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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
入れ替えの章
10/20

日曜日の出会い


水の精霊、アクアと契約を結んでから早3日、僕が僕になってから一週間が経った。

記憶に関しては、東真さんを助けた所を思い出した…それだけである。

これが早いペースなのか遅いペースなのかは全く分からないが、少しでも記憶が戻ったのだから、それは記憶が戻る可能性があるという事だ。何をすれば良いのか分からないが、地道に自分を思い出していくしかない、と思った。



…という所で、目が覚めた。

「む……」

ここは寮の自室、どうやら机に突っ伏して寝むってしまったらしい。

目をこすり、辺りを見る。

どうやら同室の黒石はいないようだ。

いつの間に外したのか、机の上のメガネをかけた。

「あ、起きた?」

声がした机の上を見る。そこにはピスラとアクアが座っていた。

「おはよう、晶」

「おはようございますです、晶さん」

「おはよう2人共、メガネを外してくれたのって2人?」

「そうだよ、寝るのに眼鏡は邪魔かなって思って」

「そっか、ありがとう」

僕は椅子の背に背中を預けて伸びをした。

今日は日曜日で学校は休み、こういう時僕は何をして過ごしていたんだろうか? とりあえず勉強なんてしてみたが、このざまだ。

恐らく違うと思った。

「んー…さすがは日曜日、暇だね」

「そうですね」

「じゃあこの辺りを歩いてみようよ、もしかしたら珍しい精霊が見つかるかもしれないよ?」

「珍しい精霊か…」

あれから精霊探しも行っている。目標は記憶に関連したものだ、

まぁ…一向に見つからずじまいだけど。

「今日は商店街の方にに行ってみようよ、わたしあの辺りよく見た事ないんだ」

「あ、私もぜひそうしたいです」

「よし、じゃあ行こうか」


寮を出て歩き始める。普段は制服に学生鞄を持って歩く道を私服に手ぶらで歩くのはなんだか新鮮だ。ズボンのポケットに財布と携帯と寮の鍵だけを持ち、携帯にキーホルダーが一つだけついている。

アクアが拠り所としている物だ。

「どう? 精霊見えた?」

ピスラが隣に並び聞く、

「うーん…」

辺りをを見回す。

この辺りは住宅街で人の通りもある、だが精霊は全く見当たらない。

「全然だよ」

「そっかー、やっぱり普通に隠れてるのは見えないんだね、あ、じゃあさ、わたしの友達に会いに行こうよ」

「ピスラの友達?」

「うん。前に話した天気に関連する精霊なんだけど、いつもの所にいるかな…」

とりあえずこっち、とピスラの誘導通りに進んでいると、

「あれぇ~?」

声を聞いた、妙に間延びした声だ。

「この声は…晶、今の聞こえた?」

「うん、あれーってやつだよね」

「そうそれ、あんな声わたしが知る限りあの子だけだから多分この辺りに…」

すると、

「ここだよぉ~」

その間延びした声が僕の上から聞こえた。

上を見ると、一人の精霊が降りてきていた。全体的に白く、ふわふわとした髪の女の子、髪だけでなくその間延びした声から全体的にふわふわした感じがある。

「久しぶり」

「うん~、一週間ぐらいぶりだね~」

この子がピスラの言った友達の精霊だろう。

「あれから何してた?」

「え~とね~雨降らしたりしてたよ~」

「へぇ…あ、そうだ」

ピスラはその子をこちらに向かせた。

「この子がわたしの友達、どう、見える?」

「うん。はっきりと見えるよ」

「あれぇ~? 私この人に見えてるの~?」

「そうなの、それでわたし、実はこの人と契約結んだんだ」

「お~おめでとぉ~」

ぱちぱちと拍手を送られる。全く自分のペースの崩さない子だなと思った。

「とまぁ、自分空間を作りまくりの友達なのよ」

「初めましてぇ~雲の精霊ですぅ」

「は、初めまして…」

完全にあの子のペースに飲まれている…。

「隣も初めましてぇ~」

「は、初めましてです…」

アクアも飲まれている。

「それでぇ~私を探してたみたいだけど~?」

「うん、わたしの契約者の晶はこうして精霊が見える訳なんだけど、もっとよく精霊が見える方法ってないかな?」

「う~ん? それは私に聞かれても分かんないよ~」

「あ、そっか」

「それだけ~?」

「うーん…晶、何かこの子に聞きたい事ない?」

「え…それを僕に聞かれても…」

元よりピスラがここに連れて来たのだ。

「だよね…あ、じゃあ記憶に関連する精霊を見た事ない?」

「記憶~? う~んと~見た事は無いけど~そういう精霊は~多分時計の近くにいると思うよ~」

この子のしゃべり方は妙に眠気を誘うな…。

「時計か…なるほどね、ありがと」

「どぉ~致しましてぇ~」

「という訳で、時計がある場所に行こうよ、晶」

「うん」

「じゃあ~ね~」

雲の精霊はふよふよと上へ浮かんでいった。

ピスラは最後まで調子を崩されなかった、さすがは友達だ。



僕達は商店街に来ていた。一応目的は時計だったが、そんなに急ぐ事じゃないので商店街をぶらぶらする事に。

「時計か…」

「古い方が長く拠り所としている精霊がいると思うよ。それにしてもこの辺りは面白いね、ね、アクア」

「はい~…あ…は、はいです!」

雲の精霊のしゃべり方が少し感染していた。

「ここもよく歩いてた筈なんだけどな」

今は大通りらしい道を歩いている。左右には本屋やら八百屋等が建ち並んでいる、人の通りもあり、多くは買い物客だ。

その通りを抜けると広場のような所に出た。喫茶店やよく分からない店が建っていて通りに比べて人の年齢層が低く見える。よく見れば学校で見た生徒の姿も見られる。

その中、見知った姿を見つけた。南野さんだ。

広場の中央、そこには花壇があり、その中央には時計台が立っている。その花壇に南野さんは寄りかかっていた、恐らく誰かを待っているのだろう。

「あ! 時計台だよ晶、近づいて見てみようよ」

だがピスラの視線はその上の時計台にむいており、一人で時計台へ向かった。

「あ、ちょっと待ってピスラ…」

…と、今は回りに人が多い、これじゃただの独り言に聞こえてしまう。

頭に言葉を思い浮かべる。

『追うよ』

『はいです』

アクアに一声送ってから時計台へと向かう、その頃ピスラは時計台の文字盤近くにまで近づいていた。

花壇の端から上を見て、

『ピスラ』

声を送る…が、届いていないのか返事が無い。

『ピスラさん、聞こえてないのですかね』

『多分ね、悪いんだけどアクア、ピスラを連れてきてくれない?』

『分かりました』

アクアが文字盤へ、ピスラへと近づいていく、

その状態を見ていた。

その時だった、

「あれ? 晶…だよね?」

ふいに声をかけられた。

声の方を向くと、南野さんがいた。

「南野さん、こんにちは」

僕が挨拶すると、

「……」

南野さんは無言のまま横に動き、僕の後ろに移動した。

「南野さん…?」

次の瞬間、

「てぇい!」

「!?」

急に抱きついてきた!

肩から南野さんの腕が伸び頭の上に顎を乗せられる。

「み、南野さん!?」

「うっわー! 久しぶりだねー晶!」

「へ? 久しぶりって…」

金曜日に会ったばかりなんだけど…。

「あれー? もしかしてあたしの事忘れちゃったの?」

「そ、そんな事は…」

「ぷー、ヒドイよ晶」

「あ、あの…」

な、何だろう…南野さんってこんな人だったっけ?

でも姿形も声も髪型も南野さんと同じだ、あの髪型はそうそういないだろう。

もしくは…実はまた記憶喪失になっていて南野さんは本当はこんな人だったのかもしれない。この短期間に二度も記憶喪失になったら困るな…。

でも…この南野さんは変だ。何だか違和感を感じる…。

「うりうり~」

頬を摘まれて縦横に引っ張られる。

「ひゃ、ひゃめてくらはい」

「んー…ん?」

手が離れた。

と思ったら目の前に回ってきて僕の顔に自らの顔を近づけて見てくる。

まるであの時みたいにだ。

その時と同じで、何か甘い香りが……あれ?

何か…違う。甘い香りに変わりはないんだけど、それとは別の甘い香りがする。

「ん~? あなたって本当に晶だよね?」

「…へ? は、はい…」

「ふぅ~ん…でもなーんか違和感があるんだよね~」

「は、はぁ…」

それは僕が記憶喪失になったからじゃ?

「本っ当に晶だよね?」

更に顔が近づいてくる。

「み…南野さん?」

「だったら…あたしの事」

その時だった



 こらーーーー!!



一際大きな声が広場に響き渡った。

南野さんが声のした方を見るので、僕もそちらを向いた。

そこで凄いものを見た。

そこにいたのは……南野さんだった。今僕のすぐ近くにいる筈の人だったのだ。

「え…あれ? 南野…さん? でも…だって…」

僕は前を見る、そこにも確かに南野さんがいる。

でも声がした方を見ても、そこにも南野さんがいる。

2人の南野さんを交互に見てみる。髪型は全く一緒だが、身に付けている服は違った。

「アンタは一体何してんのよ!」

遠くにいる南野さんが言う。

「え~だって久しぶりに晶に会ったんだもん。きっとこうなるな~って思ってこうしてたんだもん」

近くの南野さんが答える。

「ならないわよ!」

あ、多分あっちが本物だ。

その南野さんがこちらに近づいてくる。僕は近くの南野さんから少し離れて聞いてみる。

「あなたは一体誰ですか?」

「誰かって…晶言ってたよね、南野さんって」

「は、はい…」

「その通りだよ、あたしは南野さんだよ」

「え? でもあっちは…」

「いい加減にしなさい!」

南野さんが僕らの隣にまで来た。すると目の前の南野さんが、

「はーい。ちぇ~やっと中紫さんが騙せたと思ったんだけどな~」

などと言いながら頭に手をかけた。

次の瞬間、

「!?」

ずるりと髪の毛が外れた。

「ふぅ…さすがに暑いね」

そこには南野さんと同じ顔をした、長い髪を左側で一纏めにした女の子がいた。

「全く…もう…」

「じゃあ改めて久しぶり、お姉ちゃん」



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