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第4話 勝手にしやがれ

 題名は沢田研二の勝手にしやがれです。

「初めまして、奥迫未夢おくさこ みむです」


 わかめ髪で目が隠れている地味な女子生徒が挨拶した。ここは公立火陽かよう高校で芸能科のある学校だ。有名芸能人を輩出して学校自体が有名になりたいのだ。もっとも近年は学校を休むのはまれで土日に活動しているので生徒の数はそれなりである。ここは校内にある文芸部の一室だ。本棚と電子ポット、テーブルにパイプ椅子などが置いてあった。テーブルにはノートパソコンが置いてあり、下にはスポーツバッグが置かれていた。

 壁にはなぜかピンク色の布が貼られていた。


 岩佐歩いわさ あゆむ烏丸からすまりあは芸能活動のためここに入学した。りあの母親は学校に通うより本格的に芸能活動をしてもらいたかったが、居候先の北村克子きたむら かつこの口車に乗り渋々認めたのだ。

 制服は紺のブレザーで、今流行りのジェンダーフリーを取り入れている。流行に後れるわけにはいかないからだ。歩も女子の制服を切れて満足だった。ちなみにこの学校に入学したのは歩とりあだけだ。周りは知らない人だらけ、しかもりあの悪評を信じている人間ばかりである。歩はりあの子分として扱われいじめられている設定にした。これは歩が望んだことである。

 りあの複雑な家庭事情を組んでいるのだ。りあはそれを心苦しく思い、SNSで謝罪していた。


 未夢は二年生で文芸部の部長だ。二年で部長ということは、部員は彼女だけである。今時の若者はネットで小説を読むので、わざわざ本を買う人はいない。未夢はそれに反発して本の虫として過ごしていた。

 火陽高校では全員部活動をしなくてはならず、二人は誰もいないこの部に入部することに決めたのである。


「初めまして一年の岩佐歩です」

「同じく一年の烏丸りあです」


 二人はぺこりと頭を下げた。


「……烏丸さんて噂と違いますね。演技の鎧を身にまとったヴァルキリーでしょうか。オオカミの皮をかぶったシスターとでも言いましょうか」


 未夢がするどく問うた。地味に見えてなかなか鋭い。


「岩佐さんも知ってますよ。ワイチューブでよく観てましたから」

「アハハ……、知る人ぞ知る動画だけどね」


 歩は苦笑いを浮かべた。


「ここでの出来事は一切他言無用です。いいですね?」


 未夢が念を押した。どことなく迫力があり、歩とりあは無言で肯定した。


「まあ、人に迷惑をかけなければ、勝手にしやがれって感じですね」


 未夢が言った。地味に見えて実際は熱い情熱を宿しているようだ。


「さて今日は私の活動を見ていただきましょう。今から着替えます」


 すると未夢は服を脱ぎだした。ボインと大きな乳房が零れ落ちる。着やせするタイプなのだろう。


「先輩、いったい何を!!」

「活動の一環です。あなたは女子生徒なんだから女性の着替えを見ても興奮しないでしょう?」

「興奮はしなくても驚きますよ!!」


 歩は抗議したが未夢は無視して着替えを続ける。パンストと網タイツを履き、白いバニースーツを着てバニーガールになった。化粧をすると全く別人になった。きりっとした目つきが特徴的だ。

 未夢はノートパソコンを立ち上げ、カメラを設置した。歩はそれを見てはっとなった。


「あなたはワイチューバー、稲葉いなばニーさん!! まさかここの生徒だったなんて!!」

「体つきと雰囲気は大人びていたからね。気づくわけないわ……」


 歩とりあは有名ワイチューバと出会って驚いていた。


「先輩って芸能科なんですか?」

「そうよ。蒼井あおい企画に所属しているわ」


 それを聞いて歩は驚いた。蒼井企画は後輩の泉香菜の両親が所属しているお笑い芸能事務所だ。

 有名なのはたいら小平こだいらや、ホワイトエンジェルというのがある。テレビにはほとんど出ないがサスペンスドラマでは脇役としてよく出ていた。香菜が恋する伴裕貴もサスペンスドラマの犯人として出演し、何十人も人を殺している。


「私はね漫才コンビのバニラアイスが好きなのよ。バニーが好きでバニーになった偉大な人よ。三年生の多田優おおた まさるさんはバスケット部だけど同じくバニーが好きで私と同じ事務所なのよ」


 歩は唖然となった。りあも意外そうな顔であった。


「それが先輩の本当の姿ですか?」

「違うわよ」


 未夢はあっさり否定した。


「私は動画の中で演じているだけ。まあ人生は誰でも演じているわ。金持ちも貧乏人もね。幸福だけ不幸だけの人生なんてないのよ。自分の人生は自分でなんとかしないとね」


 未夢はしみじみといった。彼女は父親が離婚して、母親が新たに再婚した。再婚相手は未夢を女として見ており、いつ襲われるかわからなかった。彼女は地味な装いをして義父の目をそらしたという。

 今は蒼井企画に所属し5歳年上の立井友希たちい ゆきの元で居候している。母親は邪魔な娘が消えて嬉しそうだという。


 それを聞いた歩は自分がどれほど恵まれているか愕然となった。性同一障害を患っているが家族や学校の理解があった。兄の康には好きだからという理由で押し通している。恋心を知られたくないからだ。

 りあも家庭の事情があり、香菜には10歳を超える前に夭折した兄たちがおり、昔から香菜も10歳まで生きられないと親戚から陰口を言われたそうだ。今では10歳の峠を越えたので、親戚は苦虫を潰した顔になったという。


 さて未夢は懐かしい携帯ゲーム機の実況を30分ほど放送していた。リアクションが面白く、歩とりあは無言で見入っていた。


 後で聞くと未夢が稲葉ニーであることは周知の事実だったという。普段は地味だがバニーになるとすごくなるギャップが受けているそうだ。芸能科があるだけに気を使う生徒が多いのだ。


 歩は康の恋心を止めることをやめた。文句を言うやつは勝手にしやがれと思った。

 奥迫未夢はバニーレンジャーの一人です。23歳で歩と一歳年下ですね。

 登場しませんでしたが、多田優と立井友希も名前を出しました。

 このシリーズではなるべく新キャラを出さず、セイレーンのキャラを出すことにしてます。

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