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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
入れ替えの章
11/20

そっくり双子、入れ替わり

南野さんが説明してくれた。彼女の名前は南野 青みなみのあお

南野さんの双子の妹で、僕とも関わりがあったらしい、僕は自らが記憶喪失である事を説明した。

「記憶喪失! へぇ~本当になる人っているんだ~」

「そんなのんきに言える事じゃないのよ、当の本人は大変なんだから」

「あはは…あの、ところで南野さん」

ここで一つ問題が、

「なによ?」

「な~に?」

「あ…こう呼ぶと2人共反応しますよね…」

「じゃあ私達を名前で呼べばいいよ~」

「名前…ですか?」

「うん、名前。私の事は青、お姉ちゃんの事を紅って呼べば万事解決だよ」

「なるほど…確かにそうですね」

「ちょ、ちょっと晶?」

「じゃあ早速呼んでみて」

「はい、青さんと、紅さん」

「うっ…」

「どうかしましたか?」

「べ、別に…なんでも…」

「紅さんって、赤ちゃんを敬ってるように聞こえるよね~」

「うぐ…」

「だ、大丈夫ですか!?」

「ご、ごめん晶、その呼び方は止めて…」

…という訳で、南野さん。青さんと呼ぶ事になった。

「それで、二人はどうしてここに?」

「青が遊びに来たのよ、だからここで待ち合わせしてたの」

「この辺りは久しぶりだな~」

青さんは僕達とは違う学校に行っており、こうして休みを見つけては南野さんに会いに来ているらしい。

「でも…なんで変装を?」

「あ~これの事?」

青さんはバックの中からカツラを取り出して頭に被った。

…うん、こうして見ると全く一緒だ。

「そっくりでしょ?」

「はい」

「えへへ~記憶喪失中とはいえ、中紫さんを騙せたのは嬉しいな~」

「全く…アンタは毎回来る度に手の込んだ事してくるわね」

「毎回、ですか?」

「青はあたしの双子の妹なのを良いことにあたしに成り済ますのよ。剛とか睦黄とか騙せれてばっかり」

「はぁ…」

「でもね、晶だけは違った。いくら成り済ましても絶対に騙されなかったのよ」

「へぇ…そうだったんだ」

「さすがにここまで細かに作ったら騙されると思うんだ。もし記憶が戻ったら教えてね、これでリベンジに来るから」

「はぁ…」

「ところで、晶こそこんな所でなにしてんねよ」

「僕は……あ」

しまった忘れてた。

僕は慌てて上を見た。時計の文字盤の前でピスラとアクアがこちらを見ている。

「どうしたのよ、晶」

「あ、いえ…その…僕も用事があって」

「そう、じゃあ邪魔しちゃ悪いわね」

「とか言っちゃって~本当は一緒にこの辺りを歩きたいな~とか、思っちゃってるんじゃないの~?」

「な、なに言ってんのよ! そんな訳ないじゃない!」

「あはは~お姉ちゃんは本当に分かりやすいな~」

「あーおー?」

「ごめんごめん」

「と、とにかく…僕はこれで…」

「まったね~中紫さ~ん」


『という訳で、精霊は出てこなかったの』

『そうなんだ』

広場を出てしばらく歩いた住宅街、ピスラ達に話を聞いていた。2人は時計に言葉を送り続けていたが、結局返事すら無かったらしい。

『やっぱりわたし達みたいな若輩者じゃダメなのかな、もっと年長の精霊じゃないと話すら聞いてくれないのかも』

『そうなんですか? あの時は話を聞いて下さいましたけど』

『じゃあ、同じ精霊なら聞いてくれるかな?』

『同じ精霊?』

『寿命もあったけど、あの時はアクアと同じ水の精霊どうしだから話を聞いてくれたとする。だからあの時計にいる記憶関連の精霊と同じ記憶関連の精霊を探して話を聞いてもらうようにしてもらうとか』

『それならその記憶関連の精霊に僕の記憶をどうにかしてもらえばいいんじゃないの?』

『あ…そっか』

記憶喪失を治す為に記憶関連の精霊を探しているのに、その為に記憶関連の精霊を探していては堂々巡りになってしまう。

『うーん…じゃあもう一つの方法かな』

『年長の精霊を探すの?』

『それもだけど、似た感じの精霊でもいいと思うの』

『似た感じの精霊?』

『精霊は森羅万象の万物に宿ってるって言ったじゃん? その中でもカテゴリみたいのがあって、アクアみたいな自然物とか、わたしみたいな状態とか、記憶みたいな不可視のものとか』

『じゃあ不可視のものの精霊を見つければいいのか』

『そうなるね…ところで』

『なに?』

『これは今どこに向かってるの?』

『今はね…』

この住宅街は先ほどまでいた商店街と学校の間にある。そして学校の先に寮がありその間にも別の住宅街がある。

今歩いているのは寮、学校間の方で、向かっているのは…、

「ここだよ」

その間にある唯一の横断歩道、僕が引かれたという場所だ。

周りに人の姿が見えないので、声で伝えた。

「ここって…」

「何なんですか?」

「ここはね、僕が車に引かれた場所なんだ」

「えぇ!? く、車に!?」

「アクアには言ってなかったね」

「は、はいです。初めて聞きましたですよ」

「かれこれ一週間前かな、ピスラを見ていたら引かれちゃったんだよ」

「あー、わたしのせいじゃないって言ってたのに、ひどーい」

「ごめんごめん」

「んー、そう考えたら始まりはここだったんだよね」

「うん。ここで僕が車に引かれて、ピスラに会って、そしてアクアに会った。全ての始まりはここなんだ」

「もしかして、何か記憶の手がかりがあるかもしれないと思って?」

「うん。記憶の精霊を探すのも手の内だけど、こうして場所を歩いてみるのも手の一つかなって思って」

「でも…ここほぼ毎日通ってるよね」

「うん…」

確かに登下校の度にここは通っている。でも何も変化は無い

「とりあえず、その時と同じ状況を作ってみようよ」

「おっけー、じゃあわたしは上の方で」

「えっと…私はどうしたらいいでしょうか?」

「アクアは…ちょっと待ってて」

「分かりました」

ピスラは上へ、アクアは横断歩道の向こう側へと行き、僕は信号が変わるのを待ってから横断歩道の中央へ移動した。

そこで上を見上げる、

少し赤みがかった空にピスラが浮かんでいる。

…あの時もこんな感じだったのだろうか?

ピスラを見ていた僕は、この後車に引かれてしまった。

元より車の通りが少ないここの歩行者用信号は自動車用と比べても倍ぐらいの時間がある。さっき変わったからばかりだからまだ時間は…

「晶さん!」

ふいに、アクアの声が聞こえた。

「し、信号が変わりましたです!」

「え!?」

慌てて信号を見ると、確かに歩行者用信号が赤になっていた。

なんで…まだ変わるには早すぎる筈なのに。

「早くこちらへ!」

「う、うん!」

僕は慌てて横断歩道を渡りきった。

「なんでだ…」

改めて歩行者用信号を見ても、赤になっている。

「どうしたの? 晶」

ピスラが上から降りてきた。

「うん、急に信号が変わったからさ」

「え? でもこっちの信号は変わってないよ?」

「え?」

ピスラは僕達がいる方の信号を指差した。それを見ると……青だった。

もう一度向こうを見ると……赤だ。

「おかしい…片方だけ赤だなんて」

「私見ていたんですけど、信号が変わる時に点滅しませんでした」

「故障じゃない?」

「故障にしてもおかしいよ、片方だけが変わってるなんて」

その時だった


…くすくす…あははは…


何かの笑い声が聞こえた。

「この声は…」

「晶にも聞こえた?」

「わ、私も聞こえたです」

「ピスラ達にも聞こえてるという事は…」

僕達は変わっている向こう側の信号を見た。

すると、信号の上に

「あっははは! あの慌てよう、おっかしい~」

お腹を抱えて笑っている精霊がいた。

全体的に明るい黄色がかっていて、髪は首程までの長さ、だが一本だけ重力に逆らうかのように立っている。

「見えた? 晶」

「うん。はっきりと」

「あの方が信号を変えたんですね」

「どうする? 文句言いに行く?」

「落ち着いてよピスラ、別に何も無かったんだし」

「そうだけどさ、もしも何かあったらマズイじゃん。この先あの子が同じ事をして怪我人が出たら大変だよ、注意ぐらいしておこうよ」

「う、うん…」

ピスラの気迫に押された。

本当にそう思っているんだ。僕がピスラを見ていたから、ピスラがそこにいたから僕は引かれてしまった。

もう二度と精霊が関係して人に事故を起こさせたくないと、本気で思っているんだ。

左右を見て車が来ない事を確認してから横断歩道を渡る。歩道に行ってから信号の上を見た。

そこにいる精霊と同じ高さにまで上がったピスラが言う

「そこのあなた」

「ん? あなた誰?」

「わたしは収縮の精霊、今の見てたけど危ないじゃん。今そこを通ったのわたしの契約者なんだよ?」

「契約者? て事はうちも見えてるって事?」

精霊が、下にいる僕を見た。

「あなたは何の精霊?」

「うちは入れ換えの精霊。今みたいに信号の赤と青を入れ換えるなんて朝飯前なのさ」

「朝飯前とかは関係ないの、わたしが言いたいのはそんな事しちゃ危ないって事」

「えー、でももう何度も同じ事やってるけど、困った人なんて一人もいないよ?」

「それは運が良かっただけ、もし同じ事をして誰かが引かれたりしたらどうするの?」

「大丈夫だよ~その辺は分かってるつもりだからさ」

「つもり、じゃなくてもう止めなさい」

「え~なんで~?」

「危ないからよ」

「大丈夫だって~」

「大丈夫じゃないの、はっきり言うけど、この横断歩道ではもう精霊が関わった交通事故が起こってるんだから」

「へぇ~」


ピスラと精霊の口論が続いているようだ。

その時

「よっす、晶」

「あ、剛、黒石も」

剛と黒石が現れた。

「こんなとこで何やってんだ?」

「2人こそ」

「俺は部活帰り、黒石とはそこで会ったんだ」

「俺は買い物帰りだ」

確かに剛は制服で、黒石は手に袋を持っている。

「で、晶はこんなとこで何してたんだ?」

「ちょっと待て、ここってもしかして」

黒石は気づいたようだ。

「あ、そういう事か」

「うん、記憶に関する何かがあるかもと思って」

「なるほどな、それで何か思い出したか?」

「ううん、全然だよ」

「そっか、苦労してんな」

「まぁね、でも楽しい事もあるから辛くはないよ」

「楽しい事? なんだよ?」

「あ…え、えっと…」

「?」

またうかつにも言ってしまいそうになった…あぶないあぶない。

「こ、こうして改めて学校を楽しめる事だよ」

「ふーん、なんだかんだで楽しんでんだな」

「そりゃあ、珍しい経験だからね」

「なるほどな…ん? どうかしたか黒石?」

「……」

黒石は何かを考えているような顔をしていた。

「…黒石?」

「…いや、何でもない」

「?」

その時

『し、晶さーん』

アクアが降りてきた。

『どうしたの?』

『あ、あのお二人の口論が、あ、あぅぅ…』

ああ…居づらい雰囲気だったのか、

『晶』

ピスラも降りてきた。

『あの子かなり意地っ張りで話にならないよ』

『それは大変だね』

『うん…仕方ないから今日は諦めるよ』

『そっか、じゃあそろそろ帰ろっか』

『うん』

『はいです』

「晶?」

「あ、な、何?」

しまった、2人がいたんだ。

「黒石といい晶といい、一体どうしたんだ?」

「何でもないよ、そろそろ帰ろ」

「おぅ」

僕達は横断歩道を渡った。


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