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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
入れ替えの章
15/20

増えた仲間、そして謎

…目を覚まして最初に見えたのは、二段ベッドの床だった。

ここは…寮の部屋だ。

頭が冷静になってきて、少しずつ思い出した。僕はまた、倒れたのだ。

そして…南野さんと青さんと出会った時の記憶を思い出した。

まさかそんな理由があったなんて……でも、今の南野さんが困っている雰囲気はない。恐らく他にも何かがあったのだろう。その辺りは…思い出せないだが、他に分かった事がある。

僕の記憶は前の僕が関連した何かをする事で思い出していくのだ。

東真さんの時は、助けられた時の話を聞き、

今も南野さんを助けた時のように、青さんが……。

「!!」

そうだ…青さんが!

僕はベッドから身を起こした。

「目覚めたか?」

黒石が椅子に座っていた。

「黒石…もしかしてまた」

「ああ、俺が運んだ」

「じゃ…じゃあ南野さんは!? 青さんは!?」

「落ち着け、大丈夫だ」

「え…?」

「南野…姉の方な、ソイツが妹の手を引っ張って助けたんだ。どちらにも怪我は無い」

「そう…か…良かった…」

「で、東真って奴の時みたいに居るつもりだったが、時間がマズイから帰らせた」

「前の…ねぇ、今何時?」

「…17時26分だ。かれこれ三時間だな」

「え…意外に短い…」

「妹の帰る電車があるんだとよ」

「それでか」

「妹から伝言だ。次は負けないよ、だと、何だ? お前達何か勝負してるのか?」

「あ、あはは…」

「後、姉の方から、ありがとう、だとさ」

「…うん」

「何かしたのか?」

「うん…多分…ね」

「?」


ちょっと出てくる。と言って黒石は部屋を出ていった。

僕は毛布から出てベッドに腰かけた。

「晶、大丈夫?」

「大丈夫ですか晶さん」

ピスラとアクアが鞄の中から出てきた。

「うん、大丈夫だよ」

部屋に黒石がいないので、声で話す。

「見てたよ、一部始終」

「大変でしたよ」

「僕は倒れてたからね、でも黒石に聞いたよ」

「それで、今平気かな?」

「平気って?」

「あのね……出てきなさい」

ピスラが後ろを向いて言うと、鞄の中から、

「……」

あの時の精霊が顔を出した。

顔の下半分は鞄の中に隠し、上目遣いでこちらを見ている。頭にあるアンテナのように伸びた一本も萎れているように見える。

だがそれ以前に、

「…うっ……ぐす…」

その子は泣いていた。

「あ、あの…」

「ひく…ご、ごめんなさい…まさか…あんな事になるなんて思わなくて…」

あんな事って…。

「ちょっと待って、あれは何も無かったんじゃ…」

「車がジャマでこの子には見えなかったみたい、あの後に近づいたら、こんな感じ」

「う…うちのせいで…」

「大丈夫だよって言っても聞かないの」

「そうなんだ…」

大丈夫だったのだし、とりあえず泣き止んでもらわないと…。

「ね、ねぇ…君?」

「ぐす……はひ?」

「あれは誰も怪我しなかったんだよ、大丈夫だったんだ」

「ほ…ホント、ですか?」

「うん。本当だよ、だから泣き止んでくれないかな?」

「ひく……ふぁい……」

それから泣き止むまでに5分かかった。

「まさか…あんな事になるなんて…思わなかったんですよ…」

「だから言ったじゃん。止めなさいって」

「だって…だって…」

何故そんな事をしてきたか、入れ換えの精霊は語り出した。



『百』というのは凄い数だ。その後につく言葉によってその凄さは更に際立つ、

うちが聞いたのは、特に凄い『百』だった。

とある所に立っていた銅像、それが百年の記念として修理をする為。その間そこに置かれるサンプルと入れ換えられる事になった。

うちはその時に現れた。

そうか、百というのは凄いのか、だったらうちだって百を目指してみたい。

何が出来るかを考えた結果、人を驚かせた数が百回というのが頭に浮かんだ。


「…後は、そっちも知ってるとおりだよ」

「……」

なんてはた迷惑な…。

「何でそんな事思い付いたの?」

言葉に怒りを少し込めながら、ピスラが言った。

「だって…うちに出来るのは入れ換えるぐらいで…」

「だからって他にも方法はあったでしょ、特にわたしやあなたみたいなのは百年ぐらいなら生きられるんだから」

「そう…だよね…」

「誰かが困るような事はしちゃいけないんだよ」

「うん…ごめんなさい…」

「ふぅ…まぁ反省はしてるみたいだからこれ以上はとやかく言わないけど、あなたには今までの罪を償ってもらわないとね」

「罪を?」

「という訳で…晶」

ピスラがこちらを向いた。その声にはもう、怒りは込められていなかった。

「この子にも手伝ってもらおうよ、記憶の精霊探し」

「うん、そうだね」

この子もまた精霊だ。しかも入れ換えのという不可視のもののだ。

ひょっとしたら、記憶の精霊と話をする事が出来るかもしれない。

「記憶の精霊探し?」

「うん、僕はある時にあの横断歩道で車に引かれて記憶喪失になってね、記憶の精霊を探して思い出す手伝いをしてもらおうと思っているんだ。だから、君にも手伝ってもらいたいんだ、いいかな?」

「うん! もちろん! うちに出来る事なら何だってするよ!」

「決まりだね、じゃあ君にも名前をつけなくちゃね」

「名前を?」

「うん、えっと…」

ピスラはラピスラズリ。アクアはアクアマリンから名前を考えた。だったらこの子にも似たように宝石から考えて…。

「…よし、君の名前は」

「どきどき」

「トルマだ」

「トルマ?」

「もしかして、トルマリンから考えた?」

「うん、本来トルマリンは電気石とも呼んでね、トルマは全体的に黄色いから、コレかなって」

「また安易ね…」

「い、いいじゃないか」

「そうだよピスラさん。うちは気に入ったよ」

「けど…ん? 今、わたしの名前を…」

「違ったかな? ピスラさんだよね?」

「う、うん。あってるけど…」

「そして、こっちがアクアちゃん」

「は、はいです」

「そして晶くん」

「え、あ…うん」

まさかそう呼ばれるとは…。

「これからよろしくね!」


夜遅く…

トルマと契約を交わし、アクアと共に寝静まった頃。

『晶、ちょっといい?』

ピスラが一人、声を送ってきた。

『うん、なに?』

『トルマが仲間になったけどさ、これでどうにかなるかな?』

『うーん…どうとも言えないよね、とりあえず次の休みの日にあの時計台に行ってみようよ』

『そうだね…あのさ』

『なに?』

『…もしもさ…晶の記憶が戻って、前の晶が戻ったら…わたしは…わたし達は、その晶にも見えるのかな…?』

『え…?』

『記憶の精霊のおかげで今の晶と前の晶が一緒になったとしてさ、もう一人の晶はわたしの…わたし達の事は見えるのかなって…もしも前の晶が出てきたら、わたし達と晶の契約ってどうなるんだろうなって…』

『ピ…ピスラ?』

『ご、ごめんね、変な事聞いて…おやすみ』

ピスラは鞄の中に入った。

「……」

そんな事、考えてなかった。確か、最初に記憶の精霊探しをしようと言った時もピスラは心配していた。

でも、自ら打開策を考えて僕に言ってきたのもピスラからだ。

心配してくれているのか…いや、もしかしたら…

…そうだ、まず考えるべき事があったじゃないか、

『わたしは収縮の精霊なの』

収縮の精霊…収縮とは縮める事をさす。

世の中に存在するものには精霊が宿るという。

だからこそ…分からない、

ピスラは何を収縮しているのか、

何故、ピスラは僕の近くにいるのか、



ピスラは…何者なのか。


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