4話
「初めまして、今日から編入して来ました。三条萬です。よろしくお願いします。」
教室を見渡すと1人見知った顔がある。
朝にあった初音である。
「席は空いてるところに座ってくれ。じゃあ1限の準備をしてくるからそれまで各自自由に。」
そう言って先生は出ていく。
空いてると言っても教室はガラガラだ。
普通の学校の教室よりもむしろ講堂に近い。
少し戸惑っていると初音が手招きをしてくれたので初音の後ろの列の席に座る。
「よかったよ知ってる人がいて。」
そう初音に言う。
「同じクラスだとは思わなかったよ。」
初音が言う。
「そうなの?」
「うん、このクラス人数少ないでしょ?」
「確かにね。」
こんなに広い教室に15人ほどしかいない。
「この教室にいる人のほとんどはね陰陽五家の直系か傍流で幼い頃から陰陽術の訓練をしてるから同年代に比べて高い実力を持ってるの。」
「それはすごいね。」
「だからこのクラスに転入はすごいことなのよ。」
「まあ僕はコネ入学みたいなもんだから。」
「そんな謙遜しなくていいのに。」
そう笑いながら初音が言う。
「知り合いなの?初音。」
初音の隣にいた女生徒が聞く。
「朝会ったの。」
「そう。じゃあ自己紹介しとくわ。私は土御門玲よ。」
「僕も自己紹介した方がいいかな?」
「いいえ、結構よ三条くん。よろしくね。」
「うん、よろしく。」
「おーしじゃあ外に行くぞ。」
そう言いながら水野先生が教室に入ってくる。
そう言われて外に出ると縄に四方が囲われたところがある。
結界か?いや異空間に近いな。
「今日は式神の召喚だ。呪符配るから1人ずつ召喚してもらうぞ。呪符に霊力を込めて式神と契約をするんだ。」
式神か晴明がよく使ってるな。
西洋のファミリアに近い印象だ。
呪符を渡された生徒が1人ずつ縄の中に入っていく。
外からは中が見えないようになっている。
うーん。この術を使ってるのは水野先生かな?
いい腕をしてる。生徒の安全を守るためなのかいざというときに外からの干渉をできるようにしつつ召喚した魔物を完全に遮断できるようにしてある。
男子生徒は鎌鼬を召喚したみたいだ。
契約した鎌鼬を召喚している。
結構かわいいな。
戦闘力はいらないからペットみたいな式神が欲しい。
ネロもその方が喜びそうだ。
初音と玲も終わったみたいだ。
「2人とも何を召喚したんだ?」
「私は木霊だったよ。」
と初音が言う。
「私はピクシーだったわ。」
と玲が言った。
ピクシーね。西洋の精霊も召喚されるのか。
「どっちもいい式神だね。僕もそろそろ行ってくるよ。」
縄の中に入る。
呪符に魔力を込めた。
目の前に現れたのは九尾の狐だった。
「妾と契約したいと?」
狐がそう言う。
「まあ授業でちょっとね。」
「500年生きて空狐から天狐になろうとする妾とか?」
「500年なら年下じゃないか。」
「戯けたことを。妾に勝ったら契約してもやってもよいぞ?」
「本当にいいの?」
「二言はないわい。」
魔力回路を4つから6つに開く。
通常魔力回路は人にもよるが4本。多くても8本だろう。魔力機関から全身に繋がる魔力回路を通して魔力が運ばれる。魔力回路が多いと言うことはそれだけ魔力の出力を出せるということ。もちろん燃費は悪くなるが僕には関係のない話。
「本当に大丈夫?」
「だ、大丈夫じゃ。」
ならばとさらに回路を開く。
6から8に。これで出せる出力は通常の4倍。
「もういいのじゃ。わかったから。」
「戦わなくていいの?」
「それだけの霊力を見せられたらいいわい。」
そう言って狐は狐耳の少女になる。
「まだ子供なのかい?」
「うるさいのじゃ。言っておくが500年で天狐に至った狐界のすーぱーえりーとなのじゃぞ。」
「はいはい。500歳じゃまだ僕の年下だから。」
そう言って今の姿から色々な姿に変わる。
「僕はもう700歳に近いよ。」
「もう妖怪の域じゃないのかの?」
「ははは。上には上がいるんだよ。会うこともあるかもね。」
「まあ面白いそうだから契約してもいいのじゃ。」
「まあよろしく頼むよ。それで契約ってどうやるの?」
「霊力を込めて名前をつけるのじゃ。」
「じゃあコンで。」
魔力を込めて名前を呼ぶ。
「そんな名前は嫌じゃー。」
弾かれた。
「もっといい名前をつけんと契約しんわい。」
わがままなやつめ。
「じゃあ八雲とかでどうだ?」
「まあ及第点じゃな。」
「それじゃあよろしく八雲。」
魔力を込める。
八雲と魔術的な繋がりができた感覚がする。
縄を越えて外に出た。
「どうだった?」
外に出ると初音が話しかけてくる。
「うまくいったよ。」
「よかったね。何と契約したか聞いてもいい?」
「狐だったよ。」
「いいじゃない狐。」
玲がそう言う。
「ありがとう。」
そんなこんなで今日の授業は終わった。
Sクラスは基本的に授業が少ないらしい。
「じゃあまた明日な。」
2人に別れを告げる。
魔術で家に繋がるゲートを開く。
「ただいま。」
あれ。ネリはいないみたいだ。
まあそのうち帰ってくるだろ。
そう思い煙草を吸っているとプンスカした八雲が出てきた。
「妾を狐扱いしたなおぬし。」
「間違ってはないだろう?」
「大違いじゃって何を吸うておる?」
「煙草。」
「妾にもよこすのじゃ。」
「ちょっと待ってよ。確か晴明にもらった煙管がどっかに。」
亜空間を漁る。
「あった。はい。」
そう言って煙管を八雲に渡す。
早速煙をふかし始める八雲。
着物に煙管は似合うな。
そんなことをしているとネリが帰ってきた。
「父さま、誘拐も幼女に喫煙をさせるのも犯罪でし。」
おっと、お怒りのご様子だ。
「火炎」
ボンと僕の頭が爆ぜた。