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第五章 消える
会社を出たあと、俺はコンビニに入った。
店内はいつも通りだった。
レジの店員。
立ち読みしている学生。
弁当コーナー。
全部普通。
だが――
俺だけが普通じゃない。
俺はレジに商品を置いた。
「これお願いします」
店員は動かない。
もう一度言う。
「すみません」
反応はない。
店員は次の客の会計を始めた。
まるで俺がそこにいないかのように。
背中が冷たくなる。
俺はスマホを取り出した。
SNSを開く。
自分のアカウントを確認する。
フォロワー数。
投稿。
全部あるはずだった。
だが。
画面に表示されたのは――
「このユーザーは存在しません」
「……は?」
俺は検索をかける。
自分の名前。
ヒットしない。
過去の写真も。
メッセージも。
全部消えていた。
まるで最初から存在しなかったみたいに。
その時、頭の中にあの映像がよぎる。
走馬灯。
そして――
俺を見ていない人間たち。
胸の奥が、ゆっくり冷えていった。




