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第六章 家族
気づいた時、俺は元妻の家の前に立っていた。
離婚してからまだ数日。
合鍵はもうない。
インターホンを押す。
数秒後。
ドアが開く。
妻だった。
少し痩せて見えた。
俺は言う。
「俺だよ」
妻は眉をひそめた。
「……?」
「何してんだよ。急に」
妻は困った顔をする。
「すみません」
その一言で、胸の奥がざわついた。
「どちら様ですか?」
頭が真っ白になる。
「……は?」
俺は笑おうとした。
冗談だろ。
「おい、やめろよ」
妻は不安そうに後ろを見る。
その時。
奥から小さな足音。
子供が出てきた。
俺は思わず声を上げる。
「おい」
子供を見る。
あの小さな顔。
毎日見ていた顔。
妻が子供に聞く。
「この人知ってる?」
子供は俺を見る。
数秒。
首をかしげた。
そして言う。
「ママ、この人だれ?」
その瞬間、世界の音が消えた。




