第8話 空からこぼれたストーリー
新年あけましておめでとうございます。
題名はダ・カーポの曲です。小学生の頃、アニメ名探偵ホームズをよく見てました。
ちょうどユーチューブで聞いていたので強引に決めました。
「今日はこの子たちを紹介しますね」
岩佐歩は20歳になった。現在は大学生になっている。母校の火陽高校の学園祭にゲストで来ていた。Vチューバー、玄姫やすむとしてだ。
控室の教室で歩は待機していた。他にもゲストの人間も来ている。声をかけたのは3年生の泉香菜だ。黒髪のポニーテールで眉は太く活発そうに見える。ピンク色のバニースーツを着ていた。彼女のクラスはバニー喫茶だという。
香菜が紹介したのは4人の女子生徒だ。全員黒いシャツと青いズボンを履いている。
一人はドレッドヘアで褐色肌の女性だ。ゴリラのようで180センチは超えている。ジャマイカ人のハーフで、中野・マーガレット・愛生と名乗った。シャツにはハートのクイーンがプリントしてある。
もう一人はひょろ長い慎重にわかめのような髪で目が隠れている。青白い肌でまるで幽鬼だ。在日韓国三世で、河合美菜子という。本名は河美那というらしい。
次は銀髪で肌の白い熊のような女性だ。愛生より身体が大きく、ボディビルダーのように肉が発達している。彼女は日本に帰化したロシア人で、末吉聡美という名前に改名したそうだ。ロシアではエカテリーナ・セルゲイエヴナ・スミロフスカヤというらしい。日本語が苦手だそうだ。よく帰化できたものである。シャツにはくまのぬいぐるみがプリントされていた。
最後に銀髪のおかっぱで鷲のような鼻に眼鏡をかけている。肥満体で全体的に丸い。まるでフクロウだ。
佐和田・フリーダ・陽子という。こちらはシャツに髑髏のマークがあった。
「この子たちは一年生で私が中学生時代に知り合ったんです。今はバンドをやっているんですよ」
「あたいらは音楽で自己表現しているんですよ」
香菜が紹介すると愛生が前に出て、歩と握手した。かなりごつく、男のような手だ。唇が分厚く、見る者を圧巻させた。
「まあ、中学時代外国人の血が混じってて、それで無視されたのがムカつきましてね」
「ハーフって言われたのが傷ついたの?」
歩が訊ねた。玄姫やすむの時はギャルっぽくふるまうが、今は普通に話している。
「別に気にしてない。教師どもがうるさいんだ。それで周りが関わらないようにしているんだ」
美菜子が吐き捨てるように言った。
「ハーフ、ドウデモイイ!!」
聡美も吼えるように叫んだ。本人はハーフなど気にしないのに、教師たちがうるさいのだ。それで他の親たちが自分の子供が傷つかないように、愛生たちと関わらないよう言い含めているのだろう。この手の差別は本人は気にしないのに、周りが勝手に盛り上がるのだ。彼女たちは差別に苦しめられていない。差別を否定する人間に振り回されているのだ。ここではあまり言われないらしい。個人の自由という名目で無視しているのだ。
歩も性同一性障害のせいで小学校時代は孤独を味わっていた。中学時代では烏丸りあ以外友達がいなかったが。高校時代は玄姫やすむを演じており、それなりに人気はあったが心を許せる友達はいなかった。
「泉先輩は強い!! わたしら全員蹴り一発でのされた!!」
陽子がフクロウのように首を回転させながら言った。彼女の首の骨は通常より多く、比較的自由に回せるのだ。
歩はそれを聞いて納得した。香菜は見た目と違い、喧嘩が強い。両親は片足棺桶というお笑い芸人だが、ボディビルに心血を注いでいた。そのためか骨密度が高く、鉄棒のように固いらしい。
歩が中学三年生の頃、一年生の香菜と一緒に帰宅したことがあった。夜遅く人気のいない住宅街で、品のない三人組の男に囲まれた。彼らは一人で帰宅する女子生徒を拉致しては暴行して楽しむ人間のクズだった。
だが香菜が殴ろうとした男の拳を躱し、腕をへし折った。さらに飛びひざ蹴りで男の顎を砕き、最後の男の金的を蹴り飛ばしたのだ。
香菜は警察に連絡し、救急車を呼んだ。歩も付き添いについていったが、事態は急変した。
香菜の両親が彼女を迎えに来たが、警察は香菜は喧嘩して倒れた三人組を発見し、混乱して自分がやったと思い込んだ。彼らは麻薬中毒者で精神に異常をきたしていたらしく、搬送した病院で死亡が確認されたという。
香菜はキツネにつままれた気分になったが、香菜の両親曰く、演歌歌手の横川尚美の力だという。彼女の弟子は芸能界に大成できなくても警察学校に入学し、警官になったそうだ。そして権力を持つ同僚と結婚したという。現在では警察庁の幹部が巣食っており、尚美が犯罪に巻き込まれたときだけ便宜を図っているそうだ。香菜の両親は尚美と同じジムに通っており、30年近くの縁がある。香菜も尚美とクリスマスや正月に会っていた。香菜が事件に巻き込まれたので、事件をもみ消されたのだ。代わりに三人組の男は麻薬中毒者扱いされて消されたのである。
歩の友人である烏丸りあはそれを聞いても平然としていた。さすがに悪用した者には制裁を加えるらしい。
香菜はそれ以降、相手が復讐する気が起きなくなるよう、徹底的に潰すことにした。両親も下手に手加減すれば余計な復讐を生むと教えたそうだ。普通の家庭ではありえないことだと歩は思った。
「私に何をしろっていうの? ムジナックスでは使えないよ」
歩が所属する事務所、ムジナックスは多くのVチューバーを抱えていた。テレビよりもネット配信が主だ。愛生たちはアイドルに見えない。話術が得意とも思えなかった。
「今すぐでなくてもいいんですよ。先輩の番組にゲストとして出演させてほしいんです。この子たちの音楽はすごいんですよ」
香菜が説明した。彼女たちはすべてにおいてファックユーというバンドを組んでいるらしい。香菜が所属する蒼井企画から借りた楽器を使わせていた。中学時代からネット配信をしているそうだ。
歩がスマホをいじると、彼女らの動画が出てきた。
『イスラブラジェーニャ!! イスラブラジェーニャ!! モチャー、モチャー、モチャー!!』
聡美がドラムを叩きながら叫んでいた。イスラブラジェーニャはロシア語で大便で、モチャーは小便という意味だ。ひたすら下ネタを連発する曲だが力強さがあった。もっとも学校ではぎりぎりらしい。日本語でうんこやおしっこを連発するのはまずいのだ。
4人がそれぞれの国の言葉で歌うことがある。下ネタでも言葉が違えば違って聴こえるのだ。
「うん、勢いがあるね。今はまだ経験を積むのが大事だね」
「ありがとうございます!!」
歩が褒めると香菜は頭を下げた。愛生たちも満足そうである。
歩は外を見た。下では生徒たちが作った屋台が並び、生徒たちと父母たちでにぎわっていた。空は青く、喧騒とは無縁だ。自分たちはどこか異形だ。香菜は普通に見えるが精神が普通じゃない。まだ30も年上の中年男性に恋をしていた。
自分たちは空からこぼれた人でなしだ。そのストーリーは誰にもわからない。
すべてにおいてファックユーは高校を卒業した後、独立した秋本美咲の個人事務所、セイレーンに所属するのだが、彼女たちは知る由もなかった。
すべてにおいてファックユーのメンバーと香菜は最初から絡んでたわけではないです。
一応彼女らは高校卒業した後に、セイレーンに所属しており、香菜と2年年下の後輩にしました。
香菜が喧嘩強いのは後付けです。モデルは漫画ブルーウルススの天木ふみ奈です。
河井美菜子と末吉聡美の本名はヤフーのAIアシスタントで作りました。
あと気づいたのですが、すべてにおいてファックユーの歌は漫画の出とロイド・メタル・シティの影響があると思いました。




