第三章 違和感
映像の中の人間たちが、少しずつ俺を見ていない。
最初は気のせいだと思った。
子供の頃の映像。
公園でボールを蹴っている俺。
ベンチに座る母親。
遠くでタバコを吸っている父親。
だが、母親の視線はどこか違う場所を見ている。
俺を見ていない。
次の映像。
高校の文化祭。
クラスメイトたちが笑っている。
だが――
俺の横にいるはずの友達が、俺ではなく空間に話しかけている。
まるでそこに誰もいないかのように。
「……なんだこれ」
思わず呟く。
次の映像が流れる。
結婚式。
白いドレスの妻。
誓いの言葉。
拍手。
だが、映像の中の妻は、俺の目を見ていない。
少し横。
まるで、そこにいるはずの誰かがいないみたいに。
胸の奥がざわつく。
次の映像。
病院。
子供が生まれた日。
小さな手。
看護師が笑っている。
妻が泣いている。
だが――
そこにいるはずの俺が、どこにもいない。
「……は?」
思わずスマホを落としそうになる。
画面が暗くなる。
映像は終わった。
部屋は静かだった。
テレビの音だけが流れている。
俺はしばらく動けなかった。
「……夢か?」
スマホを見る。
さっきのリンクを開こうとする。
だが。
リンクは消えていた。
投稿もない。
動画もない。
最初から存在しなかったみたいに。
「……なんだよ」
俺は苦笑する。
酒のせいかもしれない。
そう思って、缶ビールを飲み干す。
その夜は、そのまま寝た。
だが――
違和感は、翌朝から始まった。




