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ジェミニ-双子座の隣人

人類と遺伝子上 0.5%の違いで、身体によつ葉の異所性蒙古斑とそれらを消せる"擬態"を持って生まれた新ジン類____彼らは、ラテン語の双子座になぞった

【ジェミニ】という呼称のもと、共存する平和な世界に生きている。


 一部を除いて……



『その一部は、我が国 日本において擬態を生活から犯罪へと活かす場を変え

「喰人文化」に起因する事件への関与が後を経たなかった。

全国行方不明者届受理数 9万6,000人台の統計結果が出るほどの当時の現状は、新たな行政機関誕生を後押しした。こうして監督管轄を警察庁から保安庁へと移管し、1981年 特殊保安組織 Uranusが誕生したのである。』


――2099年 法務省統計法務研究所発刊 全犯罪白書より――




♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢





2099年 春____特殊保安組織(とくしゅほあんそしき) Uranus(ウラヌス) が記者会見を開いた。三日月と芝桜がモチーフの組織章の前に、深紅の制服が1名。



「新年度が始まる来月の4月3日より、新たな体制で運営します事を国民の皆様へお知らせいたします」


「その目的は?

前々から掲げてた『働き方改革』ですか?」

 

 間髪入れない質問にホクロある口元が前を向く……真紅の制服の正体は若い女性で、黒髪に濃いピンクのインナーカラーした頭が揺れた。同色の瞳が記者を見つめ「はい! そうです」きっぱりと言う。

その姿が報道カメラで抜かれるとTV上のリアルタイム実況が急加速した。


『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!!!』

『今年も新年度指針会見がやってまいりました』

『保安総監さまキターーッ!!!!』


盛り上がりのその下で質疑応答が続く。


「この新設は、G事案を含めた初動を担う直属部

特命巡視捜査隊とくめいじゅんしそうさたい】が対象です。対象都道府県を北海道・宮城・東京」


『専任の隊もう1つ増やす???』

『←←ヒント:オリンピック』

『しっかし肌が綺麗すぎる』

『本当にな。迦利屋(かりや)総監って可愛いってより美人』

『髪もトゥルトゥルうらやま〜 (´;ω;`)』

『wwおまえらさぁwwwwww』


 

 

「……ウチの上司は相変わらずモテるなぁ」



 TVに向かってこう呟き、コップの水を飲み干すと時計を見て、ICカードを引っ掴んで自宅の官舎マンションを出た。

 紫黒色したサイドテールがご近所の商店街を小花柄スカーチョで風吹く地下空間エスカレーター横の階段を急ぎ駆け降りてく。鞄にしまったさっきのICカードの中身は、「毘乃木(ひのぎ)沙与(さよ):保安官. 特命巡視捜査隊所属 」____それが私の名前と職業と務め。


「セーフッ!!あと2分遅かったら確実に乗り遅、れ」


 ここまで言っといて、顔と紫の瞳を上げるのが固まってしまったのは向かいのデジタル広告が大好きな魔法少女アニメだったから。

 思わずスクリーンショット保存したくなる。小さい頃からずーっと、本当にずっと好きで……その証に主人公とお揃い水色シュシュが私の左肩で揺れてる。


「うん楽しみッ。

新しい魔宝石騎士(マジュエルナイト)はマジュベリルの娘ちゃんが主人公で、このシュシュ譲ってもらうんだもんねぇ〜! 日曜日リアタイ」


「おはよ、毘乃木」


「ぅわぁッッ!!!!!!」

 

 大きい声出してごめんなさい……先輩。待って?

スクショ見られてないよね!? だってこの推し活は社会人16歳の秘密なんだよぉ〜…………世の保安官という公務員へのイメージもあるし。ホントに岡本(おかもと)先輩やめてくださいッ!



「なんやね〜ん。もう2週間後にゃお互いバディじゃなくなるのにひゃっこいわぁ……さっきなんか撮ってたやろ? 何何? ぇ?

あ〜あの俳優ね。好きよね〜今の女子はみーんな青柳竜生(あおやぎりゅうせい)くん好きやんな」


いやぁ、そうと限んないと思いますよ。 私みたいに他ジャンル夢中な子もいますし。とにかく見られてなくて良かった。

 私はもう一度、高身長188cmのグレージュ髪した先輩を見た___岡本(おかもと) 庄司(しょうじ)

保安官でこの春 新設される()()巡視特命捜査隊の主任になる人。観察力があって気配り上手で皆から好かれてる私のバディー……残り2週間でコンビ解消されても同隊だし、これからも頼ることはきっと多い。


「そやけど、毘乃木はしっかりしとるから大丈夫よ! あ。そうや、言っとかなあかん事あったわ……号車移動しようか? ごめんな」


 もう新千代線(しんちよせん)が入線する横目でグリーン車である9号車へと後方に駆ける。この新千代線は、新宿〜御茶ノ水〜四ッ谷を循環運行する行政特別区専用列車で乗客全員がUranusに所属する公務員だ。

 その列車の後部付近はグリーン車で個室になっており、IDカードをかざせば使用可。

本来は被疑者輸送目的で造られたもの……けど、使用率の最も低い朝晩はこういう活用もアリ。

対面で座って早々「先日、新しい隊員表が掲示されたやん?」の切り出しに「はい」と返す。

 この1年間が超例外なだけで私のバディは基本、新人だ。

それは隊内のOJT担当のひとりだから。待って。この切り出しは嫌な予感がする。



「さすが毘乃木、すぐ察してくれて助かる……ごめんなッ。

この子と1年間バディ組んでもぉてええ? ほんまに急で悪いんやけど」


 サッと銀の机上を滑ってきたクリアファイル越しの人事部詳細資料に目を細めた。列車が地下から地上へ出た瞬間、注目せよとばかりに経歴欄へ光が差す。


「…………Washington State Law E」



 思わず岡本先輩の方に紫の瞳を投げた。

  なぜ、アメリカ育ちの子が日本(ウチ)へ来るんですかね____?


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