にお前だ。中紫」

指をさされる。

「僕が…?」

「はっきり言おう…真実を知りたいなら…あの時一番近くにいた奴に聞け」

「え…? それは一体…」

「分からないならヒントをやる。明日…いや、明後日の夢を忘れるな」

それだけ言うと、浦井さんは歩き始めた。

なぜだ? なぜ浦井さんは僕の夢のことを…?

「う、浦井さん!」

慌てて呼び止める。

「何だ?」

立ち止まってくれた。

「あなたは…一体何者なんですか?」

浦井さんは振り向かぬまま、

「言っただろ、変わり者の一人だって」

浦井さんは行ってしまった。

その後の授業、隣の席に、浦井さんは居なかった。



…目が覚めた。夢を見ないままに。

昨日の浦井さんの言葉が頭に過った。

明後日の夢を忘れるな

…重要なのは明後日…今日から見て明日の夢だ。

そんな思いが頭の中を駆け巡っている。

…何だか、目覚めが悪い、

昨日までのように夢を見なかったからか?

それとも、明日には重要な夢を見るからだろうか?

そんな事を考えていると、扉がノックされた。

「はい」

ベッドから降りて扉のノブをひねり、開けた。

「おっす、晶」

そこには制服姿の剛がいた。

「どうしたの? こんな朝早くに」

「何言ってんだよ晶、もう8時だぜ」

「え?」

僕は時計を見る。

時刻は8時3分

「本当だ…」

寝覚めが悪いのは、寝過ぎたからかもしれない。

「まだ焦る程じゃねぇけどな、早く行こうぜ」

「うん。すぐに支度するから待ってて」

扉を閉め、制服に着替えた。

鞄を開け、中を見る。

「あ、晶おはよう」

「おはようございますです晶さん」

「晶くんおっはよ~」

ピスラ、アクア、トルマが各々挨拶してきた。

「おはよう3人共」

「今日は珍しくあの人と行くんだね」

そういえば、いつも部活の朝練で先に行ってしまうので剛と共に学校に向かうのは久しぶりだ。

教室では毎日話をしているのに、

鞄を閉め、扉を開けた。

「お待たせ」

「よし、行くか」


周りには生徒が多い、今がちょうど登校する生徒が多い時間帯なのだろう。

まぁそれはさておき、

「そういえば剛」

「ん?」

「一昨日の掃除の時さ、剛はどこの掃除だったの? バケツが無いって東真さんが困ってたよ」

「あーそっか、そりゃ悪い事したな、俺は三階の男子トイレだったんだよ」

「え? 普段はそこ掃除して無かったよね?」

「いいや、前からB組の担当だったぜ、何でも誰かが鏡を割ったとかで入れなくなってたんだ」

「へぇ…」

誰がそんな事したんだろう。

「そういや晶、記憶はどうなったんだ?」

「えっと…少しずつだけど思い出してきたんだ」

僕は今までに思い出した記憶を簡潔に語った。

「東真と南野と出会った時か、俺と出会った時は?」

「それは覚えてる。小学校の時だよね」

「ああ」

「不思議なんだよね、小学校や中学校の時は覚えてるのに、高校生の時が全く思い出せないんだ」

「ふーん…じゃあ黒石達とやってた事もすっかり忘れてんだな」

「あ…」

それは…昨日浦井さんに聞いたばかりだ。

「ううん…それは思い出してる。人助けだよね」

「そうそうそれだよ、てことは特技も思い出したか」

「瞳を見て人の心を知るっていうやつ?」

「それだよ、お前がそれに気づいた時さ、俺も近くに居たんだぜ」

「え…?」

「最初は頭でも打ったかと思ったけど、本当っぽいからさ、聞くに聞けなかったぜ」

「はぁ…」

「で、それ以来黒石や浦井と一緒に人助けを始めた訳だよ」

「そうだったんだ…」

「まぁ…一つだけ疑問があるんだけどな」

急に剛の声が低くなった。

「え…何?」

「それはな…」

「……」

沈黙が続き…剛が破った。

「なんで俺を仲間外れにしたんだよー!」

「…はい?」

「だってよ! そんな楽しそうな事遠くで見てるだけなんてツマンねぇよ! 俺も仲間に入れてくれよー!」

「は、はぁ…」

それを今の僕に言われたって…。

「とにかく、なんか困ってる事や人助けをするって時は俺も呼んでくれよ、力になるからさ」

「あ、ありがとう、剛」

「良いってことよ!」



少しずつ近づく終幕ですが、同時作業で新たな掲載作を投稿いたします。

もしも先に気付いた方は、そちらも楽しみにしていてください。

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