第六抄:創世記――双頭の龍とユグドラシルの目覚め
ミカエルが語る、真実の創世記。その声はユグドラシルの震えとなってアダパーの脳内に直接流れ込んだ。 時も空間も存在しない無限の太古。龍神天君と地神天君は、一対の赤い帯のような龍として、虚空を漂っていた。彼らは、果ての時空から逃れてきた、生命意識の最後の生き残りであった。
やがて、ある幼き銀河に吸い込まれた彼らの意識が「光あれ、光たるべし」と念じた瞬間、銀河全体が振動し、大いなる輝きを放った。彼らを保護していたカプセルが種子となり、そこから芽生えたのがユグドラシルである。 「長い旅の従者ユグドラシルが、わが主をお迎えいたします。私は、主とその種族の遺伝子記憶を守る守護者……」
ユグドラシルの意識は、二人の龍をその根塊に取り込み、銀河全体の生命意識を統合した。 だが、ミカエルは疑念を捨てきれない。 「大宇宙の創造神エルシャダイとルシファー。それは善悪ではなく、陽と陰、光と影の一体不可分な存在だ。もとは一つの存在が、進化という目的のために二つに分かれ、このユグドラシルというシミュレーターの中で葛藤を繰り返しているのではないか? 多様性を生むための、大いなる一人芝居。それがこの宇宙の正体だとしたら、我々の苦しみもまた、一つの情報の輝きに過ぎない」
ミカエルは、かつて自分の分霊を三人の人間に転送し、この世界の正体を探らせたことがあるという。 「一人は、理を極めたギリシャの賢者。一人は、愛に殉じた聖者。一人は、空を見つめた東方の導師だ。彼らの見た景色が、この銀河の真の調和の鍵となる。アダパー、お前もいつか、その答えを知ることになるだろう」




