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僕と記憶とメガネと精霊と  作者: 風紙文
始まりの章
1/20

出会いは病室で

初の連載小説。お楽しみいただければ幸いです。

…気がついたらベッドの上でした。

薬みたいな匂いでここが病院だとは分かりましたが、何があったのか…そして何でこんな所に居るのか。それは分からなかった。

自分の事は…うん。分かる。急に倒れたのだろうか?

でも…何かがあったからここに居るんだろう。

「・・・・・・」

誰かの声が聞こえた。お医者さんか、看護婦さんのかどちらかだろう。

「・・・・・・」

この際どっちでもいいから、自分に何があったか聞こう。

僕は起き上がり前を見た。

そこには、誰もいなかった

「・・・かな・」

でも声はする。

「…誰か居るの?」

声に対して聞いてみる。

「え? わたしの事…分かるの?」

返事が来た。

「声は聞こえるけど…姿は見えない」

「ありゃ、それじゃ声が聞こえてもダメだよ。多分そこにあるのをかければいいんじゃないの?」

「え…?」

僕は辺りを見回す、すると机の上に眼鏡を見つけた。手を伸ばして取り、眼鏡をかけてみる。

…特に変わりは…。

「!」

あった…。眼鏡をかける前にはいなかったそれが、目の前にいた。

「どう? 見えるようになった?」

な…なんだ…コレは?

目の前には人の姿をした…長く後ろで一結びにされた髪の…十五センチ位の女の子がそこに浮いていた。

「じゃあ改めて、初めまして」

女の子はぺこりと頭を下げた。

「あ、初めまして…」

反射的に頭を下げ返す。

「体の方はどう?」

「え…」

そういえば今、僕は病院にいるんだ。だったら体に何かあったのかもしれない…でも、

「特に何ともないけど…」

「そっか、なら良かった」

「あの…」

「なに?」

「僕に何があったの? どうして僕は病院にいるの?」

「ありゃ、そっちに異常があるのか」

「何か知ってるの?」

「うん、君はね…」

その時

ガチャリ

病室の扉が開き、一人の人が入ってきた。

そちらを一度見てから、再び正面を向くと、

「あれ?」

女の子はいなくなっていた。

「…?」

辺りを見回すが見当たらず、

「どうかしたか? 中紫」

入ってきた人に名前を呼ばれた。

「あ…えっと…」

その人は白衣を着ていた、という事は…。

「何でもないです、お医者さん」

「お? …はぁ…やっぱりか」

「?」

その人は頭を押さえた。黒髪の女の人だ。

「お前、名前は言えるか? フルネームで」

「は、はい。中紫 晶(なかむらさき しょう)…」

「年齢は?」

「16です」

「年組番号」

「2年B組の17番…」

「特技は?」

「えっと……」

「この辺りか…」

「あの…僕は一体…」

「簡単に言えば、お前は車に引かれたんだ」

「!」

「それを発見されて、救急車で運ばれた」

「そうだったんですか…」

「だが、運良く体に怪我は全く無いんだ」

「はぁ…」

「だがな…その際に頭を強く打ってちょっとした記憶喪失になってしまったんだ。今聞いたみたいに所々忘れているだけだが、まぁ生活に支障は無いだろ」

「あの…所であなたは…」

「忘れているなら仕方ない、私はお前のクラスを持つ担任だ。普段のお前なら石榴先生と呼ぶ」

担任の先生だったのか。

「とにかく、今日はこの病室に泊まれ、既に手続きは済んでるから」

「ありがとうございます」

「明日には退院できるだろう。その時は誰か迎えをよこすからな、じゃ」

石榴先生はそれだけ言うと病室を出ていった


時間は19時23分

外は既に暗く、ベッドから出て明かりをつけた。

改めて体を動かす為に軽く準備体操の真似事をしてみる。特に体に異常はないようだ。

だったらベッドで寝ているのは体に悪いと思い、ベッドに腰かけた。

「もう大丈夫なんだ」

不意に、ベッドの下から声が聞こえた。

その声と同時に先ほど見えなくなった女の子が再び僕の目の前に現れた。

「うわぁ!?」

急な事に驚きの声を上げる。

「うひゃあ!?」

女の子もそれに驚き声を上げた。

「もぉー、急におっきな声出さないでよ、びっくりしたじゃん」

「ご、ごめんなさい…」

反射的に謝ってしまう。

「いやいや、よく考えたらわたしが急に出てきたのが悪いんだから、むしろわたしの方こそごめんなさい。ところで、さっき来た人に大体は聞いたよね?」

「石榴先生…だっけ、うん。僕は車に引かれたって」

「それが大体の話、じゃあ何で車に引かれたかは知ってる?」

「そこまでは…」

「じゃあそこからはわたしが話すね」

「その前に、一つ聞いていいかな?」

「なに?」

「君は…何者なの?」

「わたし? わたしはね…」

「うん…」

「まぁ、簡単に言えば…」

「うん…」

「……」

「……」

何故か沈黙。

「どうしたの?」

「いや…うん、大丈夫…だよね…まず見えるってのが重要だし…」

後に行くほど声が小さくなり聞き取れなくなる。

「あの…」

「ああ、ごめん。わたしはね、簡単に言えば精霊なの。分かる? 精霊」

「精霊…」

確か…草木・動物・人や無生物等の個々に宿っているとされる超自然的な存在。と、辞書に書かれていたのを読んだ気がする。

それはつまり、ここにあるあらゆる物には精霊がいるという事で、この女の子が精霊だというならここにある物の何かの精霊だという事になる。けど問題は…、

「その精霊が、今の僕には見えてるって事?」

「そうなるね、でも居るんだよねたまに、精霊が見える人ってさ」

「はぁ…」

「でも君の場合は、その眼鏡を通してだけ見えるみたいだね」

「え…」

僕は眼鏡を外してみた。

すると、目の前にいた精霊の女の子が見えなくなった。 

「わたしは動いてないよ」

声は聞こえるみたいだ。

改めてメガネをかける。

その時、ふと前を見ると、

「あ…」

洗面台があり、その上についている鏡にあの女の子が映っていた。

「ん? あー、もしかして見えてる?」

鏡の中の女の子がこちらに手を振っている。

「うん」

「普通なら鏡には写らないはずなんだけどなー、きっと君が凄いんだね」

「僕が?」

「鏡とかメガネとか、何かを通せばわたし達が見えるようになるんだよ、きっと」

「そうなんだ…今まで知らなかったな」

「ひょっとしたら、今になって開花した能力なんじゃないかな?」

「今になって?」

「車に引かれた時に頭の中で何かが変わったんだよ、それでその能力が開花したんだと思うよ」

「車に引かれて…と。そうだった、君は僕が車に引かれた時の事知ってるんだよね?」

「うん。そこに居たから」

「聞かせてよ、どうして僕が車に引かれたか」

「オッケー、というか元からその為にここに来たんだよね」


下校途中…

一人歩いていた彼は横断歩道へと差し掛かっていた。全寮制である高校に通う彼、いや生徒全員が必ず寮へ帰る際に渡らなくてはいけない唯一の横断歩道だ。元より車の通りは少ない上、今の時間ここを通る車は10分に1台ぐらいの確率だった。彼は学校での用を済ませてからの帰宅だったので周りに他の生徒はいない、つまりは静かな道が出来上がっていた。

彼は横断歩道に乗った。

左右から車が来る気配など一切なくのんびりと歩いた。

その時、ふと上を見た。

そこで見えたものに彼は目移りした。

結果、後ろから近づく車の気配に気づかなかった。


「その彼ってのが君で、見えたものってのがわたし」

「そうだったんだ…」

何故僕がここにいるのかがこうして分かった。だが…今までの話をまとめてみると、何か矛盾を覚える。

でも、何処がという細かな所までは判断できない。

「という訳で…ごめんなさい…わたしがあんな所でふよふよ浮いてたから君は車に引かれたの。あの時はね、友達に会いに行く為にそこに居たんだけど、まさかわたしが見えるだなんて思いもしなかったから…」

女の子の顔が暗くなった。

「いいよ、気にしないで、僕が横断歩道で立ち止まってたのがいけないんだし」

「…そう?」

上目遣いで聞いてくる。

「うん。別に気にしてないからさ、暗い顔しないで」

「うん…ありがとう、やさしいんだね、君って」

「そんな事ないよ」

すると女の子は何かを考えるように手を顎の下に置き、すぐにこちらを向いた。

「…うん。君とだったら、わたし…契約してもいいかな」

「契約?」

「精霊はね、その姿が見える人と契約する事で、精霊の力、今ならわたしの力がその契約者の指示で使えたり、力がアップしたりするの。でも条件が厳しくてね、互いに契約を結びたいと思う事と、契約を結んだ精霊は契約者から離れる事ができなくなる事なんだ……でもわたしはもう準備オッケーだし、君と契約を結びたいと思ってる…後は…君次第だよ?」

「僕…次第…?」

「ねぇ…せめてもの罪滅ぼしとして、わたしは君の役に立ちたいの…だからお願い…わたしと契約…結んで?」

「……」

いくら罪滅ぼしとは言っても、その為だけに自らの行動を制限するなんて…。

そんな子の思いを、無駄になんかできる訳がない。

「…うん。分かった」

「ありがと、じゃあそのままでいて、わたしがリードするから」

女の子は僕の頭の位置まで浮き上がり、こちらを近づいてきた。

「目を閉じて」

言われるがまま目を閉じると、額に何かが触れた。

「…我、この者を契約者として認識する。我は収縮の精霊…」

目を閉じているので声がよく聞こえる。多分これが契約の儀式みたいなものなのだろう。

「ん、もう開けていいよ」

目を開けて前を見る。

「…これで良いの?」

「うん、契約完了。結構簡単に終わったね、もっとこう派手に光がピカーンとか風がぶわぁーとか起こると思ってたんだけどな」

思ってた?

「って事は、契約するの初めてなの?」

「うん、というか一生の内に契約できる人数って一人だけって決まりなんだよ」

「え…という事は…」

「わたしの最初で、最後の契約だったの」

「そんな…そんな大事な事を…」

自らの罪滅ぼしの為に…。

「大丈夫だよ、わたしもあの場所からここに来た時に決心はついてたし、後悔はしてないよ。それともホントはわたしと契約するの嫌だった?」

「そ、そんな事は…」

「じゃあオッケーだよ、では改めて、これからよろしくお願いします。わたしの契約者さん」

「う、うん…ところでさ」

「なに?」

「その…契約者さんって呼び方は、何だか恥ずかしいな」

「じゃあ、下の名前で呼んでもいいかな?」

「うん、別にいいよ」

「それじゃあ、これからよろしく、晶」

「うん、よろしく…えっと、君の名前は何?」

「名前はね、無いの」

「え…」

「わたし達精霊はね、契約を結んだ契約者が名前をつけるならつける。つけないならつけないで済むの、だから名前は無いの」

「そうなんだ…」

「だからさ、好きに呼んでもらって構わないよ」

「えっと…」

そう言われると困るな…。

何かの名前をつける時に僕は普段どうしていたんだろう。思い出せない。かといって簡単につけてしまうのは悪い気がする…。

どうしよう……あ、そうだ。

「じゃあ…ピスラ」

「ピスラ?」

「ラピスラズリっていう宝石があるんだけど」

「そのピスラなんだね、うん。いい名前をありがとう」

「どういたしまして」

こうして僕は精霊の女の子ピスラと出会った。


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